和包丁はなぜ食材ごとに使い分けるのですか?
- tihal86
- 8月10日
- 読了時間: 5分
更新日:8月26日
「和包丁はなぜ食材ごとに使い分けるのですか?」という質問をいただきました。
「洋包丁(三徳や牛刀)」は「肉・魚・野菜」なんでも切れるので不思議に思ったようです。
和包丁は、「柳刃・出刃・薄刃」に代表されるように、目的に応じて用意された「専用包丁」を使い分けます。
ではなぜ食材ごとの専用包丁なのか・・・
ヒント:
スマホには、「カメラ・ムービーカメラ・パソコン・電話」などの機能がひとつにまとまっていますが、30年前はどうだったでしょうか。
あくまでも「家庭用として」という前提で考えてみてください。
みなさんのスマホには、写真を撮るための「カメラ」、動画を撮るための「ムービーカメラ」、インターネットにつながる「パソコン」、人と話すための「電話」などの機能が入っていると思います。
昔は「写真を撮る・動画を撮る・パソコンを使う・電話をする」などの目的に応じてそれぞれ専用の機器が必要でしたが、時代の流れによって「スマホ」という汎用性の高い機器が生まれ、これらの機能がひとつになりました。
包丁の歴史にも似たところがあります。
昔は「魚をさばく・さばいた魚を切り分ける・野菜を切る・皮をむく・硬い食材を切り分ける」などの目的に応じてそれぞれ専用の包丁が必要でしたが、時代の流れによって「洋包丁」という汎用性の高い包丁が生まれ、これらの機能がひとつになりました。
ということで、「和包丁はなぜ食材ごとに使い分けるのですか?」の答えは「和包丁は汎用性が低いから」と言うことができます。
◎和包丁の汎用性が低い理由
次に「なぜ和包丁は汎用性が低いのか」という疑問が生まれます。
その答えは、刀身の「厚さ(重さ)」です。
下の写真は、洋包丁(左)と和包丁(右)の切っ先側を上から撮ったものです。
和包丁の刀身の厚さに注目してください。
一番薄い切っ先側でも写真のような厚さがあります。

ほとんどの和包丁は刀身の厚さが3㎜以上あり、場合によっては10㎜というものもあります。
和包丁は洋包丁と比べて刀身が厚いことが特徴なのですが、和包丁の刀身が厚い理由は単純です。
「当時は刀身を薄くできなかったから」です。
刃物は薄いほど切れ味と砥ぎやすさが向上しますが、昔は、一般家庭に普及できるような安価で靭性の高い金属や、金属を均一に伸ばす技術がなく、強度不足を「厚さ」で補っていました。
そのため包丁の形はそれぞれの目的に応じた形になりました。
例として、柳刃包丁は長いかわりに細い刀身になり、出刃包丁は峰を抑えて叩く作業があるので、柳刃より厚みがあり刃幅もありますが刃渡りは短くなりました。
また、薄刃包丁は切り込み抵抗をできるだけ低減するために切り刃の幅が大きい(砥ぎ角が鋭角)などの特徴があり、これらの機能をひとつにまとめることができません。
もしひとつにまとめようとすると、実用性がないほど重くなってしまいます。
参考:和包丁が片刃の理由はコチラ
◎専用機器の優位度
「専用機器」はその目的専用に作られているので確かに優れた面もあります。
たとえば、日常生活レベルで専用機器がスマホに優ると感じるのは、カメラの光学ズームの望遠機能です。
光学ズームの倍率だけを見ればカメラが優れています。
しかし、重さや大きさ、価格などを考えると、トータル性能ではやはりスマホが優れていると言えます。
時代の流れによってカメラの優位度が下がり、今後カメラは趣味やプロのこだわりとしての色が濃くなっていきます。
和包丁もこれと似ています。
「専用包丁」はその目的専用に作られているので確かに優れた面もあります。
たとえば、日常生活レベルで、和包丁が洋包丁に優ると感じるのは、薄刃包丁(和包丁)の野菜の薄切りです。
野菜の薄切りの安定感だけを見れば薄刃包丁が優れています。
しかし、そのコストや汎用性の低さを考えると、トータル性能ではやはり洋包丁が優れていると言えます。
時代の流れによって和包丁の優位度が下がり、今後和包丁は趣味やプロのこだわりとしての色が濃くなっていくと予想されます。
※ユニバーサルエッジは、従来型の洋包丁と違い、薄刃包丁の性能も発揮することができる、本当の万能包丁です
以下を参考に
◎まとめ
「和包丁はなぜ食材ごとに使い分けるのですか?」
の答えは
「汎用性が低いから」
そして汎用性が低い理由は
「厚みがあるから」
厚みがある理由は
「薄くできる刃物用鋼材や技術がなかったから」
となります。
ではなぜ、刀身が薄い包丁を作れる現代、刀身が厚い和包丁が使われているのか・・・
実際にこの質問をいただくことがありますが、答えは、趣味やプロの世界で和包丁を使う人たちの心の中にあると思います。
余談:薄い包丁「KISEKI:」
「刀身が厚いと汎用性が低くなる」ということは、逆に刀身が薄いと汎用性がアップすることになり、もちろん実際にその通りです。
そして薄い包丁の代表と言えるのが、福田刃物の「KISEKI:」という万能包丁です。
刀身の厚さは、万能包丁で平均的な1.8㎜前後を大きく下回る1.1㎜強で、これは一般的な万能包丁の中ではダントツの薄さです。
また、「脱職人」を目指し機械で刃付けをしているため、品質が安定しています。
しかも刀身は「タングステンカーバイド」というとても硬い金属でできています。
高価なのですが、それでもよく売れているため、福田刃物では新工場を建設し、KISEKI:を増産することになったそうです。
現在の万能包丁としてほぼ完璧だと思いますが、公式ページの「砥ぎ方」についてはあまり触れていないようです。
砥ぎ方についても包丁と同じこだわりを持つことで、SDGs12の「つくる責任」の達成度が上がるはずですが、いずれにしてもユーザー本位の素晴らしい万能包丁を作っているのは事実です。
※弊社推奨のKISEKI:の砥ぎ方についてはこちらを参考に。
以上です。