先日「包丁を使わないレシピ」について話題になったので、今回は、包丁そのものの未来について書いてみます。
以前「今後家庭で求められる包丁」という記事を投稿しましたが、さらに進んだ話です。
料理の役に立つ内容でありませんが、気分転換に読んでいただけたらと思います。
<包丁の未来>
包丁の未来はどうなっていくのか・・・
それは、「包丁を使わないレシピ」にヒントがありそうです。
「包丁を使わないレシピ」と検索すると、たくさん紹介されていることからわかるように、ひとつのジャンルとして成り立っている印象です。
これは「包丁を使いたくない」と思っている人が多いということです。
そしてその傾向は、今後さらに強くなっていくと思います。
人間は、ケガや病気を防ぐための歴史を歩んでいるので、刃物でのケガも避けようとするはずです。
そう考えると、家庭用包丁は今後ほとんど使われなくなり、業務用の大きな包丁も徐々に使われなくなると思います。
料理で言えば、大昔の「生食」から、火で加熱することを人間は学び、感染症を遠ざけました。
しかし今度は火による事故が後を絶たず、「かまど」は「ガスコンロ」に進化し、さらに火を使わない「IH調理器」や「電子レンジ」で調理をするようになりました。
刃物に対する人間のスタンスも同じです。
魚や獣を石で叩いていた時代は、ヒレや骨、消化液、毒、細菌などによるケガや病気が後を絶ちませんでした。
刃物を使うことでケガや病気が減りましたが、しかしこんどは刃物によってケガをするようになりました。
そのため現在は、魚や獣はプロの手によって切り分けられた状態で売られ、野菜も、一般家庭で切りにくいものは、切られた状態で売られています。
最終的に、包丁での作業の多くはプロが担当し、一般家庭で包丁を使わない方向に進むことは容易に想像できます。
<包丁を使わないレシピの登場>
新型コロナウイルスの影響で自宅で料理をする人が増え、包丁の需要が増えたと聞いたことがありますが、大きな流れとしては、ひとり暮らしの若者を中心として、これからは包丁を使わない人と、包丁を使わないレシピが増えていくと思います。
「包丁を使わないレシピ」は、メジャーな企業も力を入れていますが、YouTubeやTikTokなどのショート動画でも人気のカテゴリーだと思います。
※「包丁を使わない・包丁いらず・手抜き料理」などで検索すると見つかります。
現代の若者が包丁を使わなくなっていく理由は、まさに人間の歴史そのものです。
つまり、「ケガや病気を防ぎたい・楽をしたい(効率を上げたい)」ということです。
お客様の話を聞くと、「刃物が怖い・ケガをしたくない・外食で間に合うから・料理が面倒」といった人も実際に少なくありません。
また、そんな状況に加え、「包丁を使わないレシピ」がSNS上でも紹介されるようになってきたことも理由だと思います。
私も、包丁を使わないレシピには共感します。
包丁を使わなければケガを防ぐことができますし、包丁を使わないレシピの主役「電子レンジ」は、ガスコンロよりも火災やケガを防ぐ効果があるからです。
電子レンジが登場する前、そして万能包丁が登場する前、家庭には包丁が何本もありました。
そして、当時家庭に包丁があった理由は、まさに「ケガや感染症を防ぐため、調理をしやすくするため」でした。
冒頭にも書いたように、石や棒で生き物を叩くだけの時代は、骨やヒレなどでケガをし、消化液に触れれば指先が溶け、触れた毒が目や鼻から入って中毒になり、主に消化管の処理では大腸菌などに感染します。
そのようなトラブルを防ぎ、効率よく食料を手に入れるために包丁が使われましたが、現代人は、包丁という道具を使う以上に安全で効率よく食べることができる環境を手に入れたと言えます。
「ケガを防ぐため」という理由で包丁があるなら、より安全な道具が手に入るならば、包丁を使う必要がないということです。
業務用の大型の包丁についても、家庭用包丁の後を追うように少なくなっていくと思います。
現在、「動物愛護・環境保護・衛生面」の視点から、人工の肉(クリーンミート)を量産する研究が進んでいて、すでに小さな肉は販売されています。
クリーンミートは、動物の細胞を培養して作られるため、動物の命を絶つことがないだけでなく、解体の手間や感染症の心配、飼育段階で排出される二酸化炭素問題などを解決した新しいたんぱく質です。
味も形も自由にデザインできるので、動物を一頭丸ごとさばく必要がなく、いずれ大型の包丁も、徐々になくなっていくと予想できます。
<包丁を使わない時代>
包丁で手を切ったことがある人は多いと思いますが、できれば手を切りたくないですよね。
それには、「使わない」という方法が確実です。
そして時代はその方向に進んでいます。
昔は野菜をとるにもたんぱく質をとるにも包丁が必要でしたが、現在は野菜ジュースもプロテインバーもあります。
インターネットで包丁を使わないレシピが普及するほど、包丁でのケガが減るはずです。
さらに人間の歴史の時間軸を大きく未来へ移すと、人間はいつか食べなくなる可能性もあります。
今の医学では、「食べる」とは「老化」を意味しているからです。
書き始めたらキリがないのですが、歴史を見れば、やがて人間が包丁を使わなくなるのは自然なことです。
包丁を使わない時代になったとき、人間はより高度な安全と娯楽を見つけたと言える気がします。
<私の立場は>
以前お客様と上記のような話をしたとき、「あなたは包丁を売っているのに包丁が売れなくなってもいいんですか?」と質問されたことがあります。
私は「はい」と答えました。
包丁が売れなくなったら、私は他の仕事で社会貢献したいと思っています。
文明の進化に伴って無用になった道具は数え切れません。
包丁を使う必要がなくなるなら、それがなにより大切なことだと思います。
ただ、この先数十年は、家庭で包丁を使う時代が続くはずですから、どうせ食材を切るなら、最低限のコストで最高に効率よく、安全に楽しく切りたいと私は思っています。
そのための活動のひとつが、以下のような動画制作です。
せっかく切るなら、「楽しく安全に、美しく」。
そんな様子をお伝えしていければと思います。
<最後に>
「包丁を使わないレシピ」が流行るのは、人間が明るい歴史を刻んでいる証拠だと思います。
「ユニバーサルエッジ」も、いつか無用になるときがくると思いますが、現在の人間の生活様式ではまだ必要とされています。
また、アンケート結果(※)からも、ユニバーサルエッジは1000万世帯の役に立つ力を秘めています。
市販の包丁を150本ほど研究した経験上、ユニバーサルエッジ以上の総合性能を発揮する家庭用万能包丁はありません。
「一般家庭で最後まで使われていたのはユニバーサルエッジだった」と歴史に残ることを信じて、日々活動を続けていきたいと思っています。
※私が行ったアンケート結果についてはこちら
以上、包丁の未来についての話でした。