包丁関係の仕事をしていると、「私、片刃のシェフナイフ知ってるよ」という声をいただくことがあります。
片刃のシェフナイフは珍しいので、どんな包丁だろうか詳しく聞いてみると、
家庭用ではなく、「プロの方が独自に研いで使っているシェフナイフ」を指していることがほとんどでした。
以前私は、包丁の研究のため、10か所ほど調理の現場を経験したことがありました。
職人さんが普段どんな包丁を使っているか見てみると、「自分で研いだ片刃のシェフナイフ」を使っている人もいました。
「プロが片刃にしているのだから片刃には魅力がある」という確信と同時に、「プロが使う片刃の包丁より、私が家庭用として考案する片刃のシェフナイフの方が、一般の方には使いやすいはずだ」と、さらに「片刃のシェフナイフ」に興味をもつきっかけになりました。
片刃というと、和包丁の片刃、プロ用のシェフナイフの片刃を思い浮かべる人がほとんどですが、私が考案する片刃は、そのどちらとも違います。
今回は、プロが使う「プロ用の片刃のシェフナイフ」と、私が考案する「家庭用の片刃のシェフナイフ」の違いについて書きます。
●プロ用の片刃のシェフナイフ
プロは大きな食材を扱う関係上、刃渡りが長く母材の厚さが2㎜以上ある「比較的高価な包丁」を使っている場合がほとんどです。
母材の厚さが2㎜以上ある包丁は、刀身に硬い素材を使っていることが多く、
「刃の厚さ、素材の硬さ、刀身の長さ」などの関係で、一般主婦には「砥ぎにくい包丁」と言えます。
●家庭用の片刃のシェフナイフ
私が考案する片刃のシェフナイフ(家庭用)は、母材の厚さが1.5~1.8㎜、刃渡り180~200㎜、素材がモリブデンバナジウム、そしてこの刀身に、実用新案登録第3227805号の刃付けをしています。
「プロ用の片刃のシェフナイフ」と比較すると、一般主婦が使う包丁として、「安価・シームレス砥ぎができる・軽い・切り込み抵抗が少ない・手首が疲れにくい」など、多くの長所があります。
以下、家庭用片刃のシェフナイフの長所についてひとつずつ書いてみました。
・母材が薄い
刃先の厚さにもよりますが、同じ角度で刃が砥いである場合、母材が薄いほど切り込み抵抗が少なくなります
・素材が柔らかい モリブデンバナジウムは比較的柔らかいので、刃欠けしにくく包丁が長持ちする傾向があります。 ・しなる 薄くて柔軟な素材なので、簡単で刃線が乱れない「シームレス砥ぎ」ができます。 また、しなる包丁だと手首の負担が少なくなります。 ・安価 モリブデンバナジウムは、他の高硬度の素材と比べて安価です。 ・砥ぎやすい 「柔らかい素材・シームレス砥ぎができる・刃渡りが短い」、この3つの特徴により、砥ぎやすいです。 ・軽い 刃が薄いので包丁が軽く、手首が疲れにくいです。 ・プロでも便利に使える プロ用は一般主婦には使いにくいですが、家庭用はプロも便利に使えます。
以上です。
このようにとても便利な包丁ですが、新しい構造のため、まだ包丁メーカーには認知されていません。
実際、業界トップクラスと言われる包丁メーカー数社も含め、20人ほどのメーカーの方々とお話しましたが、母材厚1.8㎜以下の片刃のシェフナイフを使ったことがある人は1人もいませんでした。 包丁業界には、母材厚1.8㎜以下のモリブデンバナジウムの刀身に「実用新案登録第3227805号」の刃付けをした包丁の便利さを知っている人が、ほとんどいないということになります。 そのため、「片刃のシェフナイフ」というと「和包丁・扱いにくい」と連想する方が多数です。
私の「包丁アドバイザー」としての仕事のひとつは、片刃は扱いにくいという誤解を解き、家庭用の片刃のシェフナイフの便利さをお伝えしていくことです。
※母材の厚さを知るためオススメしている方法は、硬貨を使うことです。
母材厚1.5~1.8㎜は、ちょうど1円硬貨の厚さと500円硬貨の厚さです。
以下、両者の比較の一覧表です。
| プロ用の片刃のシェフナイフ | 家庭用の片刃のシェフナイフ |
母材 | 厚い | 薄い |
素材 | 硬い | 柔らかい |
刀身のしなり | しなりにくい | しなりやすい |
値段 | 高価 | 安価 |
重さ | 重い | 軽い |
砥ぎやすさ | 砥ぎにくい | 砥ぎやすい |
以上、「プロ用の片刃のシェフナイフ」と「家庭用の片刃のシェフナイフ」の違いについてでした。 私は片刃のシェフナイフを7年間使って仕事をしていますが、仕事を続けられたのは、食材を切る作業そのものが楽しく、そのうえ、包丁のメンテナンスが楽だからです。 ご家庭で包丁を使うみなさんに、少しでも「家庭用の片刃のシェフナイフ」の楽しさをお届けできればと思っています。
余談:料理家ジョージさんの包丁
「片刃のシェフナイフ」について私が印象的だったのが、1年ほど前、料理家の「ジョージ」さんが、片刃のシェフナイフを好んで使っているという動画でした。
片刃のシェフナイフの魅力を伝えようと、ネットでいろいろな動画を検索していたときに見つけたものです。
下記動画5:15のところに、「わしは片刃一択☆」とあります。
動画5:00あたりから、「片刃はクセがあるので使いにくいのは事実・・・」とあります。
5年ほど前、私もその点で悩みましたが、実験を繰り返し、一般家庭で使えるレベルまでクセを軽減しました。
それが実用新案登録第3227805号の刃付けです。
ジョージさんの片刃のシェフナイフは、プロ用です。刃渡りが長く、刃先厚が厚めのシェフナイフを片刃にしたものなので、ユニバーサルエッジよりクセが強いです、片刃の和包丁より使いやすいです。
参考までに、クセが強い順に並べると、
和包丁
↓
プロ用の片刃のシェフナイフ
↓
家庭用の片刃のシェフナイフ(ユニバーサルエッジ)
↓
両刃のシェフナイフ
となります。
私も片刃一択なので、ジョージさんとお話できたら楽しいと思いました(^^♪
※プロシードをご購入してくださった「うなぎ屋の料理長」のシェフナイフについてはこちらです。
3本とも完全片刃で嬉しかったです(^^
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