「結」の刃離れの理由

今回は、「結」で切る薄切りが安定して刃離れする理由について書いてみます。

「結」の薄切りの安定性と刃離れの秘密は、以下の要素の組み合わせによるものです。




1:完全片刃

2:刃先厚

3:砥ぎ角18度

4:切り刃の幅

5:コンベックスグラインド




1:完全片刃


結は、刃先の右側だけを砥いだ完全な片刃です(左利き用は左側だけを砥いだ完全な片刃です)。

左側に刃がついていないため、薄切りをするとき、刀身の左側面は垂直に下がろうとするので、安定して切れます。「包丁に任せて切れば包丁が薄く切ってくれる」という感覚です。
















両刃の包丁で同じように薄切りをしようとすると、左側の刃が右下に向かって下がろうとするため、食材を薄く切ろうとするほど不安定になります。













「片刃風」と言われる「8:2」や「7:3」の刃付でも、砥ぎ角によっては刃離れが良い包丁になりますが、左側の刃が右下に向かって下がろうとするため、食材を薄く切ろうとするほど不安定になり、途中で切れてしまったり、厚くなってしまいます。


完全片刃のシェフナイフで切る薄切りは、「両刃」や「片刃風(※)」の包丁とは異なる「安定感」と「安心感」があります。


※「8:2」や「7:3」の刃付けの包丁が、「左右兼用」として販売されていることがあります。左利きの方は薄切りが不安定になるのでご注意ください。








2:刃先厚


「結」のような刃離れ効果を出すために必要な刃先厚は0.4㎜~0.5㎜です。

0.3㎜だと刃離れ効果が弱く、0.5㎜以上だと切り込み抵抗が増えてしまいます。


「結」のヒントになった包丁は藤次郎の「F-875」です。

2014年頃購入したものは、研ぎ直して刃離れ効果をだすことができました。しかし、2017年頃に購入した「F-875」は、同じ角度で研いでも刃離れ効果が弱く、理由を考えたところ、2014年頃のモデルと比較して、刃先厚も含め、刀身全体が薄くなっていたことがわかりました(包丁の個体差かもしれません)。

それが刃離れ効果が弱くなった原因だと思います。

この経験から、刃先厚の重要度がわかりました。



※「結」を開発する際には、試作品で刃先厚「0.3㎜」「0.4㎜」「0.5㎜」の実験をしています。







3:砥ぎ角18度


私の経験から、完全片刃で30度の研ぎ角にすると、刃離れは良好ですが、切り込み抵抗が増えすぎて使いにくい包丁になります。完全片刃で10度だと、切り込み抵抗が少なくなりますが、食材がくっつきやすくなります。

その中間の18度前後が「刃離れ」のポイントです。

私は、家庭用万能包丁として実用的な砥ぎ角を18度前後だと判断しました。







4:切り刃の幅


「結」の切り刃の幅は1.6㎜前後と、母材が厚い和包丁の切り刃よりも短いため、食材との接触面が少なく、刃離れが良くなります。






















5:コンベックスグラインド


砥ぎ方には大きく分けて「コンベックス・フラット・ホロー」の3種類があります。


※簡単に図を書きました。厳密にはもっと複雑なので、興味がある人は調べてみてください。目的に応じて無数の組み合わせがあり、正解がたくさんあることがよくわかると思います。







コンベックスの切り刃は食材が点で触れることと、見かけの研ぎ角がフラットグラインドと同じでも、実際に食材に当たる刃先の研ぎ角は鈍角になるため、フラットグラインドより食材が刃離れしやすくなります。



※「結」は、事情があって新品状態では「片二段刃」ですが、シームレス砥ぎを続けているうちに徐々に角がなくなり、最終的に「コンベックス」になります。








家庭で使われる簡易シャープナーは、構造上フラットかホローグラインドに仕上がるものが多いので、「結」には砥石を使った「シームレス砥ぎ」をオススメしています。




【まとめ】

結の気持ち良い刃離れの理由は、「片刃・刃先厚0.45㎜前後・砥ぎ角18度前後」にあります。また、砥いでいるうちに「コンベックスグラインド」になることも一因です。




以上、「結」の安定した薄切りと刃離れについてでした。




最後に、完全片刃の安定した刃離れ効果については下記動画をご覧ください。

動画最後が「結」です。