シームレス砥ぎについて② ~刀身の強度バランスと刃線の関係~

更新日:2月14日


「シームレス砥ぎ」は、包丁の刀身をしならせることにより、

刃線全体を一度に砥ぐ新しい砥ぎ方です(詳しくはこちら)。

きれいな刃線を簡単に維持することができます。



シームレス砥ぎがしやすい包丁の特徴が、刀身の「しなり」です。

今回は、刀身全体をしならせるための強度バランスについて書きます。

「結」は切っ先側の強度を下げることで、しならせたときに刃元側は直線的なまま、切っ先側が曲線に砥げるように設計しています。




以下の写真はどちらも「シームレス砥ぎ」をしています。


●結 写真上

●F-503 写真下









「F-503」のように、刃元側と切っ先側の強度差が少ない刀身は、

刀身の真ん中から均等に曲がるので、シームレス砥ぎで包丁をしならせて砥石に当てると、

切っ先側と同時に刃元側も丸くなりがちです。

そのため、「刃元側と切っ先側の強度差が少ない刀身の包丁」の刃線をキープするためには「三段砥ぎ」が必要になります。「三段砥ぎ」は「シームレス砥ぎ」より技術が必要で、きれいな刃線をキープするのが難しく、私はほとんど使っていません。




「結」が以下のような刃線をキープできるのは、

「刀身の強度バランス」×「シームレス砥ぎ」によるものです。





「結」の他にも「シェフナイフ・牛刀」と呼ばれる包丁は、その形状から「結果的に刃線がキレイに出る強度」の場合がほとんどです。


その例として、シームレス砥ぎをした「F-875(シェフナイフ)※写真上」と「F-503(三徳包丁)※写真下」との刃線を比較してみました。

同じ力の配分で砥いでも、シェフナイフと三徳包丁の刀身の強度バランスが違うため、刃線に違いが出ます。シームレス砥ぎとシェフナイフ(刃渡り180㎜)の相性はとても良いと思います。







捕捉 ~刃元側の刃線が丸くなることのデメリットは?~ 


丸い刃線のデメリットは「スライド切り」が使えなくなることです。「スライド切り」は和包丁(薄刃包丁)の動きです。動きがコンパクトで作業スピードが速く、断面がキレイに仕上がります。

キッチンから聞こえる「トントントントン」という音がスライド切りの音です。



【刃元側の刃線が丸い包丁】

刃線が丸い包丁を使うと食材の切り離れが悪くなります。特に千切りやネギの小口切りなどで食材が繋がってしまうことがありますが、このような刃線が影響しています。


切離れを確保するために「スライドスイング切り」の動きになります。

以下の動画が「スライドスイング切り」です。




スライドスイング切り

動画の作業ではスライド切りに比べて作業効率が悪くなります。

※詳しくは切り方のページをご覧ください











【刃元側の刃線がまっすぐな包丁】

刃線がまっすぐな包丁を使うと、スライド切りでの切り離れが良くなり、作業効率が上がります。




以下の動画が「スライド切り」です。







スライド切り

洋包丁(家庭用シェフナイフ)でも、刃元側が直線的な刃線になっていれば、薄刃包丁のような刻みの作業ができます。


※詳しくは切り方のページをご覧ください





「刃線が丸くなること」のデメリットは、スライド切りができなくなることです。





「簡単にキレイな刃線をキープしたい」→「シームレス砥ぎが適している」→「金属の素材や包丁の形状によっては刃線全体が丸くなってしまう(理想の刃線をキープできない)」→「刃渡りが長め・シェフナイフの形状・切っ先側の峰厚が薄く、刃幅が細い包丁が適している」→「刃渡りは190㎜前後・切っ先側が薄いシェフナイフがいい」→「結」

「結」には、このような考え方があります。



ほとんどの家庭用包丁は刀身がしなるので「シームレス砥ぎ」ができますが、シームレス砥ぎ後の刃線の仕上がりにこだわって設計された包丁は少ないと思います。



いろんな包丁、いろんな砥ぎ方がある中で、

「結」のような包丁や「シームレス砥ぎ」の存在を知っていただけたら嬉しいです。