top of page

片刃は砥ぎやすい?

更新日:2023年4月23日


ネットで和包丁と洋包丁の違いについて調べているときに、以下のような情報を読みました。


「和包丁と洋包丁の違いは砥ぎやすさです。和包丁は片刃、洋包丁は両刃です。片刃は片側しか砥がなくてよいので、和包丁は砥ぎやすいです」 要約すると「和包丁は片刃です・片方しか砥がないので砥ぎやすいです」ということですが、この情報は誤解があるので、より正しい情報を書いておきたいと思います。 結論から簡単に書くと、「和包丁の片刃は砥ぎにくいです、洋包丁の片刃は砥ぎやすいです」となります。



包丁は使っていくうちに切れ味が落ちるので、いつか砥ぎ直す必要があります。 実際、お客様と直接お会いする「包丁なんでも相談室」でも、砥ぎの悩みを聞くことが少なくないので、この記事を見て片刃の和包丁を買ってしまうと、さらに砥ぎで悩むことになります。 私のサイトには、「片刃の方が砥ぎやすい」とはっきり書いてありますが、それは「洋包丁(シェフナイフ・牛刀)」について書いたものです。 和包丁の片刃は洋包丁の片刃と比較して砥ぎにくく、私は砥ぎサービスでもお断りする場合がほとんどです。 ◎和包丁の片刃はなぜ砥ぎにくいのか 包丁の砥ぎやすさには、大きく分けて4つの意味があります。

ひとつは「金属そのものが削れやすいか」です。

削れにくい金属ほど砥ぎにくい傾向です。

2つめは、「砥ぐ面が大きいか小さいか」です。

大きいほど、砥ぎにくい傾向です。

3つめは、「砥ぐ面の形が複雑か」どうかです。

複雑なほど砥ぎにくい傾向です。

4つめは、「砥ぐ面の長さ」です。 長いほど砥ぎにくい傾向です。

和包丁は、主に2の意味で砥ぎにくいと言えます。

和包丁は片刃ですが、本来の性能を発揮する砥ぎをする場合、砥ぐべき面積が洋包丁の10倍前後あります。

下図は、左が和包丁の刀身、右が片刃の洋包丁の断面のイメージ図です。 和包丁は右側に刃があり、左側に裏スキがあり、刀身全体が片刃構造です。 洋包丁は、刀身全体が両刃構造のくさび型で、刃先だけが片刃です。

赤い部分が砥ぐ場所です。



















図を見てわかるように、和包丁の方が洋包丁と比較して母材の厚みがあり、

刀身そのものがくさび型ではないので、砥ぐ面積が多くなります。 さらに、切り刃の面がアゴから切っ先に向けて直線ではないので、美しく砥ぐには熟練した技術が必要になります。 和包丁に使われる「鋼(ハガネ)」は「砥ぎやすい金属」と言われています。 確かに金属そのものは砥いでいる感覚がつかみやすいですが、切り刃の曲面や、砥ぐ面積が広いことは、砥ぎやすさにとってマイナスです。 これが、和包丁が研ぎにくい(砥ぐのが難しい)理由です。 「ハガネの方がステンレスより砥ぎやすいからハガネ素材が主流の和包丁の方が砥ぎやすい」、という意見も聞きますが、これも100%正しいとは言えません。 ステンレス素材の洋包丁の方が砥ぐ面積が狭く、刃欠けも少なく、砥ぐ量が少なくてすむからです。 砥ぐ量が少ないということは、つまり砥ぎやすいということです。 和包丁の欠けやすさ(減りやすさ)についてはいつか書く予定ですが、たとえば330㎜の柳刃包丁が20年で90㎜減ったという記事があり、「私の万能包丁は4年間、硬い野菜も切って2㎜しか減らないのに(20年で10㎜)」と思ったことがありました。 金属の削りやすさだけを考えれば、ハガネは砥ぎやすいと言えるかもしれません。

しかし、刃欠けしにくく砥ぐ量が少ないステンレスの洋包丁の方が、トータル的に砥ぎやすいと言うことができます。

余談ですが、ハガネが砥ぎやすいということなら、ステンレスは砥ぎにくいことになります。

そして和包丁は、砥ぐ面積、切り刃の面全体のカーブの関係で、洋包丁より砥ぎにくいです。

そうなると、ステンレス製の柳刃包丁は、とても砥ぎにくい包丁ということになりそうです。

砥ぎ職人の腕の見せ所ではありますが、ユニバーサルエッジを使えば全て解決してしまう問題なので、私はユニバーサルエッジをオススメしたいです。 話は戻りますが、「洋包丁」の場合は、両刃より片刃の方が砥ぎやすいです。 以下の図をご覧ください。 左が両刃、右が片刃の洋包丁の断面です。

赤い部分を砥ぎます。 右側だけ砥ぐのは、左側も砥ぐより作業工程が少ないことと、右利きの人が左側を砥ぐのは難しいという2つの理由から、片刃の方が砥ぎやすくなります。


















余談: 和包丁にも、菜切り包丁という「両刃」の包丁があります。

刀身の断面は洋包丁の両刃とほとんど同じ形です。

洋包丁と同様、砥ぐ面積が少ないので、和包丁の場合は片刃より両刃の方が砥ぎやすいです。 ◎まとめ 「和包丁・洋包丁・片刃・両刃・砥ぎやすさ」をキーワードにまとめてみます。 あくまでも私の経験からの主観ですが、本質に近いと思います。

洋包丁は、両刃より片刃の方が砥ぎやすい。 和包丁は、片刃より両刃の方が砥ぎやすい。 洋包丁の片刃が一番砥ぎやすい。 和包丁の片刃が一番砥ぎにくい。

下図は左から和包丁・両刃の洋包丁・片刃の洋包丁です。

















以上、「片刃は砥ぎやすい?」の答えでした。

bottom of page