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完全無欠砥石について質問をいただきました

  • 2 日前
  • 読了時間: 9分

更新日:1 日前

「株式会社Tashinam」の公式noteの記事を読んだ方から質問をいただきました。



記事は以下です。

「砥石の使い方完全ガイド 初心者でも失敗しない包丁研ぎの基本導入」

https://note.com/tashinam_japan/n/na1ce7afeebfe

引用:株式会社Tashinam 公式noteより

※紹介した記事を書いている「株式会社Tashinam」は、2021年に設立され、主に「完全無欠包丁」という万能包丁を販売しています。



いただいた質問は以下です。


質問1:「刃先の向きが逆なのでは?」


質問2:「説明の通りに砥ぐといつか左利き用の片刃になりませんか?」


質問3:「完全無欠砥石はどのような砥石ですか?」






◎弊社の情報発信のスタンス


質問に回答する前に、弊社の情報発信のスタンスについて書かせていただきます。


弊社が常に心掛けているのは、「ユーザー本位であること」「本質を伝える」です。

「売ること」だけを目的とせず、「道具としての包丁を納得して楽しく使っていただくこと」を目的として情報を発信しています。

そのため、商品のメリットだけでなく、使いこなすうえで知っておいていただきたい点や、人によっては用途に合わない可能性(デメリット)についても、できる限りお伝えしています。


本質を伝えることが目的なので、他社様に対してマイナス感情は一切ありません。

むしろ、包丁ユーザーにとってより良い環境をつくるために、他社様と一緒に包丁ユーザーの利益を考え、社会貢献したいと思っています。

遠回りに見えるかもしれませんが、結果的にそれが、メーカーとユーザー、包丁とユーザーの良い関係につながると信じています。



では質問の回答です。




◎質問1:


「刃先の向きが逆なのですが正しいのでしょうか?」


包丁の砥ぎ方に正解はないので「間違い」とは言えませんが、初心者向けとして考えた場合、弊社ではお勧めしない砥ぎ方です。

その理由は、「力が入れにくい・刃先が砥石に食い込みやすい・ハンドルが砥石に当たる」などです。


YouTubeなど、ほとんどの砥ぎ動画では刃先が手前(自分側に刃先が向く)になりますが、note内で紹介されている写真とインスタグラムの動画は「刃先が奥(※)」です。

また、その状態で右手で持っているので、刀身の左側が砥がれている動画です。


※インスタグラムの動画では、最初と最後の数秒の映像はハンドルを左手で持ち、刃先が手前です(これも左刃付けの砥ぎ方です)



2026年4月現在の公式noteの内容をもとに、感じたことを書いてみます。


・珍しい砥ぎ方

弊社では、砥石を使って洋包丁を砥ぐ場合「右手で右刃付け、左手で左刃付け」が基本だと考えています。

YouTubeなどの動画でも、多くの場合、右利きの人は右手でハンドルを持ち右の刃付けをしますから、右手でハンドルを持ち左側を砥ぐという組み合わせは、砥ぎ方の説明動画として珍しいと思います。

これが「和包丁(片刃)」を砥ぐ場合なら、「右利きの人が和包丁の裏(左側)をベタ砥ぎするときのフォーム」と言えるのですが、この動画で砥いでいるのは「洋包丁(両刃)」ですし、刀身を15度起こしていますからベタ砥ぎではありません。

動画について言えるのは「刃の向きは和包丁、砥いでいるのは洋包丁」または「右利きの人がハンドルを右に持って左側を砥いでいる映像」なので、今回質問をくださった方が不思議な感覚になるのは当然かもしれません。

株式会社Tashinam代表が左利きで自ら出演しているとしても、砥ぎ動画全体をスマートに説明するには無理があると思います。



・動画は左利き用の研ぎ方?

動画は左刃付けのための動画と言える内容です。

包丁ユーザーの比率としては右利きの人が多いので、通常は右手で右側を砥ぐ動画の方が需要があると思います。



・力が入れにくい

繰り返しになりますが、包丁を砥石で砥ぐ場合、「右手に持って右刃付け、左手に持って左刃付け」が基本だと言えます。

「右手に持って左刃付け」では、指先で刃先を抑えられないため力が入りにくく、時間がかかり、砥ぎの精度が落ちやすくなります。



・砥石と刃先が傷む

刃先が奥にある場合は包丁を引くときに力を入れて砥ぐことになりますが、押す方が力を入れやすいため、万一包丁を押すときに力を入れてしまった場合、包丁の角度によっては刃が砥石に食い込んで削れてしまうことがあり、刃も砥石も傷みます。

初心者に教えるには高度な方法だと感じました。

やはり多くの人が実施しているような「刃先を手前にして押すときに力を入れる」という砥ぎ方の方がミスが少ないと思われます。



・ハンドルが砥石に当たる

右手でハンドルを持ち左刃付けをすると、アゴを砥ぐときにハンドルが砥石に当たる可能性が高くなりますが、その対処方法について書かれていませんでした。

(公式noteの写真を見るとアゴ付近を砥ぐときにハンドルが当たることが想像できます)



・左刃付けのみ公開

紹介されている映像は「左刃付け」の方法を教えているので、仮に右利きの人が参考にしてしまったら、使いにくい包丁になってしまうのではと感じました。

そもそも完全無欠包丁は両刃です。

「食材にスッと切り込む」「3倍の切れ味」などの表現は、「両刃」の包丁ということが大きく影響しています。

両刃包丁は左右均等に砥いでこそ性能が発揮されるので「左右均等に砥ぐ」という説明がないのは不思議です。



・紙の切り方

仕上がりのチェックのために紙を切る場面がありましたが、刃元しかチェックしていないことがわかります。

また、切れ味のチェック方法としては珍しい切り方だったことも不思議でした(慣れている人の切り方ではない)。



・素材と砥ぎやすさ

インスタグラムの説明文にある「単一素材だから、ご自宅で意外と簡単に研げるんです」という表現は「割り込み包丁や複合素材は砥ぎにくい」という誤解を生むと思いました。

また、公式ページには「VG10は超硬質(とても硬い素材)」と書いてあるので、初心者にとって砥ぎやすいと伝えてよいのか疑問です。

包丁の砥ぎやすさは、砥ぐ必要のある「面積」や包丁の反りの曲率、使われている金属そのものの砥ぎやすさに依存するので、「単一素材だから・・・」という表現で適切でないと感じました。


余談ですが、公式ページでは、刃先に力を入れにくい砥ぎ方を紹介しているので多くの初心者は「砥ぎにくい」と感じると思われます。





◎質問2:

「説明の通りに砥ぐといつか左利き用の片刃になりませんか?」


そのとおりです。

インスタグラムの動画では、時間の経過とともに左利き用の片刃に近づいていきます。

noteにある手順解説の「04」を見ると、「表面が研げたら裏を軽く数回研ぎ。かえり(バリ)を取ります」とありますが、これは片刃の砥ぎ方の説明です。

つまり、株式会社Tashinamのインスタグラムで紹介されているのは、「将来左利き用の片刃にするための砥ぎ方」です


「株式会社Tashinam 公式note」のタイトルは以下です。


「砥石の使い方完全ガイド 初心者でも失敗しない包丁研ぎの基本導入」


完全無欠包丁は「両刃」で販売されているので、両刃としての性能を維持するための砥ぎ方を紹介することが大切です。

また、片刃にするならユーザーの9割が占める「右利き用」にする方が現実的です(もちろん左利きの人のための注意書きも必要です)。


逆に、「片刃は魅力的だから片刃に成長させていく」というコンセプトで片刃に砥ぎ進めていくことを推奨するのであれば、新品時から片刃にして販売する方が、ユーザーはすぐに片刃の魅力に触れることができます。

10年以上かけて片刃に慣れていくのも良いですが、現代の刃物用鋼材は靭性が高く、刀身を薄くしても折れにくいので、新品状態から片刃で販売しても、片刃のデメリットに慣れるための時間は短期です。


実際、新品時から洋包丁の片刃サービスを受けるメーカーもあるようです(ユニバーサルエッジの刃付けではないですが、洋包丁を片刃に砥いで販売しています)。





◎砥ぎ方動画についてのまとめ


・包丁の向きが一般的な砥ぎ方の逆

刃先が砥石に引っかかる可能性があり、刃先に力を入れにくいので、初心者には難しい砥ぎ方だと思います。


・左片刃に近づく砥ぎ方

完全無欠包丁は両刃です。

片刃にするとしてもユーザーは右利きの人が多いはずです。


・初心者向けの説明動画としては実践が難しい

両刃の砥ぎ方として実践するのが困難に感じました。


・和包丁の研ぎ方の影響がある?

両刃の洋包丁の砥ぎ方ではなく、和包丁の裏を砥ぐ動画に影響を受けた動画のように見えました。





◎質問3:


「完全無欠砥石はどのような砥石ですか?」


サイトによると、吸水性のセラミック砥石です。

「両面砥石」という選択は共感できますが、気になるのは番手です。

ベーシックセットで「320番/1200番」ということでした。

メーカーが仕上げ用に使う砥石が1200番ということはないと思われるので、この番手で新品に近い切れ味が回復することはないと思います。

実際、公式の販売ページには「ベーシックセット」と「パーフェクトセット」があり、パーフェクトセットを使うと「新品時に近い切れ味まで回復可能」とあり、ベーシックセットはもちろん、その上位のパーフェクトセットを使っても新品時の切れ味に戻らないことがわかります。

「完全無欠砥石」を目指すなら、水に浸す必要がなく、硬い金属でも砥げ、誤って落としても割れることのない「レジンダイヤモンド3000番~6000番」あたりをオススメしても良いのではと感じました。




余談:

・note中に「浸水不要タイプの砥石は、表面を濡らすだけでOKです。」という記載があったのですが、完全無欠包丁を砥ぐのに「浸水不用タイプ」を使ってもよいなら、完全無欠に近いのは浸水不用タイプだと思います。


・「完全無欠砥石」のバリエーションに「パーフェクトセット」があることが興味深かったです。




以上、3つの質問の回答でした。

以下に続きます。




◎新品時の刃付けの維持は不可能


新品時の完全無欠包丁は「800年の歴史を誇る町の職人が1000分の1ミリを目指した刃付け」だそうです。

完全無欠包丁の「1000分の1ミリを目指した刃付け」に限らず、2~3万円クラスの高級包丁の多くは、メーカーの砥ぎ専用工具や職人の技による「こだわりの刃付け」が施されています。

「こだわりの刃付けをするから高価になる」とも言えます。

新品時の刃付けはメーカーや職人のこだわりのため、その切れ味を家庭で再現することは不可能です。

つまり、メーカーが説明する新品時の切れ味を味わえる期間は、購入後数日から数週間ということになります。


また、完全無欠砥石を使った砥ぎ方は、上にも書いたように、やがて片刃になる砥ぎ方でした。

完全無欠包丁は両刃で「左右兼用」として販売されていますから、新品時は5:5の完全な両刃と思われます。

そして両刃包丁は左右5:5に砥ぐことで切り込み抵抗の低減などが実現し、完全な性能を発揮します。

しかし公式note推奨の方法で砥ぐと、両刃としての刃先のバランスが「不完全」になり、左利き用の片刃包丁に育っていくことになります。





◎まとめ


1:完全無欠砥石では新品時の切れ味が維持できない


2:公式noteの説明動画では左利き用の片刃になっていく


3:「完全無欠砥石パーフェクトセット」を使っても新品時の切れ味にならない



今回いただいた質問の発端になった記事のタイトルは以下でした。


<砥石の使い方完全ガイド 初心者でも失敗しない包丁研ぎの基本導入>


「初心者でも失敗しない」というタイトルと実際の内容の間にギャップを感じる方もいるかもしれません。



参考:

刃先の形や砥ぎやすさなどについてのブログは以下です、



以上、質問の回答でした。

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