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「スーパーストーンバリア」は切れ味はいいの?

更新日:2023年3月7日


「スーパーストーンバリアという包丁の切れ味はいいんですか?」という質問をいただきました。

私はスーパーストーンバリアの牛刀を持っているので、今回は、裏話も含め「スーパーストーンバリア」について書きます。


スーパーストーンバリアとは、「実演販売・レジェンド松下」で有名な、

「コパコーポレーション」が販売している包丁です。

切れ味が良いだけでなく、特殊コーティングの効果で「食材がくっつきにくい」という特徴があります。


スーパーストーンバリア牛刀

数回砥いだので切刃の幅が広がっていますが、新品時の切刃の幅はもっと狭かったです



結論から書くと、スーパーストーンバリアの切れ味は良いです。

しかしその切れ味がすぐに落ちてしまい、

一般家庭では新品時の切れ味を維持できない包丁です。



●なぜ切れ味が良いのか

切れ味の良さを決める要因はたくさんあるのですが、単純に書くと、「刀身の厚さ・刃の厚さ」と「研ぎ角」の組み合わせです。 刃の厚さについてはいろいろ表現できてしまうので今回は触れませんが、ここでは「刀身の厚さ」と「刃の厚さ」を同じものとして書きます。

図1は、砥ぎ角が同じで刃の厚さが違います。

←図1 研ぎ角が同じ

左の方が切れ味が良く感じます。 特に硬い野菜を切るときは、刃の厚さの影響が切り心地に現れます。 刃が薄いほど、刃が厚い包丁と比べて少ない力で食材を切れるため、切れ味が良いと感じます。






図2は、刃の厚さが同じで砥ぎ角が違います。


←図2 刃の厚さが同じ これも左の方が切れ味が良いと感じます。 スーパーストーンバリアは、主に「刃の薄さ」で、初期の切り込み抵抗を下げ、切れ味の良さを出しています。 砥ぎ角は、私が観察したところ、極端に鋭角ではありません。 ストーンバリアの刃先厚は、公式には0.18㎜です。 片側15度で砥いだ場合、切り刃の幅は約0.4㎜になりますが、新品の切刃の幅は、それ以下のように見えたので、15度より鈍角だと思います(切刃の幅は左右で若干のバラツキもありました)。 もう一つの要因として、「ハマグリ形状」もあるかもしれません。 スーパーストーンバリアは、刃先の砥ぎ方を「ハマグリ形状」にしているそうです。 ※詳しくは検索してみてください


図3 左側がハマグリ形状です

←図3 ハマグリ形状の刃付けは、吉田金属工業のGlOBALシリーズに代表される刃付けです。 「しのぎ線」の角が丸く取れているため、同じ刃先厚の場合、理論的には切り込み抵抗が少なくなり、切れ味が良くなる傾向です。 刃先厚が0.18㎜の薄い刃先に対してハマグリ効果が体感できるかわかりませんが、切れ味の良さにとってプラスになると思います。 ●切れ味がすぐに落ちる理由

刃(刃先部分)が薄いことが理由の一つです。

刃が薄いということは、刃欠けしやすく刃が減りやすいということでもあります。

そのため、切れ味が落ちやすいと言えます。

「すぐに切れなくなっちゃう」という話も、ユーザーから直接聞いたことがあります。

※砥ぎ進めていくと刃先厚が厚くなっていくので、切れ味は落ちますが徐々に耐久性が出てくると思います。




●減りやすい

切れ味がすぐに落ちるということは、減りやすいということでもあります。

薄刃で、両刃包丁ということもあり、ユニバーサルエッジと比較すると早く減る感じがします。



●新品時の切れ味を維持できない

スーパーストーンバリアを買う人は、付属または別売りの「専用簡易シャープナー」を使うことが多いと思いますが、簡易シャープナーでは、新品時の砥ぎの鋭さを再現できません。

また、専用簡易シャープナーは、刃先のハマグリ形状を壊さないために、刃先だけが砥げる角度(鈍角)に設定されています。

鈍角に砥ぐと切れ味は落ちる傾向になるので、やはり新品時の切れ味を維持するのは困難です。

「スーパーストーンバリア専用簡易シャープナー」で検索すると鈍角な設定などの詳細がわかります。


そもそも「職人技によってハマグリ形状に砥がれている」という宣伝なので、一般市民では新品時の切れ味を維持できないと想像できます。


参考:

砥石を使って包丁を砥ぐ人は、包丁に詳しい人が多いですから、スーパーストーンバリアを買うことはないと思います。


私はシームレス砥ぎを使うので問題ないですが、三段砥ぎをする場合、写真のように、ハンドル形状の影響でハンドルが砥石にぶつかり、削れてしまうこともありそうです。


右利きの人が包丁の左側面を砥ぐ方法は様々ですが、ハンドルを右手で握ったままの方法で砥ごうとすると、先にハンドルが当たってしまうこともあるため、他の方法で砥ぐ必要があります。



●コスパについて

私はスーパーストーンバリアの牛刀を製造元の社長からいただいたのですが、もし購入するなら1万円前後です。

ハンドルの作りや重さ、耐久性などを考えると、コスパが悪い部類の包丁です。

実際、製造原価は千円前後と聞いたことがあります。



●高価な理由

これはもちろん宣伝費です。

実演販売など、かなり高額な宣伝費をかけていると聞きました。




●スーパーストーンバリアの良いところ

どの包丁についても「事実」をお伝えしたいので、スーパーストーンバリアのメリットも書きます。

スーパーストーンバリアの実演動画にもあるように、チーズやバターを切ることについては、オススメです。

毎朝バターを切る、ワインとチーズで晩酌する・・・こんな方にはオススメです。

裏話:ユーザー本位ではない演出にはご注意を

スーパーストーンバリア関係者から話を聞いたとき、スーパーストーンバリアの生い立ちは、「ビジネス色が強く、ユーザー本位ではない」と感じた記憶があります。

動画撮影では、その場だけ切れ味を増す刃付けをして撮影することもあるそうです。

スーパーストーンバリアを否定するつもりはありませんが、スーパーストーンバリアの実演動画は、「演出が強すぎる」と感じました。

以前、販売士「レジェンド松下」さんが出演していた実演動画を見たことがあるのですが、他の包丁との切れ味の比較のとき、スーパーストーンバリアで切る瞬間に野菜の持ち方を変え、しっかり押さえてから切っているシーンがありました。

※しっかり押さえた方が切れ味が良く見えるように切ることができます

この記事を書きながらそのシーンをもう一度確認しようと思って検索したところ、閲覧できなくなっていました。

現在は、コパコーポレーションの「ヨリー藤岡」さんという販売士が動画に出ています。


スーパーストーンバリアに限らず、包丁の実演動画を見ると、ユーザー本位ではない演出が多くみられます。

和包丁と洋包丁の切れ味の違い(断面のツヤの違い)を強調するために、和包丁では低圧スライド切り、洋包丁では垂直切りをしてお客様に見せていた動画もあるので気を付けてください。



私が実演をするときは、もちろん事実をお伝えしています(^^

どの包丁にも長所と短所があり、お客様がそこを納得して買うことが大切だと思うからです。

包丁を砥いだ後の切れ味の確認で紙を切るときも、切る角度や刃渡りの使い方で仕上がりの度合いを演出できますが、私はできるだけ砥ぐ前と同じように切っています(意図的な演出が下手ということも理由です(^^)。

●まとめ

スーパーストーンバリアの切れ味は良いです。

ただ、その切れ味は長持ちしないと思います。

また、他の包丁の切れ味も良いので、ストーンバリアだけが「切れ味抜群」ではありません。

切れ味が良く見えるのは、「演出」や、耐久性を無視したその場限りの刃付けをしている場合もあるのでご注意ください。

包丁は、切れ味以外にも、砥ぎやすさ、安全性、耐久性、汎用性、衛生性、使う楽しさなど、大切なことがたくさんあるので、そこも考えて購入する必要があると思います。



以上「スーパーストーンバリアは切れ味がいいの?」の答えでした。



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