「燕三条」購入記

更新日:7月26日


今回は「燕三条」という包丁の購入記です。

私にとって「燕三条」は思い入れがある土地なので、そのまま包丁の名前になっているのが印象的で、どんな包丁か期待が膨らみました。


●「燕三条」※すでに何度か使ったものを、撮影のため箱に入れました

刀身の形と切り刃の幅が気になりました



「燕三条」のロゴが印象的


私が好きな「180㎜牛刀」です







●「燕三条」の仕様

刀身の材質 AUS10クラッド材

刃渡り 180㎜

ハンドル ポリプロピレンとナイロン(3本鋲のデザインの樹脂製・貝印わかたけと同じ作り)

刀身の形 牛刀

価格 2,980円(税込み)






●刀身の比較

燕三条地区で生まれた「藤次郎F-875」や「Yui PROCEED(プロシード)」とほとんど同じです。

想像ですが、「同じ金型」かもしれません。



写真は、上から「藤次郎F-875」、「Yui PROCEED(プロシード)」、「燕三条」です。



3本を並べるととても似ていることがわかります。

コメリで買い物をしているとき、ふと刀身の形を見ただけで魅力を感じた理由がわかりました。




●感想 総合的には、コスパの良い包丁だと思いました。

以下、私の感想などです。





刃付けについて


新品で販売されている家庭用包丁はほとんど「両刃」ですが、砥ぎの割合が違うことが少なくありません。

その理由は、主に薄切りのしやすさと刃離れを意識しているからです。

右利きの人が使う場合、右側が多く砥いである方が薄切りをしたときの安定感と刃離れの確率が増します。

また、刃先厚と砥ぎ角の組み合わせによっては抜群の刃離れ効果を発揮するため、各メーカー、砥ぎの角度や割合を工夫しています。

「燕三条」の左右の砥ぎは、右6:左4の右利き寄りの両刃でした。

また砥ぎ角は15度とありましたが、新品の角度はもう少し鋭角です。

15度で砥ぐことを勧めるのは、研ぎ直しの時、確実に刃先が研げるようにするためだと思います。

<写真>

右側





左側

右側と比較して切り刃の幅が狭い

牛刀には、左右5:5の完全両刃で刃付けされているものもありますが、「燕三条」のように6:4程度のもの、さらに7:3や8:2の刃付けの包丁もあります。

その理由をメーカーに尋ねると、「使いやすさを考えて右寄りに刃をつけています」という答えがほとんどです。

「両刃でも、右利き用と左利き用という考えがある」ということになりますが、多くの包丁メーカーは、砥ぎの割合が違う包丁でも、「左右兼用」として販売しています。

このあたりを質問してもメーカーから明確な返事はありません(オフレコでは回答をいただけることはあります)。

現実は、砥ぎの割合が右寄りの牛刀でも「左右兼用」として売られているので、逆に言えば、左利きの人が使いにくいということでもあります。

私の経験上「包丁業界では、左利きの人の利便性は軽視されている」というイメージです。



左利き用のパン切包丁を販売しているメーカーや、左利き専門の道具を販売している良心的なショップもあります。

また、刃付けが6:4になるもうひとつの理由は、「砥ぎ師のクセ・利き手」にあります。

包丁の構造上、右利きの人は右側を多く砥いでしまいがちで、「うっかり6:4」という刃付けもあります。

もちろん熟練した砥ぎ師は5:5で砥ぐことができると思います。

意図せず右側が多く砥がれたものなら、右利きの人が砥いだ可能性が高いです。 「燕三条」は、番手の低い砥石を使い、短時間で砥ぎ進め、次にとても番手の高い砥石で仕上げられています。 つまり、中間の砥ぎ作業を省略した砥ぎ方によって、コストを抑えていると考えられます。

また、砥いだ部分のキズの方向と、少しホローグラインドになっている様子から、垂直に回る砥石で砥がれたと想像できます(もし間違えていたら本当のことを教えてください('ω')ノ)。

以下の写真ではホローグラインドの様子まではわかりませんが、手に取ってよく見ると、ホローグラインドになっています。


<写真>

切り刃部分 よく見るとホローグラインドだとわかります

切れ味を意識してホローグラインドにしているのか、機材の都合なのか意図はわかりません。






刃先部分

粗い砥石で砥いだ後、刃先0.1㎜ほどが、キレイに仕上げられています




さらに拡大すると、刃先約0.1㎜の部分のキズがないことがわかります

食材に触れる部分がここまでキレイに仕上がっていれば、切れ味はとても良いです

切れ味

新品状態の切れ味はとても良いです。

野菜も鶏肉もスパスパ気持ち良く切れました。


上の写真でもわかるように、食材に触れる刃先部分が高い番手で仕上げられていることもあり、滑らかで切れ味が良く、紙を切っても静かに切れ、途中で引っかかることもありません。


コピー用紙を折って立て、垂直に切ることもできますが、この切れ味を維持することは一般的家庭では困難です。

また、この価格の包丁には、ここまでの切れ味は求められていないかもしれません。

3000円の包丁をホームセンターで買うのは「切れ味が悪くなったから買いかえる」という人も少なくないため、いきなり切れ味が良い包丁を持つと、皮むきなど空間の作業ですぐにケガをする可能性もあります(「燕三条」は軽いので空間作業にも使えます)。

また、この切れ味にこだわる場合、メーカーに何度も研ぎ直しをお願いすることになるので、コストが包丁の価格の何倍もかかります。

自分で3000~6000番程度の砥石を使い、そこそこの切れ味を手軽に維持するのがこの包丁の本来の使い方だと思います。 つまり、この素晴らしい切れ味を楽しめるのは、使い始めて数日間だけになります。

私のサイトにある包丁「F-875」や「結」は、6000番の砥石とシームレス砥ぎだけで、下記動画のような切れ味を維持しています。

鶏のもも肉を切る動画でわかるように、家庭用として必要充分な切れ味です。


安全性

アゴと切っ先を丸める理由」でも書いたように、安全面で私が気になるのは、切っ先とアゴ、そして峰の状態です。

「燕三条」の切っ先とアゴは鋭いままでした。

峰もほんの少し角が取れていましたが、もう少し丸い方が好みです。

峰の処理が甘いと、峰に人差し指を乗せて切るときに「人差し指の先」をケガすることがありますが、他にも、「皮むき・砥石での砥ぎ直し」のときに人差し指の「付け根の左側」が痛くなことがあります


お買い得感

3000円という低価格で買える割り込み包丁は、「自分で砥石を使って砥ぐ」という前提ならお勧めです。

ハンドル周りの仕上げについては、コストダウンの影響で意外とチープです。樹脂製の鋲のレプリカが出っ張っていて親指と人差し指に当たるのが気になりましたが、この部分が気にならない人にはお買い得だと思います。

総評

お手軽に買える両刃の割り込み包丁として考えたとき、お買い得感は高いと思います。

費用対効果で考えれば、「燕三条」という名前に恥じない包丁だと思いました。

私はこの包丁に違う刃付けをしてみたいと思いましたが、切り刃が長いため、大きく砥ぎ直すと、ハンドルを握ったときに指がまな板に当たってしまいそうでした。

刃付けをする前の「燕三条」に、私好みの刃付けをしたらどうなるか、想像して楽しみました。最近の私の欲しい物リストに「刃付け前の燕三条」を入れておこう(笑)

その後・・・

見れば見るほどコスパが良いので気になり、その後「コメリ」を調べてみました。

本社が新潟市南区にあることや、コメリ創業の地が「三条市」だと知りました。

また、「燕三条」という包丁は、2022年3月10日からコメリの「アテーナライフ」というブランドで発売されたものだとわかりました。 「三条市から始まったコメリ」が取り組んだブランドだとわかり、コスパの良さも、うなずけました。 以下、私が買った包丁のサイトです。 コメリサイトから引用

https://www.komeri.com/disp/CKmSfGoodsPageMain_001.jsp?GOODS_NO=2074074


余談

「燕三条」という牛刀(両刃)が素晴らしいものだとわかりましたが、それでも私は家庭用の一本として「完全片刃(実用新案第3227805号)」の包丁をお勧めします。

その理由は、両刃にはない「別世界」を体験できるからです。

完全片刃なので、6:4や7:3などの「砥ぐ割合」を気にする必要がないことと、砥ぐ手間が両刃の半分になり、包丁の寿命は2倍になります。

また、砥ぎ角も狭いため、少ない手間で実用的な切れ味を保てます。

そして完全片刃は、7:3や8:2の「片刃風両刃」と比較して、はるかに安定した「薄切り・刃離れ」の性能を発揮できます。

9:1の片刃風刃付けなら完全片刃に近い性能かと言えばそうではなく(※)、砥ぎやすさや楽しさも含め、完全片刃は、両刃では味わえない「別世界」を体験できます。

※ぱっと見で片刃に見える9:1の刃付けでも、刃先を拡大すれば結局食材に当たる瞬間は両刃だからです




下の写真は私が提案する刃付けの「プロシード」で切ったキュウリの輪切りです。従来型の包丁で切ると、キュウリがくっついたり転がったりします。


「PROCEED(新型万能包丁)」と「燕三条(従来型万能包丁)」との切れ方の比較動画

燕三条は6:4、PROCEEDは10:0です。


参考までに、各包丁の性能のグラフはこちらです。



以上、「燕三条」購入記でした。