「第31回KENMA研究会」に参加しました
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更新日:3 日前
2026年3月13日、日本大学理工学部駿河台キャンパスで行われた「第31回KENMA研究会」に参加しました。
この研究会は、岐阜大学工学部の畝田教授を委員長として開催され、私(渡邉典子)は畝田教授の紹介で参加させていただくことになりました。
今回は研究会で感じたことを中心に、弊社の専門分野やユニバーサルエッジについて触れたいと思います。
特に研究会に参加した方々や、研究室の学生の方々にお伝えしたいメッセージですが、もちろん包丁ユーザーのみなさまにも読んでいただければと思います。
研究会は、発表などのあとの交流会を含め、約6時間行われました。
登壇するのは大学の研究室や最前線で活躍する企業、視聴者は研磨や刃物関連の方々ですが、視聴者の中には有名な刃物メーカーからの参加もありました。
会場の日本大学理工学部駿河台キャンパス
※会場内の撮影は禁止されていたため、会場の外観だけの掲載です

以下のテーマで順に書きます。
◎高度な知恵の集まりでした
◎手砥ぎか機械砥ぎか
◎砥ぎやすい包丁について
◎興味深い表現のイラスト
◎実演の機会をいただきました
◎学会のお役に立てると感じたところ
◎「より豊かに・より便利に」をテーマに
◎研究機関のみなさまへ
◎高度な知恵の集まりでした
研究会の内容をひとことで表すと、私の専門分野以外のことについては、「レベルが高度過ぎてよくわからない」というのが正直な感想でした。
まず、使われている専門用語がわかりませんでした・・・
私の専門分野については、切り方の動きを観察するための「モーションセンサー」や包丁教室でも取り入れている「ロール・ヨー・ピッチ」などの言葉が使われていたので、私の考え方が大学レベルで通用するのだと実感することができました。
逆に、「間違いや誤解を指摘することもできる・改善の提案ができる」と感じた場面もありました。
◎手砥ぎか機械砥ぎか
砥ぎの分類には、大きく分けて3つあります。
砥石と職人の組み合わせの「完全手砥ぎ」、次に、電動砥石やベルトサンダーなどの「半手砥ぎ」、そして全自動の「機械砥ぎ」です。
この3つのそれぞれにさらに細かい段階があると思いますが、ここでは完全手研ぎ以外を機械砥ぎと定義して書こうと思います。
交流会では、職人と機械の砥ぎの違いについて話題になりました。
「職人が砥いだ方が長切れする」ということだったのですが、これは事実だと思います。
あとは、「それが食の現場でどう影響するか」です。
「手研ぎの方が切れ味が長持ちする」という理由は2つ考えられます。
まず、人間と機械による切り刃の形の違いです。
砥石を使った完全手砥ぎの場合、肩や肘の関節を中心とした円運動が入るので、通常は切り刃の形状はコンベックスになります(和包丁のベタ砥ぎの場合はフラットの場合もあると思います)。
一方機械砥ぎは、通常は切り刃がフラットかホローになります。
同じ鋼材を同じ角度で砥いだとしても、実際は刃先の強度が違うと考えられます。
また、手砥ぎで水を使い冷やしながらじっくり砥がれた包丁の刃先は、機械砥ぎよりも状態が良いはずです。
一方機械砥ぎは「効率こそ全て」と言え、短時間で大量に砥ぐことが求められます。
たとえば、刃先が劣化しない程度のギリギリの高温、かつ粗い砥石で一気に砥がれた刃先は、手砥ぎと比較して状態が悪いことは想像できます。
「手砥ぎの刃先はコンベックス・手砥ぎは刃先の状態が安定している」
この2つの理由から、手砥ぎの方が切れ味が長持ちするのは事実だと思われます。
しかし、大切なことはさらに広い視点から見た「効率」です。
職人が砥いだ包丁の切れ味が良く、長持ちするとしても、コストは機械砥ぎの10倍以上かかると思われます。
仮に「職人が砥ぐと、機械と比較して切れ味が2倍長持ちする」という研究結果があるとしても、「コストは10倍」だとしたら、どちらが良いとは明確には言えません。
通常、家庭では、切れ味を2倍長持ちさせるために10倍のコストはかけません。
つまり、一般家庭では機械砥ぎが求められていると言えます。
実際、職人が完全手砥ぎをした包丁の刃先はとても繊細なため、一般家庭で維持するのは不可能です。
「新品時の状態を家庭で手軽に維持するには」という研究テーマも大切だと感じました。
以下、参考までに刃付けの種類についての画像です。
ユニバーサルエッジの刃付けは右の1種類だけなので、ご家庭で簡単に維持できます。

◎砥ぎやすい包丁について
ユーザーは「砥がなくてよい包丁」を求めますが、現代の刃物用鋼材では包丁の切れ味は必ず落ちてしまうため、「砥がなくてよい包丁(新品時の切れ味が永遠に続く包丁)」は存在しません。
そのため、「より長く切れ味が続く新しい鋼材」の開発が行われています。
しかし刃物には「硬さ」と同時に「靭性」が求められ、開発が難しいだけでなく、開発できたとしても、「砥ぎにくい金属」になっていく傾向があります。
切れ味は必ず落ちるので、結局砥ぐことになるのですが、その場合家庭では砥ぎにくいため、プロにお願いすることになります。
「たとえば年に一度プロにお願いする」という砥ぎ方にすると、「数千円と1週間」というコストに加え、代わりの包丁も必要になります。
さらに、砥ぐ前と砥ぎたての包丁との切れ味の差が大きいため、砥ぎから戻ってきた包丁でケガをする可能性が上がります(少ない力で刃が動いてしまうので、皮むきなどでケガをしやすくなる)。
長切れする金属ほど、砥ぐ間隔が長くなるメリットと同時に、上記のようなリスクを負うことになります。
そもそも「長く切れる包丁」が必要になる理由は、家庭では包丁が砥ぎにくいからです。
仮に誰でも1分で砥げるような「砥ぎやすい包丁」があれば、家庭で頻繁に砥ぐことができるので、新しい金属の開発も不要になり、上記コストやリスクがなくなります。
弊社が開発したユニバーサルエッジは、元事務職だった私でも簡単に砥げる「最も単純な刃付け」です。
実際に非吸水性の砥石で砥ぐことで、準備と片づけを合わせて1分前後で砥ぐことができます。
「長切れする金属」の開発は、日本の工業の発展のためにももちろん必要だと思いますが、研究会のテーマとして、「砥ぎやすい包丁(例えばユニバーサルエッジ)」の研究もあってよいと感じました。
ブログ【「最も単純な刃付け」が生み出す効果】

ブログ【砥ぎやすい包丁とは ―砥ぐ面積の比較―】

◎興味深い表現のイラスト
研究会の資料の中にあった「熟練者と学習者の切り方の比較のイラスト」の中に興味深いものがありました。
具体的には、「薄刃包丁」で「洋包丁のスイング切り」をしているイラストです。
通常、熟練者が薄刃包丁でこの切り方をすることはないので、研究のために熟練者として募集した人が「洋食」の世界だけで仕事をした人か、または、イラストの包丁を書き間違えてしまったと想像できました。
熟練者の包丁の動かし方には、洋包丁のスイング系の動きと、和包丁のスライド系の動きがあるので、包丁の種類や刃線形状による動きの制限などについても理解を深めることが大切だと感じました。
研究結果として、包丁の熟練者は「刃渡りを長く使って切る」、初心者(学会では「学習者」)は、「ほぼ刃渡りを使わず垂直に刃を降ろす」ということでした。
また、熟練者ほど「猫の手」を使い、初心者ほど「猫の手」を使わないという結果についても現場でも実感があり、これらは共感できる研究結果だと感じました。
参考までに「4つの代表的な切り方」の動画を添付します。
4分割画面の左上が「スライド切り(熟練者の切り方)」、右下が「垂直切り(初心者の切り方)」です。
切り方の呼称は弊社の包丁教室で使っているものです。
4つの代表的な切り方(比較しやすくするため全て刃元側を使って切っています)
その他スライド切りと垂直切りの「切った断面の比較」をした「和包丁はなぜ切れ味が良いのか」というブログの記事も参考になると思います。
たとえば和包丁のカテゴリーの中にある「薄刃包丁」は、刃線が直線的なため、スライド切り(切れ味が良い切り方)しか使えないから切れ味が良い、という内容です。
※切り方と切れ味の関係 ―和包丁はなぜ切れ味が良いのか―
◎実演の機会をいただきました
発表後の交流会では、ユニバーサルエッジの「実演」の機会をいただきました。
実演では薄切りの刃離れを中心に以下のような切れ方の違いを見ていただきました。
紫玉ねぎの薄切りの2画面同時比較
「薄切りの刃離れ」に感動してくださる方もいらっしゃいましたが、日常的に料理をすることがないと、ユニバーサルエッジの刃離れにどのような利点があるのか実感できない方もいらっしゃったようでした。
料理の現場では、このような刃離れを求める声が多く、包丁メーカーの長年のテーマでもありました。
◎学会のお役に立てると感じたところ
●用語の統一
発表者によって「切り方の呼称」が違う場面がありました。
例:初心者の切り方でよく見る「上から下へ垂直に切る切り方」を言葉で表現できない、など
それぞれの方が違う言葉を使っても、全体の意味が分からなくはないのですが、用語が統一されれば会話が円滑になることは間違いありません。
言葉が統一されないと、身振りや手ぶりで教える必要があり、教育の効率も上がりません。
弊社の包丁教室では、この問題は全て解決されていて、効率良く教えることができます。
この問題はいつか解決しなければならないと感じました。
●義務教育内での包丁の使い方
近年、家庭科の授業で調理実習が減っているようですが、これには大きく2つの理由があると思われます。
あくまでも仮説ですが、まずひとつめは、「包丁を使える先生がいないこと」、そしてふたつめが「ケガの責任を負いたくないこと」です。
弊社の教育メソッドは、最初にネコの手を使った極薄切りの練習をするので、ケガをするとしても軽微なケガですが、さらに、ケガをしやすい部分に簡単なテープを貼ることで、ケガを防いでいます。
練習中の生徒さんは、包丁の刃先がテープに触れた瞬間、反射的に切る作業をストップします。
「テープ」を貼り「薄切り」の練習をするという2重の安全策をとっているため、練習中の大きなケガはありません。
また、安全な使い方を勉強することで、大人になってからのケガを防ぐこともできるので、「実生活の中でのケガ」という社会的な損失も防ぐことができます。
さらに、初等教育中に練習をすれば、その中で必ず適正の高い子どもが包丁の練習をするようになり、将来「包丁を使える先生」が不足することもある程度予防できます。
弊社は、初等教育で包丁の使い方を教えることの大切さをお伝えすることができ、さらに、教育をすることもできます。
【動画】南伊豆町での出前授業の様子。
ブログは以下です。
【生徒さんの動画】
以下は古い映像なのですが、動画の最初がレッスン前の切り方です。
その後数回のレッスンで熟練者の切り方「スライド切り」を覚え、10回のレッスン終了時には「手首の引き切り」という切り方も覚えることができました。
ケガもなく、生徒さん本人は「楽しいからもっと切りたいです!」と言ってくださいました。
ケガを予防できるので生徒さんのやる気も持続します。
このように、教員不足やケガの問題は、弊社の教育メソッドで解決できます。
●世界初の便利な包丁の提供
弊社が開発した「ユニバーサルエッジ」を研究素材として提供できます。
なぜユニバーサルエッジが「薄切りの刃離れ・砥ぎやすさ・汎用性・安全性・SDGs達成率」に優れているのかさらに研究し、世界に誇れる包丁として洗練していくことができます。
動画はユニバーサルエッジの刃離れ効果です。
これまで刃物メーカーが目指してきた「刃離れ」を単純な方法で実現しました。
薄切りの刃離れ動画(左が既存の万能包丁、右がユニバーサルエッジ)
ユニバーサルエッジで切る薄切り
薄切りの刃離れ問題を解決した最も単純な刃付けの概念図
(新しい対処方法=切り刃の短い片刃)

ユニバーサルエッジは、世界初の刃離れ以外にも、「砥ぎやすさ・汎用性・安全性・SDGs達成率」も世界一優れています。
※ユニバーサルエッジの5大特徴については以下を参考に
●教育用包丁の開発
弊社はすでに手作りの教育用包丁を作り、必要に応じて実際に使っています。
実物をご覧いただけます。
●包丁研ぎ角度測定補助器具
教育を受ける子どもたちが気軽に砥げるように、気泡菅を使った補助器具も開発済みです。
この器具があると、「10円硬貨3枚」「割りばし1本」などのあいまいな角度ではなく、はっきりと角度がわかるため、包丁を安心して砥ぐことができます。
様々な種類があるのですが、全て実物をご覧いただけます。
●新しい簡易シャープナーの提供
砥石の特徴と簡易シャープナーの中間と言える、新しい考え方の簡易シャープナーを開発しています。
簡易シャープナーと同じ使い方で、砥石と同じような効果を出すシャープナーです。
部品は2つしかなく丸洗いできます。
模型をご覧いただけます。
●包丁とインターネットを繋ぐアイデアの提供
※このアイデアは、コクヨの「しゅくだいやるきペン」や、「基礎体温計アプリ」などからヒントを得ています
ハンドル内蔵のモーションセンサーを使い、包丁の動きを電気信号に変えてインターネット(スマホ)につなぎ、包丁を置いたときに包丁の動きのデータを集めます。
自分がどのような動きをしたのか「ロール・ヨー・ピッチ」方向の揺らぎを視覚的にチェックできるので、その変化を追うことで、自分のフォームの上達度がわかります。
将来的には「技能大会」などを開き、「3方向のグラフの乱れが一番少ない人が優勝」など、練習の啓蒙活動に役立ちます。
全国大会によって日本人全体の包丁の技術が向上するので、日本は名実ともに「刃物の国」と言われるようになるかもしれません。
たとえば以下の動画は、私がキュウリの輪切りをしているものです。
1月6日開催の競技会で「1枚1㎜で20枚切る」という種目があり、私の結果は「20.2㎜」でした。
1枚当たり100分の1㎜の誤差で切ることができ、フォームは比較的安定していると思います。
この動きを「ロール・ヨー・ピッチ」の3方向のセンサーで観測した場合、どのようなデータが出るのか興味深いです。
以下動画の「0:52~」です。
◎「より豊かに・より便利に」をテーマに
第31回KENMA研究会に参加したまとめです。
弊社は家庭用万能包丁の研究と販売をしていますが、KENMA研究会の内容は、やはり「研究室レベル」と言えるものが多かったと思いました。
簡単に書くと「研究内容がとても高度」です。
しかしどの分野の研究にも言えるように、「究極のテーマ」は、人の幸せを追求したものだと思います。
つまり、「人の生活をより豊かに・より便利に」ということです。
KENMA研究会の個々のテーマはどれも意義のあるものなのですが、もし研究内容を一般家庭の役に立てようとするなら、「家庭で手軽に砥ぐことで、新品時の性能が維持できる包丁」などもテーマにすると有意義かもしれません。
私は包丁を使う側の経験がほとんどなので、「より豊かに・より便利に」をテーマに、実際に包丁を使う側の立場から研究を発表してみたいと思いました。
◎研究機関のみなさまへ
弊社の製品や活動などは、10年の実務経験で10万食を作った経験や、千人以上との包丁談義、そして150丁以上の包丁の研究を基礎としています。
扱う商品は、世界初と言える便利な道具ばかりです。
弊社の活動に興味がありましたら、ぜひ研究室や各学会にお誘いください。
また、弊社の「スタッフブログ」は240話以上あるのですが、その中には包丁の研究にまつわるものも多くあります。
「和包丁はなぜ片刃なのか」「昔と現代の割り込み包丁の違い」「なぜ片刃の洋包丁がなかったのか」などは人気のある記事です。
刃物作りについては、近年の高性能な金属の誕生によって、過去の常識が変わりつつある場面も多いと思います。
また、一般家庭に「非吸水性のダイヤモンド砥石(すぐに使えてセラミックも砥げる)」が普及し始め、砥ぎや砥石に対する常識も変わってきています。
もし興味がありましたらブログを読んでいただきたいです。
そして、「誤り」があった場合、ご指摘いただけると光栄です。
株式会社Yui代表取締役社長 渡邉典子
以上、KENMA研究会に参加して感じたことなどでした。


