JOIZUの特徴や作られた経緯など ―最高の実用性を求めて―
- tihal86
- 9月12日
- 読了時間: 10分
更新日:10月2日
JOIZU(ジョイズ)は、ユーザーの要望と弊社の思いがひとつになって作られた、オールステンレスのユニバーサルエッジです。
JOIZUとはどのような包丁なのか、購入ご検討の参考になればと思います。
◎JOIZUが作られた経緯
JOIZUが作られた経緯は、より手軽かつ実用的で、特に魚を扱う際の「衛生」に優れた包丁を作ることでした。
主に以下の3点です。
経緯1:オールステンレス包丁の要望
オールステンレスの包丁は、衛生面に優れているためとても人気があります。
特に2020年からのコロナ渦で「衛生」が注目されるようになると、「ハンドルと刀身が一体」「食洗器対応」という特徴が一層の人気を呼んだと思います。
日本で一番売れている包丁は、貝印「匠創」の三徳包丁165㎜なのですが、これもオールステンレスです。
私は個人的に「茶色の木柄・3本鋲・デザイン的な暖かさ」が好きなので、弊社主力商品「PROCEED」は木柄で発売しました。
しかし「オールステンレスはないの?」というユーザーの声は「PROCEED」の発売当初からあり、いつか「オールステンレス」のユニバーサルエッジを作りたい気持ちがありました。
木柄と比較してオールステンレスの最大のメリットは、ハンドルと刀身が一体化していることによる「衛生性の高さ」です。
ハンドルがステンレスなら水が染み込まないため「木と金属の間に段差ができない(汚れが溜まらない)・ニオイが染み込まない」などのメリットがあります。
オールステンレスと木柄の比較(木柄は金属との境目に汚れが溜まりやすい)
※PROCEEDは木柄を使用していますが、「積層強化木」という体積変化の少ない素材です

また、オールステンレスの中でも、衛生面に優れたものとそうでないものがあります。
具体的には、以下のような包丁がオールステンレスの衛生面を損ねてしまいます。
<衛生面を損ねる要因>
穴開き→穴の中に汚れが溜まってしまう
ディンプル→くぼみの中に汚れが溜まってしまう
リブ→リブと刀身の境目に汚れが溜まってしまう
ハンドルについたディンプルなどのくぼみ→ディンプルの中に汚れが溜まってしまう
ハンドルそのもの複雑なデザイン→汚れが落ちにくい
ご家庭の包丁を砥ぐ仕事をしていると、実際に上記のような包丁の汚れをはっきり確認でき、「せっかくオールステンレスなのにこれではもったいない」と思うこともよくありますが、写真を見ていただくとわかるように、JOIZUはこの点も全て解決しています。
刀身に穴やくぼみはなく、ハンドルも柄尻にかけて太くなるだけの最もシンプルなデザインです。
ハンドルにディンプルがあるオールステンレスの包丁をお預かりすると、必ず汚れが溜まっています。
「滑り止め効果」のためにディンプルが効果的だという考え方もありますが、使ってみると、滑り止め効果よりも「デザインや他社との差別化に貢献している」と思われることもあります。
JOIZUのハンドルは最もシンプルな形ですが、柄尻側が太くなっているためか、数名で使い続けても「すっぽ抜け現象」はなく、問題は見当たりませんでした。
以下、あらためてJOIZUのデザインをご覧ください。
刀身にもハンドルにも穴やディンプルなどがなく、洗いやすく衛生的なデザインだということがわかります。

経緯2:ユニバーサルエッジ「PROCEED」の慢性的な供給不足
現在ユニバーサルエッジの「PROCEED」は、年間1200丁のペースで生産されていますが、2024年から生産が追いつかず予約販売になっています。
現在も国内外から問い合わせがあり、慢性的な供給不足になることはほぼ明らかです。
供給不足になった原因は、やはり2024年の2つの賞の受賞や、インスタグラムで玉ねぎのみじん切りが1億回再生されたことを主に、ユニバーサルエッジが様々なメディアで紹介されたことだと思います。
※詳しくはコチラに掲載しました。
ユニバーサルエッジを使いたくても使えない人が多数いらっしゃるため、少しでも多くの方々へご提供させていただく方法を考えた結果、中国産の包丁を輸入し、日本でユニバーサルエッジに加工する方法を選びました。
中国は生産規模が大きく、日本の10倍以上の生産力があり、安価で対応が早いこともメリットです。
デメリットとして「品質」が挙げられることが多いですが、たしかに「精密工業品」という視点で日本と中国の包丁を比較すると、日本製が優れている傾向があります。
しかし「家庭用万能包丁(実用品)」という視点から見ると問題ないレベルだと思います。
経緯3:SDGs12「つくる責任」の実践
私の包丁の修行の場であり、ユニバーサルエッジが生まれた地でもある「南伊豆町」は、海に面しています。
修行中は毎日のように海を見ながら生活をしていました。
海岸線沿いに港が点在していることもあり、町民自身が魚をさばくことが多く、砥ぎ直しでお預かりする包丁の中には、ほとんど常に柳刃包丁や出刃包丁が含まれています。
刀身には刃欠けやサビがあり、木の柄には魚のウロコやニオイがついています。
また、刀身とハンドルの境目には汚れが溜まり、かなり傷んでいるものもあります。
和包丁を砥ぐと、鉄のニオイや黒い泥水も出てしまい、手の汚れだけでなく、砥石やベルト(リング状のサンドペーパー)の消耗も多くなります。
和包丁は刀身の厚みがあり、砥ぐ時間もかかるため砥ぎ料金もかさむことがほとんどです。
これら多数のデメリットの解決は、まさにSDGs12の「つくる責任」と言え、現代のステンレス素材と、それらを加工する技術を使ったオールステンレスのユニバーサルエッジによって全て解決することができます。
具体的には、オールステンレスのユニバーサルエッジのメリットは以下です。
1:ハガネの包丁と比較して刃欠けが少ない
2:サビに強い
3:ハンドルにウロコやニオイが残らない
4:食洗器が使える
5:口金があるのでハンドルの付け根付近が傷まない
6:1分程度の短時間で砥ぐことができる
7:砥ぎの作業時間が短いので手や周囲が汚れない
8:砥ぐ面積が少なく砥石や研磨ベルトの消耗が少ない
9:和包丁と同じ片刃だが軽くて砥ぎやすい
10:砥いでも鉄のニオイがしない
お預かりした和包丁の傷み具合を見て、「つくる責任」を意識し、オールステンレスのユニバーサルエッジ「JOIZU」を作ることになりました。
結果的に汚れが溜まる余地がなく、洗いやすく、実用性に優れた素晴らしい包丁が完成しました。
余談なのですが、和包丁の砥ぎをご依頼くださる方とのおしゃべりの中で、「なぜ和包丁を使っているのか」という話題になることがあります。
「家にあったから」
「魚は出刃でさばくと教えてもらったから」
「刺身は刺身包丁で切ると教えてもらったから」
「親がそうしていたから」
「ずっと使ってきたから」
「まだ使えそうだから」
このような答えが返ってきます。
数十年続く海鮮料理を提供する民宿のオーナーには、「和包丁からオールステンレスの洋包丁に変えた」という人もいると聞きました。
その理由は、「手入れが楽で便利だから」だそうです。
「出刃や刺身包丁で切ると教えてもらった」というのは、当時はその包丁しかなかったからです。
和包丁を使う人がオールステンレスの洋包丁に触れる機会があれば、きっと大きな意識改革になると思います。
◎さらに万能性アップ
JOIZUはオールステンレスで、刃渡りが190㎜です。
ステンレスのハンドルは食洗器にも耐えるため、ハンドルに臭いが付きにくくなり、体積の変化もありません。
JOIZUは刃渡りが10㎜長いので(家庭用刺身包丁の刃渡りに近いので)、刃渡り180㎜のPROCEEDと比較すると「魚を切ることも視野に入れた包丁」と言うこともできます。
しかし、魚に特化した包丁ではなく、より効率良く魚を切る性能がPROCEEDにプラスされたというイメージです。
「大は小を兼ねる」という言葉通り、刃渡りが長ければ、魚に限らず大きな食材も切りやすいですし、スイーツ作りが好きな人は、6号のケーキも一回で切ることができます。
デザイン性や、使われている刃物用鋼材はPROCEEDの方が高いレベルですが、JOIZUはユニバーサルエッジとしてさらに万能性がアップした包丁と言えます。
◎価格の本質的な話
JOIZUの価格は税込みで8800円です。
「これほど便利な包丁がなぜ1万円以下で販売されているの?」と感じる方がいる一方、包丁に詳しい方なら「中国製は原価がかなり安いはずなのに」と感じる方もいらっしゃると思います。
詳細な金額は書けないのですが、価格は以下のようなことを考慮して決めています。
参考になればと思います。
まず、JOIZUのベースになる包丁は中国製です。
多くの既製品からユニバーサルエッジに適した包丁を探しました。
刀身に使われている金属は「ステンレス刃物鋼」と表記されるもので、PROCEEDのモリブデンバナジウム鋼と比較すると硬度が低めの部類です。
ベースになる包丁が決まると、次に刃渡りや刃先厚を指定するのですが、作業は全て数値の入力による加工のため、刃渡りや刃先厚の指定ではコストはかかりません。
結果的に、ベースになる包丁は安価で仕入れることができます。
そこからみなさまへお届けするまでにコストがかかります。
具体的には「中国から日本に送るための送料・関税・国内の運搬費用・最終刃付け・検品・洗浄・角度測定補助器具・梱包」などにかかる費用です。
また、弊社の検品の基準にもよるのですが、中国製品は日本製品より検品ではじかれる率が高く、それらの包丁はアウトレット品として値引き販売するか、実験用、研ぎ師養成用として使われるため、そのマイナス分がコストに加算されます。
そして最後に、弊社の利益やお客様にお届けしやすい価格などを検討し、販売価格を設定しています。
◎これからの万能包丁は三徳包丁からユニバーサルエッジへ
アラフォー世代以上の方々の中には、以前主流だったガラケーから、勇気を出してスマホに買い替えた方も多いと思います。
「スマホは大きいし重いし使い方もわからない」という不安を克服し、少しの練習の後に味わった便利さや楽しさは、ガラケーとは別次元だったはずです。
もちろんそれ以降、ガラケーに戻ることは考えなかったと思います。
三徳包丁(両刃)とユニバーサルエッジ(片刃)の関係が、まさに当時のガラケーとスマホと同じです。
三徳包丁は現代の家庭用万能包丁の主流ですが、刃渡りも刃付けも違うユニバーサルエッジは、少しの練習の後、みなさんにそれまでと別次元の便利さや楽しさを見せてくれるはずです。
具体的に、これまで三徳包丁を使ってきた方がユニバーサルエッジ(JOIZU)に持ち替えた場合、考えられる違和感は以下だと思います。
第一印象は「刃渡りが長い」、その次に「思ったより軽い」と感じるかもしれません。
実際に使い始めると「硬いものがまっすぐに切りにくい(片刃が原因)」「切っ先をぶつける(刃渡りの長さが原因)」ということがしばらく続くと思います。
その後少しずつ刃付けと刃渡りに慣れていき、気が付けばユニバーサルエッジの「便利さ・楽しさ」を体験しているはずです(スマホの操作方法や大きさに慣れ、便利さと楽しさを味わえるようになったときと同じ感覚です)。
そして過去に使っていた三徳包丁に持ち替えたとき、「もう三徳には戻れない」という感覚を味わっていただけると思います。
以下、実際にユニバーサルエッジを使って便利さや楽しさを味わってくださった方々からいただいた声です。
まだユニバーサルエッジを使ったことがない人の背中を押すきっかけになれば嬉しいです。
以下は従来型の万能包丁(両刃)とユニバーサルエッジ(片刃)の比較の参考になると思います。
以上です。






