top of page

刃先のバリを取り除く理由

更新日:2024年12月26日


シームレス砥ぎの映像を見た方から「動画ではアゴのバリ取りができていないように見えます。この方法でバリはキレイに取れるんですか?」と質問をいただきました。

ユニバーサルエッジのシームレス砥ぎでは、利き手側を砥いだ後、裏側のバリを軽く取り除くだけで簡単にメンテナンスができます。



シームレス砥ぎの動画

※裏はベタ砥ぎではなく、峰を少し持ち上げて刃先だけ砥石に当ててバリを取ります。

動画では、アゴの刃先が砥石に当たっているか心もとないように見えますが、以下に書くように、バリを取り除く理由がわかると安心していただけると思います。




◎バリを取り除く理由


バリを取り除く理由は、大きな視点から書くと「人間が不快な思いをしないため」です。

なので、人間にわからない小さなバリ、言い換えると「理論上出るような小さなバリ」は、人間が不快でなければ残っていても問題ないと言えます。


大きなバリがついたままの包丁は、「切れ味が悪い」「調理中にバリが食材に入ってしまう(噛んだり飲み込んだりしてしまう)」など、人間にとって不快です。


昔の包丁(和包丁)は刃欠けしやすく大胆に砥ぐことが多かったため、バリが食材に入ってしまうことに対して敏感だったはずです。

たとえば「髪の毛ほどの太さ」と言われるバリは、金属の硬さや砥ぎ方にもよりますが、荒い砥石で力を入れて砥いだ場合に出ることがあります。


仮に下の写真のようなはっきり確認できるバリが食材を通して口に入ってしまったら、不快、または危険だと想像できます。


400番などの荒めの番手で砥いでできたバリ(刃先から離れているものがバリ)




髪の毛ほどの太さのバリは、口に入ると不快・危険



これも髪の毛ほどの太さ

口に入ると不快・危険


※詳しくはバリについてを参考に(髪の毛と一緒に撮った写真もあります)



そして、上の写真のようなバリが刃先についたままの包丁も、もちろん切れ味に違和感が出ます。

そのような不快を防ぐため、荒い番手で砥いだ時に出るバリを取り除くことは大切だと思います。


上の写真のバリは、どれも400~1000番程度の砥石で出るものなのですが、私が推奨している「シームレス砥ぎ」の動画で使っている砥石は6000番です。

6000番で出るバリは「微細なバリ」なので、取り除く作業が完全でなくても食材を切っているうちに取れてしまうことがほとんどです。


微細なバリは、たとえ食材と一緒に口に入っても不快に感じることはなく身体に有害でもありません。

たとえば6000番より荒い番手がほとんどの「簡易シャープナー」で砥いだ洋包丁は、厳密にバリを取り除くことはしません。

簡易シャープナーで砥いだ包丁から出るバリが安全なものなら、6000番で砥いだ包丁についた微細なバリはさらに安全だと言えます(後述:◎バリの成分の安全性について)。



バリが取れているか確認するには、「指先で触れる」「目視する」「軍手をつけて刃先を触る(バリがあるほど引っ掛かり感がある)」などの他、代表的な方法として「紙を切る」という作業があります。

バリが残っている部分で紙を切ると、バリがない部分と比較して違和感があることは確かなので、確認をするためなら紙を切ることは有効です。

しかし家庭用万能包丁は食材を切るための道具なので、最終的に大切なのは食材を切った時にどうかです。





◎まとめ


家庭用万能包丁のメリットは、低コストで気軽に使えることなので、6000番で砥いだ包丁のバリを厳密に取り除くコストをかける必要はなく、冒頭に紹介した動画のような方法でよいと思います。


そして冒頭で紹介した動画のように砥いでも「レベル8」の切れ味は維持できます。

※レベル8の切れ味の動画はこちら





◎バリの成分の安全性について


バリの成分である鉄やモリブデンやバナジウムなどは、大量でなければ人間に必要な金属です。

※金属は飲み込んでもそのまま排泄されることがほとんどかもしれません。


「鉄の調理器具を使って鉄分を補う」という考え方もありますし、鉄のタブレットやバナジウム入りの水、モリブデン入りのミネラル系タブレットなども販売されています。


私の経験も含め、以下のように計算してみました。

「減りやすい包丁」という前提で計算しています。


・包丁1丁の刀身の重さ→100g

・モリブデンとバナジウムの含有量→いずれも2%

・1年の砥ぎ作業で出るバリの重さ→1g

・週一ペースで(年間約50回)砥いだとして、1回あたりに出るバリは20㎎

・作業1回あたりのバリの中に含まれるモリブデンとバナジウムの量は、それぞれ20㎎の2%で0.4㎎

・砥ぐのは週一なので、0.4㎎を7で割ると一日あたり約0.06㎎

・モリブデンもバナジウムも、成人1日あたりの上限摂取量は少なく見積もっても0.5㎎。

・意図的に全てのバリを摂取しても1日あたりの上限摂取量の10分の1程度

・砥ぐ際のバリは身体に悪影響はないと思われる

・不快でなければバリを厳密に取り除く必要はない

※鉄についても、一日の必要量の10分の1、摂取上限量の50分の1程度なので全く問題ない量です


この計算を覚える必要はなく(私はすぐに忘れます(笑))、完璧にバリを取らなくても安全だということがわかっていれば問題ないと思います。

もちろん、「メンタル的に気分が悪い」ということでしたら、包丁を気持ち良く使うにためにも厳密にバリを取り除くことも大切だと思います。



以上です。

bottom of page