従来の万能包丁(三徳・牛刀)と新型の万能包丁(ユニバーサルエッジ)の違いについて、先日投稿した「比較表」の各項目ごとに説明します。
比較表

この表では、「従来の万能包丁」と「ユニバーサルエッジ」の性能を比較しています。
「従来の万能包丁」とは、刃渡り180㎜前後の「三徳・牛刀」などと呼ばれる「両刃」の包丁で、日本のほとんどの家庭で使われていると思います。
◎各項目の解説
以下の項目について説明します。
文中では、従来の万能包丁を「従来型」と表記します。
薄切りのしやすさ
薄切りの刃離れ
野菜の千切り
玉ねぎのみじん切り
硬いものを半分に切る
砥石での砥ぎやすさ
汎用性
コストパフォーマンス
包丁の寿命
安全性
●薄切りのしやすさ
従来型は両刃のため、薄切りをしようとすると途中から刃が右下に落ちてしまうことがあり、厚さが不安定になります。
刃が右下に落ちるのを防ごうとすると包丁を右に傾ける必要があり、そのコントロールが難しいと感じます。
また、従来型は切った食材が刃離れしにくいため、食材がそのまま刀身の右側にくっつきながら切れます。
言葉で表現するのが難しいのですが、きめが細かく硬いニンジンなどの野菜は、包丁の右側に貼り付いたまま包丁の動きを止めてしまうことがあり、止まってしまった包丁が急に動き出すため不快に感じます。
また、それでも薄切りをしようとすると、ニンジンが途中から引き裂かれるように切れてしまうことがあります(この現象はフラットグラインドの薄い刀身の包丁で起こりやすいです)。
包丁の動きが止まるイメージとしては、「ガラス板とガラス板がぴったり貼り付いて動かなくなる・仕上げ砥石同士を共擦りしたときにくっついてしまう」、という現象に似ています。
「刃が右に滑り落ちる・貼り付いてしまう・途中からちぎれる」などの現象を防ぐためには、ある程度食材の厚さが必要になるため、従来型では薄く安定して切ることが困難です。
(そのためスライサーを使って利き手をケガしてしまう事故が絶えず、この件については国民生活センターも各方面へ注意喚起しています)
ユニバ―サルエッジは完全片刃、つまり刀身の左側が平らなので、その面が食材に沿って真下に降りながら右側の切り刃で食材を倒していくため、包丁がふらつかず、食材が貼り付かず、安定して薄切りができます。
以下は「ニンジンの薄切り」の比較です。
従来型の包丁では薄切りが不安定なことがわかります。
【動画】
前半がユニバーサルエッジの刃付け(片刃) 後半が従来型(両刃)
実験のために同じ包丁を2丁購入し、一方をユニバーサルエッジにしました。
同じ包丁でも刃付けの変更だけで薄切りのしやすさが大きく向上します。
さらに詳しい話は以下をご覧ください。
薄切りあれこれ ―0,4㎜の薄切り―
●薄切りの刃離れ
従来型は、切った食材が包丁にくっついてきます。
ユニバーサルエッジは、実用新案取得の刃付けによって毛細管現象を打ち消す効果を生み出し、楽しい刃離れを体験できます。
【動画】
前半がユニバーサルエッジの刃付け(片刃) 後半が従来型(両刃)
以下が「薄切りの刃離れ」の中でも閲覧数が多い動画です。
この刃離れは、従来型ではいくら熟練した職人でも不可能です。
逆に言えば、ユニバーサルエッジを使えば、初心者でもできるようになります。
ニンジン
紫玉ねぎ
参考:
単純に「片刃だから薄切りの刃離れが良い」というわけではありません。
詳しくは以下をご覧ください。
片刃は刃離れが良いの?
従来型との薄切りの刃離れの比較はこちら(ページの中ほど「刃離れ」の動画)
※包丁の構造が違うため従来型の包丁では薄切りの刃離れは不可能です
※厚切りや乱切り、切り分けなど、「薄切り以外の刃離れ」については、ユニバーサルエッジも従来型と同じように食材がくっつくことがあります
●野菜の千切り
千切りは「薄く切ること」の延長なので、従来型よりユニバーサルッジの方が得意です。
和包丁の「薄刃包丁」も千切りが得意ですが、その理由は片刃だからです。
ユニバーサルエッジも片刃なので、薄刃包丁と同じレベルの千切りを作ることができます。
ただし薄刃包丁は切り刃の長さが長いため薄切りの刃離れ効果はなく、トータルではユニバーサルエッジの方が作業性に優れています。
作業効率の良さは、以下の動画で伝わると思います。
お店で出す千切りサラダの仕込み風景です。
従来の万能包丁では薄切りができず、「スライサー(薄切り用の道具)」を使う人が多いのですが、ユニバーサルエッジは薄切りが得意な包丁なので、スライサーが不用になるだけでなく、「利き手のケガ」も防ぐことができます(包丁は利き手で持つので右手のケガはほとんどありません)。
また、従来の万能包丁では薄切りが上手にできず、スライサーを使ってケガをしてしまった人が「私には千切りはできない」とあきらることがありますが、ユニバーサルエッジを使うと千切りができるようになるだけでなく、「千切りが楽しい」という喜びを味わうことができ、千切りが上手になります。
●玉ねぎのみじん切り
従来型と比較して薄切りの刃離れが良いので、玉ねぎのみじん切りでも差が出ます。
玉ねぎの硬さや大きさにもよりますが、ほとんどくっつかないためまな板の上でまとまりやすく、「集めやすい・涙が出にくい」など、効率よく作業ができます。
「小さめ・硬め」の玉ねぎほど刃離れが良い傾向があります。
以下の写真は紫玉ねぎのみじん切りです。
包丁の刀身にも少しくっつきますが、まとまりが良いことがわかります。
紫玉ねぎのみじん切り

まとまっているので集めやすいです

以下の動画は、横と上からです。
玉ねぎがくっつきにくいことがわかります。
横から
上から
過去に実施した「100人アンケート」では、玉ねぎのみじん切りは日本の家庭で最も多く行われている作業だとわかりました。
玉ねぎのみじん切りが得意な包丁は、大きなニーズがあると言えます。
※「100人アンケート」の結果
●硬いものを半分に切る
ユニバーサルエッジの唯一の苦手分野が、硬いものを切り分ける作業です。
比較表でも、この項目は従来型の方が優れています。
片刃特有の切り込み抵抗があるため、切るものが硬いほどまっすぐ切ることができず、「切れ味が悪い・扱いにくい」と感じます。
従来型を使い続けてきた人にとっては、意識して包丁を左に傾けることと少しの練習が必要ですが、和包丁を使ってきた人には簡単に扱えます。
いずれにしても「慣れ」で対応できるレベルです。
自分から見て包丁を少し左に傾け、切っ先側を「振り子」のように使って切ります
問題ないレベルだと思います

※和包丁より使いやすく、硬いものを切る作業も「慣れ」でカバーできます
●砥石での砥ぎやすさ
利き手側だけ砥げばよいので作業がしやすく、作業時間は従来型の半分です。
また、「シームレス砥ぎ」という新しい砥ぎ方で、刃線を整えながら短時間で砥ぐことができます。
シームレス砥ぎについてはこちら
●汎用性
従来型は両刃なので「片刃ならではの特徴」を発揮できません。
ユニバーサルエッジは片刃なので、薄刃包丁のような繊細な薄切りや千切りができるだけでなく、刃先の研ぎ角が柳刃包丁に近いため、刺身包丁として使っても従来型より優れています(柔らかいものを切るときは刃付けではなく砥ぎ角の狭さが大切になるため)。
また、包丁の重心位置や全体の重さの関係で、手首や腕の疲れが和包丁よりも少なく、皮むきなどの空間作業も楽にできます。
実際に私は10万食をユニバーサルエッジだけで作ってきました。
ユニバーサルエッジのような汎用性が高い包丁は、「持ち替える手間が省ける・保管スペースが節約できる・手入れが一本だけ・購入コストの削減・資源の節約」などのメリットがあります。
以下も参考にしてください。
ユニバーサルエッジとは ―2つの進化の合流点―
●コストパフォーマンス
従来型と比較して汎用性が高いということだけでもコスパは良いのですが、片側しか砥がないので砥ぐ時間や砥石の節約になります。
また、ステンレス製の刀身は刃欠けしにくく錆びにくいことも、やはり砥ぐ時間や砥石の節約につながり、高いコストパフォーマンスに貢献しています。
●包丁の寿命
簡単に表現すると、片側しか砥がないユニバーサルエッジの寿命は、同じステンレス製の両刃包丁の2倍です。
口金式なので衛生面も優れ、ハンドルまわりの寿命も長いです。
以下は「新品のユニバーサルエッジ」と「4万食作ったユニバーサルエッジ」の比較写真です。
包丁の寿命についての詳細は以下です。
「4万食作った包丁と新品の包丁の比較」
●安全性
弊社が販売するユニバーサルエッジ「PROCEED」には、「切っ先とアゴの丸め・峰のハイブリッド処理・アゴ上の丸め」などの安全対策が施されています。
不意なケガや痛みを防ぐだけでなく、皮むきや砥ぎ作業のときの指の負担を減らしたり、包丁を洗うスポンジや、水分を拭き取るタオルの消耗も軽減できます(切っ先やアゴが鋭いと、スポンジやタオルを傷つけやすいです)。
新品状態で「切っ先とアゴの丸め・峰のハイブリッド処理・アゴ上の丸め」の安全対策が全て標準仕様になっている包丁は、世界でもユニバーサルエッジだけです(当社調べ)。
切っ先とアゴの丸めについて
峰のハイブリッド処理について
アゴ上の丸め(刃を上にして撮っています)
左が処理済み、右が処理前(同じ包丁です)
各項目の解説は以上です。
最後にもう一度比較表を貼って終わりにします。
※従来の万能包丁(両刃の包丁)でも、「切っ先の引き切り」をすれば薄切りの刃離れがある程度良好な場合があります