先日、「マグネット式包丁ホルダー」の話題になり、いろいろなことが気になったので調べてみました。
「マグネット式包丁ホルダー」は、壁面に包丁を保管するツールのひとつです。
壁を有効活用でき、「オシャレ感」を演出できるグッズとしても販売されています。
名称は統一されていないようで、様々な呼び方があります。
このホルダーは、磁力によって包丁を固定するものなので、「衝撃」と「磁化」に注意が必要です。
「衝撃」というのは、包丁がホルダーに接着する瞬間の「パチン」という衝撃です。
「磁化」というのは、包丁が磁石のようになってしまう現象です。
以下の写真は、実験に使った包丁とマグネットです。
ホルダーへの「取り付け・取り外し」の工夫をしないと、衝撃で問題が起こりそうだということ、そして磁化することで「砂鉄」が付着することが気がかりです。
参考:
私が購入した包丁ホルダーは、「weone 包丁スタンド」 という表面が金属性のものです。
磁力は想像より弱く、様々なデメリットを防ぐため、意図的に弱めに設定している気がします。
いろいろな方向で付け外しをしてみたところ、包丁が擦れると本体に傷が付くことがわかりました。
包丁に傷をつけないように、包丁よりも柔らかい金属でできているようです。
実験に使った包丁ホルダー
包丁がこすれて傷がつきました
実験に使った包丁と磁石
実験の結果と、私がインターネットで調べた結果、さらに、私の普段の経験などから、以下のような人にはマグネットホルダーはオススメしません。
・良く砥いだ高価な割り込み包丁を使っている人
割り込み包丁は、芯材にとても硬い金属を使っているため、衝撃を和らげる保護膜のようなものがないホルダーの場合、無造作に包丁を近づけたとき、包丁がホルダーに接着する瞬間の「パチン」という衝撃で欠けてしまうことがあります。
高価な包丁ほど芯材には硬い金属を使っている場合が多いことと、良く砥いだ包丁は刃先が繊細なことなどから、注意が必要です。
写真は厚さ1㎜のマグネットですが、お互いが近づき、「パチン」という音がした瞬間に割れてしまいました(10枚購入してすでに4枚割れました)。
※付け外しの工夫として、たとえば以下のような手順が必要です 取り付け時:ホルダーの角に峰を当てる(点で接する)→包丁を寝かす(線で接する)→ハンドルを壁に近づける(面で接する)
取り外し時:ハンドルを持ち上げる(面から線へ)→刃先をおこす(線から点へ)→切っ先の峰側を壁に当て、そこを支点にしてハンドルを持ち上げる(峰側を支点にすれば壁に傷が付きにくい)
包丁は、口金付近をホルダーに接着させると付け外しのコントロールがしやすいです。
・自家製野菜を切る人
「家庭菜園・田舎暮らし」の生活では、土が付いた野菜を切る機会がたくさんあります。
たとえば露地栽培のほうれん草の根元を切る作業では、根本の「砂が溜まった部分」を切るので、砂や土が包丁に触れます。
そのとき、磁化した包丁に土の中の砂鉄がくっつき、刀身の傷や刃欠けの原因になる可能性がゼロではありません。
写真は、磁化した包丁に畑に使っている土を振りかけたものです(現象がわかりやすいように磁石は裏側につけたままにしました)。
磁化している部分に砂鉄が付着しています。
反対側(畑の土を水で流した後)
磁石に砂鉄が付着している様子がわかります。
軽く水で流す程度では落ちなかった砂鉄もあり、そのまま拭き取ってしまうと刀身に傷が入るかもしれません。
「強い磁力のホルダー」と「磁化しやすい金属の包丁」の組み合わせの場合、ホルダーから外してすぐに野菜の根本などを切ったときは、刀身に砂鉄が付着する可能性が高くなります。
※昔の包丁の刃欠けが多かった理由は、金属の靭性が低かっただけでなく、土が着いたままの野菜を切っていたことも一因だと思います
また、鏡面仕上げやダマスカス模様など包丁の見た目も大切にしている人の場合、磁気に引き寄せられ付着した小さな砂鉄を拭き取ってしまうと、細かい傷が入ります。
・複数の包丁を同時に使う人
磁化した包丁同士も影響します。
確率は低いと思いますが、磁化した包丁をまな板の上に置くと、包丁同士で影響してしまうことがあるため、複数の包丁をまな板の上に乗せることがある人は注意が必要です。
重心が口金付近にある包丁は、口金を中心にまな板の上で回転してしまうものもあり、磁石同士の反応で回転した包丁が落下したり、ひとつの包丁を手に取ったつもりが、他の包丁も影響されて動いてしまい危険です。
私の実験では、磁気を帯びた包丁で、もう一本の包丁を動かすことができました。
特にオールステンレスの包丁は、ハンドルも磁化するものがあり、注意が必要です。
・衛生を大切にする人
壁際で、かつ刀身の露出部分が多いため、ホコリや炒め物で浮遊した油が付着したり、虫などが包丁に触れたりする可能性が高くなります。
●その他、考えられる注意点です
・長さの違う包丁を持っている場合
ペティナイフの隣に長い包丁を接着させると、ペティナイフのハンドルのすぐ横が長い包丁の刃になってしまうことがありえます。その場合、ペティナイフの外し方を間違えると、手の甲を切ってしまう可能性があると感じました。 ・包丁の間隔が充分にとれない場合
包丁同士の間隔が狭いと、包丁の取り付けと取り外しの作業中の急な動きで隣の包丁の刃に触れてしまい、ケガをする可能性があります。
●包丁の磁化について
マグネットホルダーは磁石の力で包丁を固定するものなので、刀身そのものも影響を受けて磁気を帯びます。
強い力で接着しているため、取り外して間もない包丁ほど強い磁気を帯びています。
私の実験では、外してから数時間後の磁力はだいぶ弱くなっていましたが、通常は「使うから外す」、つまり、外してすぐに包丁を使う場合が多く、磁気の影響は小さくないと感じました。
また、実験では、強い磁石だと強い磁気を帯びた刀身になることもわかりました。
参考:オールステンレスの包丁のハンドルについて
予備知識として私が所有するオールステンレスの包丁のハンドルの磁化について調べました。
左から
・下村工業ネオヴェルダン
・ダイソーブランドオールステンレス
・藤次郎ORIGAMI
・CROMA TURBO
・関兼次PRO-S
・藤次郎PRO
・GLOBAL(3本)
私の感覚で書くと、〇はハンドルの金属そのものに磁石がつきやすいもの、△はハンドルの素材にはつかないが、中子(刀身と同じ素材)の影響を受けて磁石がついているもの、×は磁石がつかない素材のハンドルです。
●ホルダー表面の素材
ホルダーには、表面が金属製、樹脂製、木製のものがあります。
念のため、金属製のホルダーで簡単な実験もしてみました。
写真手前から「製品が入っていた袋」「マスキングテープ」「絶縁テープ」「荷造り用クリアテープ」です。
どれもファッション性はありませんが、衝撃を和らげる効果は感じることができました。
接着力もほとんど変わらないので、金属製のホルダーを使っている人はテープ類を貼る方がデメリットが少なく安全だと感じました。
●マグネットホルダーを上手に使うには
マグネットホルダーを上手に使うには、取り付けと取り外しの手順を間違えないことが大切です。
また、薄いゴム製のシートやビニールテープなどで磁石の面を保護すれば、包丁の刃が傷みません。
※この場合、包丁の刃欠けは避けられても磁化は避けられないので、マグネットホルダーのトラブルはゼロにはなりません
私はマグネットホルダーは使いませんが、特徴を知ったうえで使えば省スペースなどのメリットはありそうです。
以上、マグネット式の包丁ホルダーについてでした。