先日ホームセンター「コメリ」に行ったとき、刀身の形が気になって買った包丁があります。
名前はなんと「燕三条」。
私にとって思い出のある「燕三条」の土地名がそのまま包丁の名前になっていて興味が湧きました。
燕三条のプライドをかけたすごい包丁だという期待が膨らみました。
●燕三条
※すでに何度か使ったものを、撮影のため箱に入れました
●「燕三条」の仕様
刀身の材質 AUS10クラッド材
刃渡り 180㎜
ハンドル ポリプロピレンとナイロン(3本鋲のデザインの樹脂製)
刀身の形 牛刀
燕三条地区で生まれた「藤次郎F-875」や「PROCEED」とほとんど同じで、「同じ金型」の刀身かもしれません。
写真は、上からF-875、プロシード、燕三条です。
並べると刀身の形がとても似ていることがわかります。
買い物をしているとき、ふと魅力を感じた理由がわかりました。
価格 2980円(税込み)
総合的には、コスパの良い包丁だと思いました。
以下、私の感想などです。
●刃付けについて
新品で販売されている家庭用包丁はほとんど「両刃」ですが、砥ぎの割合が違うことが少なくありません。その理由は、薄切りのしやすさと刃離れを意識しているからです。
右利きの人が使う場合、右側が多く砥いである方が薄切りをしたときの安定感と刃離れの確率が増します。
また、刃先厚と砥ぎ角の組み合わせによっては抜群の刃離れ効果を発揮するため、各メーカーは、砥ぎの角度や割合を工夫しています。
「燕三条」の左右の砥ぎは、右6:左4の右利き寄りの両刃でした。
また、砥ぎ角は「15度」とありましたが、新品状態ではもう少し鋭角に感じました。
<写真>
右側
左側
右側と比較して切り刃の幅が狭い
牛刀には、左右5:5で刃付けされているものもありますが、「燕三条」のように6:4のもの、さらに7:3や8:2の刃付けの包丁もあります。
その理由をメーカーに尋ねると、「使いやすさを考えて右寄りに刃をつけています」という答えがほとんどです。
「両刃でも、右利き用と左利き用という考えがある」ということになりますが、多くの包丁メーカーは、砥ぎの割合が違う包丁でも、「左右兼用」として販売しています。
砥ぎの割合が右寄りの牛刀でも「左右兼用」として売られているので、逆に言えば、左利きの人が使いにくいということでもあります。
こだわりがある方は、刃付けの確認をしてからの購入をオススメします。
また、刃付けが6:4になるもうひとつの理由は、「砥ぎ師のクセ・利き手」にあります。
包丁の構造上、右利きの人は右側を多く砥いでしまいがちで、「うっかり6:4」という刃付けもあります。
もちろん熟練した砥ぎ師は5:5で砥ぐことができると思います。
意図せず右側が多く砥がれたものなら、右利きの人が砥いだ可能性が高いです。 「燕三条」は、低い番手の砥石(荒砥石)を使い、短時間で砥ぎ進め、次に高い番手の砥石(仕上げ砥石)で仕上げられています。 つまり、中間の砥ぎ作業を省略した砥ぎ方によって、コストを下げていると考えられます。
また、砥いだ部分のキズの方向と、少しホローグラインドになっている様子から、垂直に回る砥石で砥がれたとわかります。
以下の写真ではホローグラインドの様子まではわかりませんが、手に取ってよく見ると、ホローグラインドになっています。
<写真>
刃先部分の拡大
粗い砥石で砥いだ後、刃先だけキレイに仕上げられています
●切れ味
新品状態の切れ味はとても良いです。
野菜も鶏肉もスパスパ気持ち良く切れました。
上の写真でもわかるように、食材に触れる刃先部分が高い番手で仕上げられていることもあり、滑らかで切れ味が良く、紙を切っても静かに切れ、途中で引っかかることもありません。
コピー用紙を折って立て、垂直に切ることもできました。
ただし、この切れ味を維持することは一般家庭では不可能です。
また、この価格の包丁では、ここまでの切れ味は求められていないと思います。
3000円の包丁をホームセンターで買うのは「切れ味が悪くなったから買いかえる」という人も少なくありません。
いきなり切れ味が良い包丁を持つと、皮むきなど空間の作業ですぐにケガをするかもしれません。
また、この切れ味を維持するために必要なコストは、包丁価格の何倍もかかるので、自分で3000~6000番程度の砥石を使い、そこそこの切れ味を手軽に維持することになります。
私のサイトにある包丁「F-875」や「結」は、6000番の砥石とシームレス砥ぎだけでサイト内の動画にある切れ味を維持しています。
以下、鶏のもも肉を切る動画でわかるように、家庭用として充分な切れ味です。
※新品の燕三条は私の包丁より切れ味が良いです
●安全性
「アゴと切っ先を丸める理由」でも書いたように、安全面で私が気になるのは、切っ先とアゴ、そして峰の状態です。
「燕三条」の切っ先とアゴは鋭いままでした。
峰もほんの少し角が取れていましたが、もう少し丸い方が好みです。
●お買い得感
3000円で買える割り込み包丁は珍しいですから、「自分で砥石を使って砥ぐ」という前提ならお買い得です。
※ハンドル周りの仕上げは簡易で、樹脂製の鋲のレプリカが出っ張っていて親指と人差し指に当たるのが気になりましたが、気にならない人にはお勧めです。
●総評
お手軽に買える両刃の割り込み包丁として考えたとき、お買い得感は高いと思います。
コスパで言えば、「燕三条」という名前に恥じないものです。
この包丁に違う刃付けをしてみたいと思いましたが、切り刃が長いため、大きく砥ぎ直すと、ハンドルを握った指がまな板に当たってしまいそうでした。
私は、刃付けをする前の「燕三条」を砥いでみたいと思いました。
その後・・・
見れば見るほどコスパが良いので気になり、「コメリ」を調べてみました。
本社が新潟市南区にあることや、コメリ創業の地が「三条市」だと知りました。
また、「燕三条」という包丁は、2022年3月10日からコメリの「アテーナライフ」というブランドで発売されたものだとわかりました。 「三条市から始まったコメリ」が取り組んだブランドだとわかり、コスパの良さも、うなずけました。 以下、私が買った包丁のサイトです。 コメリサイトから引用