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自分で考えることの大切さ ―認識のアップデート―

更新日:2024年12月15日


今回は「自分で考えることの大切さ」の話です。



私は南伊豆にあるレストランで、約10年間、調理と接客の仕事をしました。

レストランということもあってお客様との会話には「食」や「健康」の会話もするのですが、その中で以下1~5のような話を耳にすることがあります。


1:「オーガニック食品は健康に良い」


2:「ガンが死因の第一位なのは食生活が乱れているから」


3:「アレルギー体質の人が増えたのは食べ物のせい」


4:「寝る前に食べると太る」


5:「食品添加物は健康に悪い」



後述するように、これらは基本的に本質ではないのですが、似たような傾向は包丁関連の話にもあり、ネットや会話で以下のような言葉を見聞きすることがあります。



A: 「ステンレスは砥ぎにくく切れ味が悪い(ハガネと比較して)」


B:「割り込み包丁は片刃にしてはいけない」


C:「片刃は扱いにくい」


D:「和包丁は切れ味が良い」


E:「和包丁に裏スキがあるのは身離れや切れ味を良くするため」



・・・



◎自分で考えることの大切さ


冒頭にも書いたとおり、今回の投稿は「自分で考えることの大切さ」についてです。

私がこのことに気付いたのは、東京での事務職員の仕事を辞め、静岡県の南伊豆にあるレストランで修行を始めてからのことでした。


当初はカフェの経営を目指していたため、料理や接客を中心に数か月間住み込みでトレーニングをする予定だったのですが、修行中、レストランのオーナーご夫妻やお客様から様々な話を聞き、私自身の思い込みの多さや、物事をいくつもの視点から見ることの大切さなど、新しい発見が続きました。


滞在の数か月間で学んだことは「自分はなにも知らない・なにもできない」ということ、そして「自分で考えることの大切さ」でした。

納得いくまで学びたくなり、予定を大幅に変更し、オーナー夫妻に無期限の滞在を認めていただきました。


長期の修行のおかげで、「10万食を作る機会」を得られただけでなく、「包丁関連の勉強」はもちろん、日曜大工をやったり、バイクの免許を取ったり、オーナー夫妻のお子さんたちと遊んだり、常連さんと出かけたりすることもありました。

滞在初期は筋トレを含めた7キロのダイエットに挑戦し、「50キロ以下(身長164㎝)」の体重を維持しました。


「10万食作る」という経験は、修行当初の目的を充分に達成することができ、自分の成長を感じることができました。

「料理は、味も大切だけどその他の要素も大きい」と思ったのはこの体験のおかげです。

「包丁関連の勉強」では、技術だけでなく理論も学びました。

「日曜大工」をすると「野菜の千切りの一本」と「柱」が基本的に同じものだと気づき、「縦けん・横けん」の本質や、ノコギリ、斧、包丁などの刃物で「ものを切ること」の本質が見えてきます。

バイクに乗ると、練習すれば上達するという実感や、ロール・ヨー・ピッチングなどの動きが包丁の動きを表すのに都合が良いと気づきます。

子どもたちと遊ぶと、その純粋さに癒されると同時に、人間の欲の本質や自分の中の感情の表や裏に気付かされます。

常連さんとのお付き合いでは、それぞれの方々から利害抜きのお話を聞くことができました。

筋トレとダイエットの経験は苦しかったこともありましたが、「やる気になれば体重維持はできる」という自信だけでなく、「ちまたのダイエット論」に疑問を持つことができました。


多方面に及ぶ数えきれない経験が、自分の中にある「壁」を超えるきっかけになり、伝統や常識にとらわれず家庭用万能包丁としての性能を追求した「ユニバーサルエッジ」の開発につながりました。

また、自分で書類を書いて特許庁に実用新案を申請すること、会社の設立など、修行中に学んだことがその後の活動に役立っています。





◎食や健康にまつわる本質は?


前置きが長くなりましたが、まずは冒頭1~5の「食」や「健康」の話が本当なのかということについて書き、次に包丁のA~Eの話についても書きたいと思います。

どの話も、修行中に「きっとこれが本質だ」と印象に残ったものです。

※私は医師でも栄養士でもなく、内容が100%正しいわけではないので、最後は自分で考えて判断してください



1:「オーガニック食品は健康に良い」


「オーガニック食品」の定義は細かいので一概に言えないのですが、ここでは「自然派・無農薬・化学肥料不使用」などの言葉で語られる「昔ながらの製法の食品」とイメージしていただければと思います。

オーガニック食について話すと、「昔ながらの質素な日本食が身体に良い・自然食は免疫力が上がって医者いらず」などと言う人もいますが、それが本当なら昔の人の平均寿命は長かったはずです。

たとえば無農薬野菜は野菜の病気や寄生虫の割合が上がり、農家の苦労だけでなく、食べる側の感染症のリスクも上がります。




2:「ガンが死因の第一位なのは食生活が乱れているから」


現在の日本人の死因第一位はガンですが、その主な理由は、「医学が発達したから」と考えると説明がつきます。

昔は結核や心臓の疾患、脳の疾患などが死因の上位でした。

しかし医学の発達によってそれらの病気が治るようになり、現在は、現代医学でも治りにくい「ガン」が死因の一位になりました。

つまり、「昔は多くの人がガンになる前に他の疾患で亡くなっていた」ということです。


たとえばアジアの最貧国と言える東ティモールの国民の死因は、第一位が「結核」だそうですが、これは明治時代の日本と同じです。

日本は「ガンで亡くなる人の割合が世界一」、そして「平均寿命が世界一」の長寿国でもあります。

この二つを同時に説明するには「食生活が乱れているから」という理由よりも「医学が発達したためガン以外の病気が治るようになった」と説明した方が本質に近いはずです。




3:「アレルギー体質の人が増えたのは食べ物のせい」


アレルギー体質の人が増えたのは間違いないと思いますが、その理由は、医学の発達でアレルギー検査の精度が上がったことにより、低コストで多くのアレルギーを発見できるようになったからだと思います。

また、医師は自分の立場を守る意味もあり、少しでもアレルギー体質の疑いがあると「食べるのを控えなさい」と助言しますが、これもアレルギー体質(と認定される人)が増える理由です。

昔よりアレルゲンの種類が増えた(発見された)ことももちろん関係していますし、万一の事故を防ぐために多くの機関でアレルギーの有無の記入欄が増え、自分のアレルギーを調べる人が増えたことも理由のひとつだと思います。

このように、アレルギー体質の人が増える主な理由は食べ物以外にあります。


アレルギーという言葉がなかった時代はアレルギーはありませんでした。

昔、アレルギー体質の人がいなかったのは「オーガニック食でみんなが健康だったから」ではなく「アレルギーという言葉がなかったから・検査する方法がなかったから」などと考えられます。

そのような時代は、アレルギーが原因の急死だったとしても、「たたり・呪い」などの理由で処理されていたかもしれません。




4:「寝る前に食べると太る」


「寝る前に食べると太る」ということが本当なら、食料に困るような貧しい国の国民は寝る前に食べているはずです。

太る原因の本質は、もちろん「食べる量」にあります。

つまり、「必要量以上に食べるから太る」という単純な理由です。

寝る直前に食べても、1日の摂取量が合計で同じなら太りません。

ちなみに毎日揚げ物を食べても、量が少ないなら太ることはありませんし、寝る直前にアイスクリームを食べても量が少ないなら太りません(実験済みです)。

※いつもの3食をとってから寝る前に4食目を食べればもちろん太ります




5:「食品添加物は健康に悪い」


保存のための化学添加物や、いろどりのため、食感のための化学添加物など様々ありますが、ここではまとめて「添加物」と表現します。

化学的に作られた添加物がない時代の平均寿命は現在より短いです。

添加物を入れないと食材の傷みが早くなり、感染症の可能性が上がります。

添加物のおかげで助かる命を考えると、添加物はトータルで健康に良いものだと言えます。

いろどりや食感アップのための添加物については闇の部分も多いかもしれませんが、食品添加物が健康に悪いとは一概に言えません。




◎刃物にまつわる本質は?


刃物にまつわるA~Eの話もよく聞くことがありますが、これらについても、レストランのスタッフたちと考えたり、実験をしたりした結果に基づいて書いてみます。



A: 「ステンレスは砥ぎにくく切れ味が悪い(ハガネと比較して)」


たとえば50年前、当時最高峰のハガネで作られた柳刃包丁と、登場初期のステンレスで作られた柳刃包丁を比較すると、砥ぎやすさや切れ味に大きな差があったはずです。


その理由は、主にハガネの包丁を使うために砥石やまな板などが進化してきたからだと思います。

砥石の文化はハガネの包丁を砥ぐために進化してきたはずなので、当時、ハガネを砥ぐために適した砥石でステンレスの柳刃包丁を砥ぎ、それを実験結果としたのかもしれません。

砥石やまな板などを含め、ハガネ製の包丁を中心とした刃物文化の中に、初期のステンレス製の包丁を持ちこんだ状況なら、「ステンレスは砥ぎにくく切れ味が悪い」という結論になるのは当然だと言えます。


しかし現在は、ステンレスが進化しただけでなく、砥石も進化し、一般家庭では切り刃の面積が柳刃包丁の10分の1程度しかない洋包丁(ステンレス製)が主流になっています。

50年前と比較して、ステンレスの特徴を活かす方向で進化したため、現在は「ステンレスだから砥ぎにくい」ということはありません。

※なによりも、ステンレスが砥ぎにくかったら私は砥ぎません(笑)


洋包丁は、研ぐときに作業の場がほとんど汚れず、手にニオイも残らず数分で作業が終わります。

使う砥石も水に浸す必要がないためすぐに作業を始められ、陰干しの手間も不要です。

逆に、昔ながらの方法でハガネの和包丁を砥ぐと、準備や片付けに時間がかかり、砥石は変形しやすく、砥ぎ汁が出て手は黒く汚れ、金属のニオイが残ります。

私は、ステンレスの洋包丁は本当に砥ぎやすいと思っているので、普段から自分でも使い、お客様にもオススメしています。


「切れ味」についても、ステンレスの性能が上がり、50年前よりも改善されているはずです。

現代の包丁の切れ味は、結局「砥ぎ」にかかっているので、素材がどうかということよりも、「トータルで砥ぎやすい包丁」の方が切れ味を維持しやすいと思います。


「砥ぎやすい包丁」については以下のブログで図解しています。

※砥ぎやすい包丁とは ―砥ぐ面積の比較―


※片刃は砥ぎやすい?



「砥ぎやすさ・切れ味」というのは最終的に主観の部分が多いので、「ハガネの方が砥ぎやすい・切れ味が良い」という意見が間違えているとは言えません。

しかし包丁の話をしていると、「頭の中の情報を最新版にアップデートしていない人」が一定数いるのも確かだとわかります。

たとえば15年前、当時最高峰のガラケーと、登場初期のスマホを比較して、「スマホは重くて大きくて動作が不安定だからダメ」と、今でも当時の印象を持ち続けているようなイメージです。

初代iPhoneと現在のiPhone16では性能に大きな差があります。

金属の進化にスマホほど大きな変化はないとしても、「ステンレスも砥石もまな板も昔より進化している」と考えることができれば、包丁に対する意識も変わるかもしれません。




B:「割り込み包丁は片刃にしてはいけない」


これも上記と似ていて、50年前ならそうだったかもしれません。

50年前の割り込み包丁は、コストや機能性を考え、そうなるべくして割り込み包丁になっているため、片刃にすると柔らかい側材が刃先になってしまい、切れ味は極端に落ちたということが考えられます。

しかし現在の割り込み包丁は、金属の質が上がったため、昔とは意味が違ってきました。

現在の割り込み包丁は、機能性を最優先としたものではなく、「割り込みは切れ味が良い」という昔ながらのイメージの踏襲と「デザイン性」が重視されていると思います。

以前包丁メーカーの社長が「これ片刃にしてみたら?」と割り込み包丁を提供してくださったことがあるのですが、そのことも、現代の割り込み包丁が昔とは意味合いが違うことを示していると思います。


割り込み包丁と片刃の関係について詳しくは以下の3つの投稿を参考にしてください。

興味がある方にはきっとお役に立てる内容だと思います。


※片岡製作所「響十」のカスタム


※昔と現代の割り込み包丁の違い ―芯材5㎜の謎―


※割り込み包丁は片刃に砥げるの?





C:「片刃は扱いにくい」


もし本当に片刃が扱いにくいのであれば、片刃包丁という文化はなくなっているはずです。

しかし実際は、野菜の「薄切り」は薄刃包丁(片刃)を使うと安定して薄く切ることができるので、単純に片刃が扱いにくいわけではありません。

また、洋包丁の世界でも、もし片刃が扱いにくいなら、両刃を片刃に砥ぎ直すシェフはいないはずです。


片刃が扱いにくいと感じる場面は、主に硬い食材の「切り分け」です。


硬い食材の「薄切り」や「皮むき」などは、片刃の方が楽です。

また、肉などの柔らかいものを切るときは、片刃特有の切り込み抵抗(マイナス要素)が片刃の鋭角な砥ぎ角(プラス要素)によって相殺され、両刃とほとんど差がなく使うことができます。

高さ数ミリの薄い肉なら、砥ぎ角の鋭さだけが大切になるので、理論上片刃の方が切れ味が良いはずです。




以下の動画は、前半はユニバーサルエッジ(片刃)で薄切りをしています。

ユニバーサルエッジは、刀身が薄く裏スキのない片刃(薄刃包丁より進化した最新の片刃包丁)です。

動画を見ると、野菜の薄切りのときに片刃が扱いにくいと思う人はいないはずです。


ニンジンの薄切り 前半がユニバーサルエッジ(片刃)、後半が両刃  


※薄刃包丁も片刃なので安定して薄切りができますが、ユニバーサルエッジのような「刃離れ効果」はないので動画のように切ることはできません(同じように切れるとしたら、砥ぎ直すうちに意図せずユニバーサルエッジに似た刃付けになったものだと思います)



以下は「両刃」の薄切りです。

両刃でも特に薄切りが苦手な「刃先厚が厚い両刃」の切れ方を見ていただければと思います。

刃先の強度は高いですが、薄切りは不安定なことがわかります。


刃先の厚い両刃で薄切り




以下は「ユニバーサルエッジ」の薄切りです。

安定した刃離れだとわかります。


ユニバーサルエッジで薄切り



包丁を使う人の中には「私はそもそも薄切りをしないです。するならスライサーでやります」と言う人もいますが、それは両刃の包丁を使っていて、薄切りがやりにくいからかもしれません。

ユニバーサルエッジを使えば楽しく薄切りができるので、料理がもっと好きになり、料理のバリエーションが増えるだけでなく、スライサーによる指先のケガも防ぐことができます。



「片刃は扱いにくい」と信じられているのは、片刃の和包丁は刀身が厚く、片刃のデメリットが目立つためです。

「厚い刀身と裏スキあり」の和包丁「薄刃包丁」は、洋包丁と比較すると砥ぎにくく、刃離れ効果もありません。また、刃線の関係から野菜専用の包丁と呼べるのですが、硬い野菜を切り分けると野菜が割れてしまうほどの切り込み抵抗がありました。

一方ユニバーサルエッジは、現代の刃物用鋼材の特徴を活かした「薄い刀身と裏スキなし」の片刃包丁です。

「ユニバーサルエッジ」の登場によって、薄刃包丁のデメリットが全て「解決・改善」され、片刃の方がメリットが多いと言える時代になりました。



参考までに、以下に「三徳・牛刀(両刃)」と「ユニバーサルエッジ(最新の片刃)」の比較表を添付します。

従来型万能包丁が両刃、次世代型万能包丁が最新の片刃です。

両刃と比較すると、最新の片刃は硬いものの切り分け以外全て優れています。






D:「和包丁は切れ味が良い」


以前より少なくなったかもしれませんが、今でも「和包丁は切れ味が良い」と単純に信じている人がいます。


和包丁の切れ味が良い理由は主に2つあり、ひとつは「砥石を使って砥ぐから」です。

一概に言えないのですが、包丁の構造上、砥石でなければ正しく砥げないため、簡易シャープナーで砥ぐことの多い洋包丁よりも、砥いだ後の切れ味は和包丁が優れています。

逆に言えば、砥石を使えば洋包丁でも切れ味は良くなります。


ふたつめは、和包丁が刃渡りを長く使う切り方をする構造の包丁だからです。

特に野菜を切る薄刃包丁は、刃線が直線的なため、「スライド切り」を使うことになります(動画「4つの切り方」参考)。

スライド切りは断面のツヤがキレイに仕上がる切り方なので、切れ味が良いと判断されますが、洋包丁でも同じように切ればキレイなツヤを出すことができます。



4つの切り方



※以下のブログに食材の断面の比較写真があるので、興味がある人は参考にしてください。

「簡単編」を紹介しますが、興味がある人は簡単編のあとに続く「詳細編」もご覧ください。

和包丁の方が切れ味が良い理由 簡単編



多くの人が洋包丁で「スライド切り(断面がキレイになる切り方)」をせず「スライドスイング切り(断面がキレイにならない切り方)」をする主な理由は、砥ぐときに簡易シャープナーを使うため刃線が乱れ(アゴ付近がへこむ)、スライド切りをすると食材の切り離れが悪くなるからです。

家庭科の先生や親がスライドスイング切りをしていたためか、同じ切り方をしている人もいます(そもそも自分がスライドスイング切りをしていることに気付いていないこともあります)。


刃先の仕上げが同じなら、薄刃包丁を使うときと同じフォーム、つまり「スライド切り」で切れば、洋包丁でも同じツヤが出ます。


ということで、和包丁の切れ味が良いのは、「砥石で砥ぐから・スライド切りを使うから」です。

表現を変えると「裏スキのある和包丁は砥石で砥ぐしか砥ぐ方法がなく、野菜用の薄刃包丁はスライド切りしか使えない、だから切れ味が良くなってしまう」とも言えます。

洋包丁は砥石でも簡易シャープナーでも砥ぐことができ、スライド切り以外にどのような切り方にも対応できるため、「切れ味が悪い」と評価される場面もあります。





E:「和包丁に裏スキがあるのは身離れや切れ味を良くするため」


和包丁は、裏をベタ砥ぎするので、裏スキがある方が早く、平らに、そして安全に砥げます。


「裏スキがあると食材と包丁の間に空気が入り、身離れや切れ味が良くなる」という説明もあり、確かに状況によってはそのとおりです(鏡面に砥いだ裏スキなしの和包丁でニンジンの輪切りをすると包丁がくっついてしまい、とても切りにくい場面があると思います)。

しかし裏スキがあっても食材に貼り付くことがあることもわかっています。


様々な状況をふまえながら実験をした結果、私が仕事をしているレストランでは、「裏スキがある主な理由は砥ぎやすさを追求したもの」という結論になりました。


※裏スキの意味について詳しくは以下を参考に

裏スキあれこれ ―裏スキの意味―



以上です。

みなさんもA~Eについて考えてみてください。

物事の本質について考えるとき、以下の話もヒントになると思います。




◎「技術は見て盗むもの」の本質


レストランの修行でも刃物の修行でも、「技術は見て盗め」と言われることがあるようです。


昔、調理や刃物の作り方を「見て」盗む必要があったのは、単純に文明や教育が現在よりも発達していなかった、つまり「語彙や機材が少なかったから」だと考えられます。

みなさんが料理をするときのレシピには、「○○を30グラム・中火で10分」などとありますが、200年前は家電製品も時計もありませんし、ガスコンロも、もちろん「中火」と書いた調整レバーもありません。


「識字率」も今よりも低く、文字での意思疎通ができない場合もあります。

そのような状態の中では、若者は親や師匠の作業を見て覚えることが主流だったはずです。


しかし現代人は、様々な言葉や機材を作り出し、言葉(文字)で技術を伝え、この数十年は、写真や動画など、さらに確実に伝える方法も発明しました。


技術を見て盗むだけでは、あいまいに受け継いでしまうことがほとんどかもしれません。

「見て盗む」ことも大切ですが、現代は言葉や映像を使って正確に伝える方法を選ぶ時代になったと思います。





◎昔の文献は正しかったのか


この100年は教育が統一され、標準語も浸透していますが、昔は各地域で方言が使われ、刃物にまつわる文献があるとしても、地域ごとに表現が違っていたはずです。

義務教育を受けた人同士のリアルタイムのLINEでさえ誤解を生むことを考えれば、時計や計量器、写真や動画など客観的な記録が取れない時代の人が残した文献を正しく解釈することは困難です。

人間は間違えることがあるので、過去の文献を疑うことはもちろん、先生や先輩の言葉も鵜呑みにせず、実験などを通して、最後は自分で考えて判断することが大切だと思います。





◎「切れ味が良い」とはどういうことか


硬い食材を切るときと柔らかい食材を切るときでは、包丁に求められる性能は違います。

硬い食材を切るときは主に刀身全体の薄さ、柔らかい食材を切るときは主に刃先の鋭さが大切です(薄い刀身に鋭い刃先がついた包丁が万能性が高いです)。

また、切れ味の良い刃先を活かすためには「切り方」も大切です。

「切れ味」というと、刃先の仕上がりに注目しがちですが、他にも様々な要因があります。





◎知れば知るほど良さがわかる包丁を


世界から見て日本の包丁は「切れ味が良い」と定評があります。

現在はインバウンドの影響も重なり、日本の包丁が飛ぶように売れているとのことです。


しかしこの状態が続くかどうかはわかりません。

「物作り」の世界には、「どうせユーザーにはわからないから手抜きをしよう」という考え方と、「ユーザーにはわからなくても手抜きをせず人の役に立つものを作ろう」という考え方が混在していると思います。

そしてその考え方は、ユーザーが知恵を身に付けていくほど、良くも悪くもユーザーに伝わることになります。

インターネットを使うことで、世界中の包丁ユーザーが「認識のアップデート」を進め、刃物について本質的な知識を得ていったとき、日本の刃物をどう感じるかは、今後製造にかかわる人たちの意識にかかっている気がします。

日本の包丁が「知れば知るほど良さがわかる包丁」なら、今後も世界から信頼され、人気が続くはずです。





◎師匠も人間


時代を変えていくのは主に若い人たちです。

仕事をしていると、師匠の言葉の重みが圧倒的に強い場合が多いかもしれません。

しかし師匠も人間ですから、間違えたり、情報のアップデートをしていなかったりすることはありえます(もちろん私も間違いや勘違いをしますし、私の師匠もそうです(笑))。


「師匠の言葉」は、長い経験に基づいた貴重な言葉であることは間違いないのですが、時代はいつも進んでいることを念頭に、研究や実験を通し、最後は自分で考え、認識のアップデートを怠らないようにしてください。


もちんこのブログの内容も鵜呑みにせず、本質に近づくためのヒントの一部として考えていただきたいと思います。



以上です。

今回のブログの内容が少しでもお役に立てたら嬉しいです。

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