和包丁と洋包丁、2つの包丁が進化するとどうなるかという話です。

まず、包丁を、3つのカテゴリーにざっくりと分けてみます。
カテゴリー1:和包丁
刃付け:片刃
素材:ハガネ
ハンドル:木柄
特徴:
研ぎにくい(一般家庭で新品時の刃付けを維持できない)
錆びやすい(油断をするとサビが出る・サビのニオイが食材につく)
不衛生(刀身とハンドルの間に汚れが溜まる・ハンドルを濡らしてから握るタイプはカビが出やすい)
カテゴリー2:洋包丁
刃付け:両刃
素材:ステンレス(全鋼または複合)
ハンドル:多様
特徴:
研ぎにくい(和包丁より砥ぎやすいが新品時の刃付けを維持できない)
錆びにくい(割り込み包丁になると錆びるものがある)
衛生的(砥ぎ直し以外ほとんどメンテナンスフリー)
カテゴリー3:ユニバーサルエッジ
刃付け:片刃
素材:ステンレス(全鋼)
ハンドル:多様
特徴:
研ぎやすい(新品時の刃付けを維持できる)
錆びにくい(実用レベルでは「ほぼ錆びない」と言ってよい→https://www.katabayui.com/post/sozai)
衛生的(研ぎ直し以外ほとんどメンテナンスフリー)
◎和包丁の洋包丁化
和包丁の錆びやすさや不衛生な面を解決するために、洋包丁の刀身に使われるステンレス素材を取り入れた和包丁が増え、現在は「オールステンレスの出刃・柳刃」というところまで進化しました。
包丁の開発の大きな流れは、和包丁が洋包丁に近づく方向で進んでいるということです。
コスト削減や簡易シャープナーで砥ぐことを前提に、和包丁の特徴である「裏スキ」を廃止したものもあります。
また、洋包丁の代名詞である牛刀の刀身の形に近づけ、「和牛刀」という名前で販売されているものもあります。
ということで、最新の和包丁は、その弱点を解決するために、素材には錆びない「ステンレス」を取り入れ、刀身とハンドルのつなぎ目に「口金」を取り入れ、汎用性を高めるために「牛刀」の形を手に入れるところまで進化しました。
「和牛刀」の真逆の名前とも言える「洋出刃」という包丁もありますが、これは洋包丁が和包丁を参考にして出刃構造を取り入れたものではなく、和包丁が洋包丁の汎用性や衛生の良さを取り入れた結果進化したものだと思います。
また「筋引き」「スライサー」という洋包丁を「刺身包丁」と呼ぶことがあります。
これは洋包丁ベースなので両刃なのですが、柳刃包丁としても使えるということになります。
逆に柳刃包丁を筋引き包丁として使うシェフがいるという話は、私は聞いたことがありません。
このことからも、洋包丁は和包丁の代用ができることや、和包丁の洋包丁化が進んでいることがわかります。
今後和包丁をさらに便利にしようとすると「切りこみ抵抗の軽さ」と「砥ぎやすさ」を実現する必要がありますが、それを実現するには、片刃のメリットを残したまま裏スキをなくし、刀身を薄くすれば解決します。
そして、それが「ユニバーサルエッジ」という新しいカテゴリーの包丁です。
和包丁を家庭用包丁として進化させると、最終的にユニバーサルエッジになる、ということです。
◎洋包丁のユニバーサルエッジ化
洋包丁を家庭用包丁として進化させると、やはり「ユニバーサルエッジ」になります。
洋包丁は、左側の研ぎにくさと刃離れの悪さがデメリットですが、ユニバーサルエッジはその部分を解決し、その他汎用性の高さなど、「硬い物をまっすぐに切るのが苦手」というひとつのデメリットと引き換えに、多くのメリットを手に入れました、
また、ユニバーサルエッジで硬いものをまっすぐに切る作業は、和包丁より簡単なので、和包丁を使っている人は違和感がありません。
そもそも砥石で砥がれる洋包丁は、新品の時点から徐々にユニバーサルエッジ化の道を歩み始めます。
それは、砥石を使うプロの一部が、自分のシェフナイフを、意思のあるなしに関わらず片刃に砥いでいることからわかります。
意識的に砥いでいるプロの中には、「両刃から片刃に育てていく」という表現をする人もいるように、その便利さを積極的に引き出すために片刃に砥ぎます。
利き手の関係で無意識のうちに片刃に近づけているプロは、片刃寄りの刃付けで、繊細さや効率を求められるプロの仕事ができているということになります。
さらに、新品状態で「右側7:左側3」で砥がれたシェフナイフが、売られています。
※左右兼用として売られている場合もあって不思議ですが
プロの包丁は刃渡りが長く、刀身が硬いため、砥ぎやすさや汎用性の面でユニバーサルエッジには及びません。
しかし片刃のシェフナイフの便利さは、プロが証明しています。
プロが使っていると、「片刃はプロしか使えない」と誤解されがちですが、私が考案した刃付けならそのようなことはありません。
私自身の実体験で、一般の方でもすぐ慣れます。
◎2つの進化の合流点
「家庭用万能包丁」と考えたとき、和包丁の進化の方向と洋包丁の進化の方向、この2つの進化の合流点がユニバーサルエッジです。
私がユニバーサルエッジのことを「使いやすくなった和包丁・便利になった洋包丁」と呼ぶのは、以上のような理由からです。
◎今後の展望
包丁の構造もカテゴリーの名前も新しいため、まだ認知度が低いユニバーサルエッジですが、様々な条件が整ってきたので、包丁のカテゴリーとして認知されるよう、量産に向けて一層努力したいと思っています。