包丁の刀身が薄いと、様々なメリットがあります。
今回は「薄さ」によって生まれるメリットの中でも、特に家庭用万能包丁の「適度なしなりのメリット」について書きます。
◎刀身が薄いことのメリット
薄い刀身には以下のようなメリットがあります。
・切れ味が良い
・砥ぎやすい
・軽い
・肉抜きしなくてよい
・資源の節約
・適度にしなる
・切れ味が良い
薄さは切れ味に直結します。
いくら刃先を砥いでも、刀身が厚いと切れ味に大きく影響することがあります。
それが、硬いものを切るときの「切り込み抵抗・抜けの良さ」に関する切れ味です。
たとえばニンジンを切るとき、峰の厚さ5㎜の包丁と1㎜の包丁の場合、前者はバリバリと音をたてて切れますが、後者は抵抗も音も少なく切ることができ、切れ味が良いと感じます。
ニンジンを切るイメージ
「同じ砥ぎ角の刃先」でも、厚みが違うと切れ味が違います。
・砥ぎやすい
刀身が薄いと砥ぐ面積が少ないので砥ぎやすいです。
イメージ図
・軽い
薄い刃物は軽く作ることができます。
特定の作業をのぞき、現代の家庭用万能包丁は軽いことが重要視されていて、「包丁になにを求めますか?」という質問に対して「軽さ」と答える人はいても「重さ」と答える人は少数です。
ただし「軽いほど良い」ということでもなさそうです。
刃渡り180㎜で100g以下の包丁も作れますが、重心位置や全体の重さのバランスも考慮すると、家庭用万能包丁の傾向としては、120g以上180g以下が一般的だと思います。
・肉抜きしなくてよい
刀身が薄いと「肉抜き」という作業が不要になります。
時間がかかる作業なので、肉抜きをしなくてよいことはメリットと言えます。
「肉抜き」の話はこちらを参考に
・資源の節約
刀身が薄くなれば、基本的に金属資源の節約になります。
金属を包丁に加工するためのエネルギーや、砥石の摩耗も少なくなります。
刀身の薄さとSDGsの達成率はほぼ比例するので、薄い刀身は資源の節約にとってもメリットです。
・刀身が適度にしなる
これが今回のメインの話です。
現代の靭性の高い金属で刀身を薄く作ると、適度にしなる包丁ができます。
この「しなり」が、「1:疲れにくさ」と「2:砥ぎやすさ」を生み出します。
1:疲れにくさ
疲れにくさというのは、主に手首の負担が減るという意味です。
短時間の作業では差が出にくいかもしれませんが、硬い食材をたくさん切る作業は、薄くて適度にしなる刀身の包丁を使うと楽だと思います。
※しならない包丁でも、切る食材が柔らかい場合は手首は疲れないと思います
以下はニンジンを切る作業を上から見た概念図です。
まな板の上のニンジンを半分に切ろうとする場面だと考えてみてください。
包丁がしならないと、硬い食材を切っているときは、微妙な回転運動が直接左手に伝わります。
しなる刀身は、包丁がしなることで回転運動を吸収してくれ、左手首の負担が減ります。
家庭用万能包丁は様々な食材を不規則に切ることが多く、刀身にはある程度のしなりがあった方が手首が疲れにくいです。
2:砥ぎやすさ
刃が薄いことによりしなりやすくなった刀身の、もうひとつのメリットが「砥ぎやすさ」です。
しなりを利用して一度に全部の刃線を砥石に当てる「シームレス砥ぎ」を使うことができます。
シームレス砥ぎは「簡単・短時間・刃線が乱れない・包丁が長持ち・砥ぎ方が決まっている」など、しなりがあればこその便利な砥ぎ方です。
詳しくは以下を参考に。
シームレス砥ぎについて
◎刀身が薄いことのデメリット
「重さを利用する切り方ができない」
「軽すぎて叩く切り方ができない」
「峰を上からおさえるときに手の負担が増える」
これらが思い浮かびますが、一般家庭では縁がない場合が多く、刀身が薄いことは大きなデメリットではないと思います。
以上、刀身が薄いことのメリットでした。
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