先日、「片刃だから薄切りの時に刃離れが良いんですか?」という質問をいただいたので、その答えを書こうと思います。
答えは「いいえ」です。
薄切りの食材が包丁にくっつく理由は、包丁と食材の間の「水分(油分)」です(パンなどの水分の少ない食材はどんな包丁で切ってもくっつきません)。
刃離れのポイントは、包丁と食材の間の「毛細管現象(厳密には違うかもしれませんが)」ということになります。
「食材の刃離れ」は、包丁ユーザーから求められている大きな課題のひとつです。
その対策として、各包丁メーカーは、刀身に穴をあけたり、ディンプルをつけたり、リブをつけたりしていますが、これらは毛細管現象の「軽減」が目的です。 ゼロにするのではなく「軽減」するため、一定のくっつきはあります。 ユニバーサルエッジは、刃付けの工夫により毛細管現象を防ぐ設計のため、薄切りの刃離れが安定します。
下の動画は、3つの包丁でキュウリの輪切りをしたものです。
1:刃離れする条件の両刃
2:刃離れしない条件の片刃
3:ユニバーサルエッジ
一般的には、「両刃は刃離れしない、片刃は刃離れする」と思われる傾向ですが、その逆のパターンで実験しました。
1:両刃の包丁は、左側の刃が右に滑り落ちてしまうのを防ぐため、包丁を右に傾け、注意深く切る必要があります。
一枚切るための労力が大きく、両刃なので(砥ぎ角が鈍角なので)断面のツヤも悪くなります。
2:和包丁は薄切りが安定していますが、刃離れが良くないので作業性が落ちます。
また、左側面の裏スキが吸盤のように食材に吸い付いてしまうことがあり、包丁を持ち上げるときに力がいる場面もあります。
3:ユニバーサルエッジは楽しく安定して切ることができます。
以下はユニバーサルエッジでの大根の薄切りです。
いつまでも切っていられます(^^♪
【補足】
両刃の包丁でも「切っ先の引き切り」をすれば薄切りの刃離れが良好な場合があります。
刀身の形、食材の硬さ、まな板との設置面積など、刃離れの条件が整う組み合わがせがあり、その条件が揃うとある程度良好に薄切りすることができます。
◎まとめ 「刃離れ」は、切り刃の幅と砥ぎ角を工夫し、くっつきの原因になる「毛細管現象」をいかに抑えるかがポイントになります。 「片刃だから薄切りの刃離れが良いんですか?」という質問の答えは、「いいえ」です。 「毛細管現象を抑止する刃付けだから刃離れが良い」ということになり、条件を満たしていれば両刃でも刃離れが良いです(ただし両刃での薄切りは疲れます)。
余談1
プロの世界では、両刃のシェフナイフの片側を砥ぎながら、徐々に片刃に育てていく人も少なくありません。
その理由は、片刃の方が便利だからなのですが、徐々に片刃にしていくことで、「片刃の刃付けに慣れていく」という意味もあるのかもしれません。
私はいきなり片刃で修行をしましたが、それまで料理をしていなかったため、両刃も片刃もわからず、違和感なく使えました。
生徒さんや研修生から「先生と同じ包丁を使いたい」という要望があり、片刃のシェフナイフを売っているメーカーを探したのですが見つからず、「それなら作ってしまおう」とユニバーサルエッジを設計したのは、レストランで修行を始めてから3年後でした。
結開発ストーリーはこちら
余談2
下記動画の包丁は、「結(ユニバーサルエッジ)」以外は全て両刃です。
毛細管現象を軽減するタイプと摩擦を減らすタイプの包丁です。
毛細管現象を抑止する条件が揃っていない両刃包丁は、穴やディンプルで対策をしても刃離れが安定しません。