三星刃物のブランド「和 NAGOMI(なごみ)」の公式インスタグラムを見た方から、
「三星刃物の片刃の砥ぎサービスは、貴社(株式会社Yui)のユニバーサルエッジと同じ刃付けですか?」
と質問をいただきました。
質問をくださった方は、2024年7月10日にアップされた「和 NAGOMI 」の公式インスタグラムの記事を見たそうです。
三星刃物では、「和 NAGOMI」の「プロフェッショナル」というグレードに限ってユーザーの好みの刃付けを選ぶことができ、「片刃」も選択できます。
その刃付けが弊社の刃付けと同じか疑問に思ったそうです。
◎答え
いただいた質問の答えは「いいえ」です。
同じ刃付けではありません。
その他にもいくつかの質問をいただきました。
以下、三星刃物、そして片刃の洋包丁の話などを書こうと思います。
◎私にとっての三星刃物
私にとっての「三星刃物(ミツボシハモノ)」は、優しい表情の社長ご夫妻が自らご出演するセンスの良いサイトが印象的な包丁メーカーです。
奥様はパン作りが趣味で、自社包丁の開発に関わったと聞いたことがあり、紳士的な社長と聡明な奥様が誠実に経営する会社という印象があります。
今回質問があった「和 NAGOMI」というブランドは、三星刃物の主力商品で、ご夫妻のイメージに合う優しいデザインの家庭用万能包丁です。
そして、私が送ったメールには必ず丁寧な返信をくださいます。
要点がまとめられた短い文章中にも優しさがこめられ、お返事をいただくたびに「見習いたい」と感じる文面です。
私は5年ほど前と2年ほど前、完全片刃の洋包丁の共同開発のオファーをしたことがあります。
2度目のオファーは、三星刃物さんとパートナー関係のユーチューバー「ジョージ」さん(チャンネル登録者数100万)が「わしは片刃一択」と公言していることもあり、片刃の洋包丁を楽しく開発できそうだと思ったのですが、2度ともお断りのメールをいただきました。
共同開発には至りませんでしたが、社長からは「ユニバーサルエッジには興味があるので応援しています」と励ましていただきました。
その後、三星刃物の公式インスタグラムが私のインスタグラムをフォローしてくださり嬉しかった記憶があります。
※フォローしてくださったインスタグラムは以下です。
最近は包丁関連の投稿がメインです。
◎「和 プロフェッショナル」について書く前に
私はもともと飲食業界で仕事をしていたので、包丁を「使う側」でした。
包丁の刃付けに興味を持って家庭用万能包丁の研究を始め、包丁を「作る側」になったのは2018年ごろからです。
それ以降、「使う側」と「作る側」の両面から包丁を見るようにしていますが、最終的には「使う側」の視点を大切にしています。
その理由は、商品は常にユーザーのためにあると考えているからです。
今回「和 プロフェッショナル」についても、実際に片刃仕様の三徳を使い、使う側の視点から書こうと思います。
「より良いものが欲しい」というユーザー、「より良いものを作りたい」というメーカー、双方の思いを繋ぐことができればと思います。
◎家庭用万能包丁の片刃化は自然な流れ
三星刃物の片刃仕様は、現在は「プロフェッショナルシリーズ」のみの設定になっていますが、この包丁は少し重いこと(重さ200グラム)が苦にならなければ、もちろん家庭でも使えます。
包丁は、刀身が薄い方が切れ味が良くなります。
しかし昔の刃物用鋼材では刀身を薄くできなかったことと、砥石で砥ぐという条件だったため、「厚みのある片刃の裏スキ構造」の包丁が主流でした。
※興味がある方は和包丁はなぜ片刃なのか を参考に
「片刃」という刃付けそのものは、砥ぎやすさや薄切りのしやすさなどのメリットがあるのですが、和包丁にとっては「厚さ」が大きなデメリットでした。
しかし現代は、薄くても折れにくい鋼材が開発されたため、世の中の包丁ユーザーが刀身の薄い「洋包丁」に「片刃化」を求めることは自然な流れです。
※「和包丁と洋包丁の進化の合流点=片刃の洋包丁」という話はこちら
※今後日本の家庭に求められる包丁についてはこちら
◎どのように違うのか
三星刃物の片刃仕様と弊社のユニバーサルエッジは、両方とも「片刃」ということで共通していますが、特徴が違います。
簡単に書くと、三星刃物の「和 プロフェッショナル」は刃離れ効果がほとんどありません。
※片刃の刃離れ効果については以下を参考に
片刃にもいろいろあり、三星刃物の「和 プロフェッショナル」は、「峰が厚く刃先が薄い包丁」です。
峰が厚めの母材をベースにした高級包丁の「薄い刃先」を片刃に砥いだものです。
「ユニバーサルエッジ」は、「峰が薄く刃先が厚い包丁」です。
峰が薄めで刃先厚が厚めの刀身に、弊社オリジナルの片刃の刃付け(実用新案登録第3227805号)を施した包丁です。
下図の右側が「和 プロフェッショナル」の刀身タイプです。
「和 プロフェッショナル」は、ユニバーサルエッジと比較して峰厚が厚く刃先厚が薄いことがポイントです。
以下の写真は、上が「和 プロフェッショナル 片刃仕様」、下が「PROCEED」です。
重さは、PROCEEDの150gに対して「和 プロフェッショナル」は200gあり、刀身が厚い高級タイプの包丁だとわかります。
三星刃物からは弊社の実用新案の使用についてオファーはなかったので、弊社とは違う刃付けであることは実物を見る前から想像できたのですが、実際に見てみると、三星刃物の片刃は、砥ぎ角はユニバーサルエッジと同程度で刃先が薄いことがわかりました。
また、切り刃の幅に揺らぎがあることや、刃先としのぎ筋が平行でない部分があることなど、プロが砥いだプロ用の包丁としては「その刃付けの狙い・砥ぎ師の意志」が感じられませんでした。
このタイプの片刃では、私が思う「片刃のメリット」を充分に発揮することができません。
実際に切り比べをしてみたところ、ニンジンの薄切りをのぞいて切れ方の差は明らかで、切っているときの安定感も違いました。
◎比較動画
以下、切り比べの動画です。
どの動画も前半がユニバーサルエッジ、後半が三星刃物「和 プロフェッショナル 片刃仕様」です。
スマホで簡単に撮影したものですが、ニンジンの薄切り以外はその差がわかりやすいと思います。
キュウリの輪切り
差がはっきりと出ました
ニンジンの薄切り
「和 プロフェッショナル」は切り心地に少しの不安定さがありますが、刃離れは良好でした
大根の薄切り
PROCEEDの安定感が伝わると思います
玉ねぎのみじん切り
刃離れに大きな違いがあります
備考:
現在、三星刃物とパートナー関係のジョージさんも、片刃のシェフナイフを使っています。
3年ほど前の砥ぎの動画を見る限り、恵比寿刃の「HANA」シリーズをメインに片刃の刃付けをしているのですが、コンベックスの片刃なので、しのぎのある三星刃物の片刃サービスの刃付けとは違います。
ジョージさんの刃付け関連の動画は以下です。
2:30あたりから片刃の話になります。
引用動画:【包丁の研ぎ方】シェフは両刃?片刃?基本からちょっとマニアックな方法まで解説
「三星刃物の片刃」「ユニバーサルエッジ」「ジョージさんの片刃」は、それぞれ違う片刃です。
三星刃物の片刃は、刃先厚が薄い包丁に、比較的鈍角でしのぎを残す刃付けです。
弊社の片刃は、実用新案登録3227805号の刃付けです。
上記動画のジョージさんの片刃は、刃先厚が厚めの包丁に、しのぎを残さないコンベックスです。
※動画の最後に登場する2本の片刃は、使い込まれて刃が厚くなったもので、この2本にはしのぎがあります
◎使用感
「和 プロフェッショナル」の切れ味は、とても良い部類です。
しかし薄切りの刃離れが悪いことや、薄切り時に刀身の左側面の「不規則なくっつき感」があり、作業のリズムが崩れます。
切り心地としては、両刃でもなく片刃でもない不思議な感覚ですが、強いて言えば、「両刃と同じように切れる片刃」です。
洋包丁を片刃にすれば「砥ぎやすい」というメリットはあります。
しかし、刃離れが悪いのでは両刃と変わらないため、切り込み抵抗がより小さい左右兼用の5:5の刃付けを好む人も多いはずです。
また、厚さ2.2㎜の峰側を中心に刀身全体が厚いため(刃先は薄い)、硬くてしなりにくいことと、三徳包丁は切っ先側の身幅が広く、食材の中でのロール方向の自由度が低いことが重なり、手との一体感が少ないイメージでした。
硬い刀身は自分で包丁をコントロールできない感覚が強く、切る楽しさの面で不足を感じました。
「和(三徳)」の刀身の形や強度配分で片刃の特徴を出し過ぎると使いにくくなるため、結果的に薄い刃先を控えめに砥ぎ、両刃の要素が強い片刃の刃付けになったのかもしれません。
※もちろんユニバーサルエッジと同じ刃付けにならないような配慮もあったのかもしれません
◎プロ用のカスタムなら
これまで片刃の洋包丁は、現場のシェフなどの「使う側」では当たり前の包丁で、使いにくいどころか便利な包丁でした。
しかし「作る側」では「片刃=和包丁=使いにくい=売れない」というイメージが強いためなのか、片刃に対して消極的でした。
その視点から見ると、三星刃物の片刃サービスは、ユーザーのニーズに応える素晴らしい取り組みだと思います。
しかし「和 プロフェッショナル」の「三徳」の片刃仕様は、片刃化の理由が明確ではなく、3万円を超える高級包丁としての「ブレない軸・プロの志」のようなものを感じることができませんでした。
片刃の砥ぎ方は何種類もあり、切れ方も違うのですが、公式サイトには「角度・刃先厚」など、片刃についての詳細な記載はありませんでした。
また、購入にあたり、ユーザーに対して「何度で砥ぐか・刃先厚はどうするか」という質問もありませんでした。
購入者はどのような刃付けの包丁が届くかわからない状態で待つことになるので、自分で刃をつけたい人のために「刃付けなし」という選択があってもよいと思います。
※砥ぎの仕事をしていると、口金がない包丁の汚れは、口金がある包丁より目立ちます。
和のサイトに「100年包丁」とあるように、長く使う前提の場合、口金がないことも衛生面で気になりました。(デザイン優先の包丁なので口金がなくてもよいと思いますが)
◎三星刃物公式見解の補足
2024年7月10日の三星刃物公式インスタグラムにある、刃付け関連の記載について付け加えたいと思います。
三星刃物の公式見解に対して否定的な内容もありますが、ユーザーが納得して包丁を購入し、楽しく使っていただくための補足です。
以下太文字が三星刃物の公式見解の要約、その下が私の補足です。
インスタグラム内という限られたスペースでは要約しなければならないので、実際は、三星刃物さんも以下と同じような内容を書きたかったかもしれません。
・片刃は切れ味が鋭い
片刃の切れ味が鋭い条件は、切り込みの初期と、柔らかいものに対しての切れ味です。
大根や人参の乱切りなど、硬いものに対しては切り込み抵抗が大きくなり、切れ味が悪いと感じます。
以下が切れ味の要素を決める条件です。
どれも左側の方が切れ味が良く感じます。
片刃の切れ味の良さは、主に下図「2切り込み」にある「切り刃の砥ぎ角の鋭さ」によるものです。
・片刃は扱いにくい
片刃が扱いにくいのは、主に硬いものを切り分けるときです。
薄切りや皮むきのときは、両刃より扱いやすい傾向があります。
また、柔らかいものを切るときは片刃も両刃もほぼ無関係で、場合によっては片刃の方が切れ味が良く、扱いやすいと感じる場面もあります。
下図は両刃包丁とユニバーサルエッジの比較について書いたものなので、「和 プロフェッショナル」の片刃は、ちょうど中間あたりの性能と言えます。
両刃(従来型)と片刃(ユニバーサルエッジ)の比較
・利き手の有無
両刃でも、左右の砥ぎの比率が5:5なら利き手を選びませんが、左右非対称の刃付けは利き手を選びます。
「両刃は左右兼用です」と言い切ってしまうメーカーも多い中、三星刃物のインスタグラムでは「右利き用の両刃・左利き用の両刃」というように、公式で触れているので安心しました。
以下が包丁の刃付けのイメージです。
厳密には「左右兼用」と言えるのは、5:5の刃付けだけです。
左右非対称の刃付けについては以下を参考に
1→こちら
2→こちら
・扱いやすさ
公式インスタグラムの記載は「両刃の扱いやすさ」を書いた内容ですが、これは硬いものを切り分けるパターン、つまり「両刃の得意分野」についてしか触れていませんでした。
「薄切り」や「皮むき」のときは、両刃の方が扱いにくい傾向です。
特に「野菜の薄切り」は両刃ではやりにくいです。
興味がある方は以下のブログ内の動画をご覧ください。
「完全片刃」の薄切りの安定感が確認できます。
ブログ:野菜レシピが増える包丁
また、インスタグラムに使われているイメージ写真が「肉」でした。
片刃の柳刃包丁で刺身を切るように、軟らかい食材は両刃も片刃もほぼ無関係に切ることができます。
肉ではなく、玉ねぎや大根の写真なら、より説得力があったと思います。
・頻繁に砥ぐ必要があるのは片刃
「頻繁なお手入れが難しい場合は両刃をお勧めしております」とあります。
たしかに頻繁に砥ぐ必要があるのは片刃かもしれませんが、砥ぐのに時間がかかるのは両刃なので、必要な手間はほぼ同じです。
また、左右の砥ぎの比率が不安定になり、微調整が必要になるのは両刃です。
「砥ぐのに時間がかかり、砥ぐのが難しいのは両刃」ということです。
片刃は利き手側だけ砥ぐため、頻繁に砥いでも苦にならないと思います。
砥石を出して片付ける手間を考えれば、砥ぐ頻度の高い片刃の方がトータルの時間はかかるかもしれませんが、シャプトンに代表される「非吸水性」の砥石を使えば手間はほとんど変わりません。
片刃の方が砥ぐ手間がかかると誤解されがちな書き方なので、「頻繁に砥ぐ必要があるのが片刃、砥ぐのが難しく時間がかかるのが両刃、実際かかる手間はほぼ同じ」と書いた方が本質的かもしれません。
また、切れ味の持続性については、両刃か片刃かという刃先の構造の問題よりも、家庭で砥ぎやすいかどうかで決まる場合がほとんどです。
両刃の方が刃先が丈夫で欠けにくくても、砥ぐ気になれなければ切れ味は維持できません。
片刃は砥ぐのが楽なので頻繁に砥ぐことができ、両刃は砥ぐのが億劫になり、切れ味が悪くても使い続ける可能性があることについても考えてよいかと思います。
※実際は、洋包丁の両刃よりも片刃の方が砥ぎやすいことは、私の実感としてお伝えできます
包丁の砥ぎやすさについてはこちら
◎感想
「刃先が食材に軽く入る」という意味での切れ味は、「ユニバーサルエッジ」より「和 NAGOMI」の片刃の方が優れているのですが、「和 NAGOMI」は薄切りの刃離れが悪いことと、刀身の左のくっつき感に違和感がありました。
修行3年目のスタッフも、千切りの仕込みに使ってみたのですが「使いにくいのでユニバーサルエッジに戻しました」と言っていました。
お店のマスターは、「これ、家庭用としては重い」と言い、試し切りをしたあとは使いませんでした。
やはり気になるのは「重さ」と「刃付け」ですが、これまでに「和」というブランドが作り上げた「デザイン」や「イメージ」の安心感で選ぶ人が多いのかと感じます。
加筆:2週間使った感想
以下、2週間ほど「和 プロフェッショナル」を使った感想です。
★印字(汚れ・繊維・水分が溜まりやすい)
まず気になったのが「印字」についてです。
洗った後に拭いていてザラツキを感じたので印字の部分をよく見てみました。
刀身の表面を焼いている(削っている?)ので、「洗っても消えない」というメリットはありますが、「ザラつき感」があり、タオルで拭き取るとタオルの繊維が残ります。
※彫刻系の印字はふき取りの時にタオルの繊維が残ることが多いのですが「和」の印字は今までに見た彫刻系の印字では最も高度に見えました
拭き取ると印字部分にタオルの繊維が残ります
拡大
へこみ部分に水分が溜まりやすいためか水分のふき取りが甘くなってしまい、印字の境目が錆びる原因にもなるようです。
「O」の印字の下部分に茶色の錆が出ていました。
拡大(タオルの繊維も見えます)
また、汚れも溜まりやすいのではないかと感じました。
汚れや水分が溜まらないようによく拭きとるとタオルの繊維がついてしまい、タオルの繊維がつかないように優しく拭くと汚れや水分のふき取りが甘くなるという悪循環が起こります。
公式サイトには「食洗器は絶対に使わないでください」と書いてあるため、必ずタオルで拭き取る必要があるので、包丁の衛生を保つためにはかなり丁寧に扱う必要がありそうです。
「和」の中でも「プロフェッショナル」ということは、不特定多数のお客様に大量の料理を出すことも前提になっているはずです。
その場合、衛生に気を使うという意味で、彫刻系の印字よりプリント系の印字の方が良いのではないかと感じました。
★口金なし
口金がないためハンドルと刀身のスキマに汚れが溜まりやすく、念入りに洗っているつもりでも写真のような汚れが溜まっていました。
ハンドルと刀身のスキマになにか挟まっていました
拡大
ハンドルと刀身の間に水が入り込み、徐々に汚れが増えていくと思われます
上にも書いたように、「プロフェッショナル」という名前がついているということは、不特定多数のお客様に大量の料理を出すことも前提になっていると思います。
水分と食材が溜まりやすい部分なので、やはり「口金」がある方が安心です。
「和」はデザイン重視の包丁だとは思いますが、「価格」や「プロフェッショナル」という名前からも、機能性を最重要視した口金をつけ、差別化してもよいのではと感じました。
★黒いサビ?
洗っても取れない黒い斑点が2つありました。
拡大
どのような条件でこのようになったのかわからないのですが、洗剤とスポンジでは落ちませんでした。
★ハンドルの凹凸
公式サイト内「クラフトマンシップ」のページには「ハンドルには凹凸が全くありません・細心の注意と熟練の技がこの見事なハンドルを作り上げました」と書いてありましたが、私を含めスタッフ5人全員がハンドルに凹凸を感じました(スタッフたちが敏感すぎるというわけではないと思います)。
公式サイトには「凹凸が全くありません」と書いてあるので残念に思いました(スタッフは驚いていました)。
同じベルトサンダーで磨いた場合、金属と木では、柔らかい木の方が先に減るため、金属が出っ張るのは仕方ないと思います。
もちろんそれを平らに仕上げるのが「細心の注意と熟練の技」だそうですが、私が働く店のスタッフ全員が「平らではない」と判断したのは事実です。
金属部と木部に段差がなく平らなハンドルは、とても気持ち良く握ることができますが、たとえその場では凹凸なく仕上げたつもりでも、素材の硬さの差と体積の経年変化によって次の瞬間から徐々に凹凸が生まれ始めます。
「和 プロフェッショナル」も例外ではないのかもしれません。
仮に、ハンドルを磨いた職人は「平らだ」と判断し、ユーザーが「平らではない」と判断した場合、メーカー社長がどう判断するかがポイントになります。
いずれにしても、「凹凸が全くありません」と書かない方が、ユーザーにとってもメーカーにとってもプラスなのではと感じました。
★良い部分
具体的に数値で示すことはできませんが、モリブデンバナジウムの刃と比較すると「長切れ」する感覚はありました(もちろん仕様頻度に比例して切れ味は落ちます)。
また、峰やアゴ上各部の面取りが丁寧で見ていて気持ち良かったです。
砥ぎに関しては、刃のカーブが直線に近いため「シームレス砥ぎ」がやりやすかったです。
★全体として
全体としては、モリブデンバナジウムと比べて繊細な管理が必要だと感じました。
また、普段150g前後の重さに慣れているためか、200gという重さがジワジワと手首の負担になりました。
一般ユーザーへのアンケートでは、家庭用万能包丁には「軽さ」を求める声が多く、私自身も、仕事中は重心位置を含めた軽さが大切な場面を多く感じます。
刃渡り180㎜に対して2.2㎜の母材厚は、薄いほど切れ味が増すという刃物の原則に対して過剰な厚さにも思え、硬くしならない包丁によるユーザーの手首の負担も心配です。
全体としてコスパは良い方ではないので、やはりデザインやムード重視の包丁だと思いました。
備考:ユニバーサルエッジと製造状況について
最後に、最近のユニバーサルエッジについてまとめた記事を紹介します。
「和 プロフェッショナル」と「ユニバーサルエッジが」の違いをわかっていただけると思います。
ユニバーサルエッジについて
2024年7月現在、ユニバーサルエッジの次回入荷は9月~10月の予定です。
また、すでに多数の予約が入っているため、前回同様、ネット販売に割り当てた分が2日で完売してしまう可能性もあります。
既存の包丁をユニバーサルエッジにカスタムするという方法もありますので、薄切りの刃離れをすぐに楽しみたい方は下記までご相談ください。
刀身の形の条件が揃えばユニバーサルエッジにカスタムできます。
※カスタムについてはこちら
今回は以上です。
洋包丁にも様々な「片刃」があり、メーカーごとに様々な考え方があります。
参考になればと思います。
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