top of page

ハガネとステンレスの違い ―青紙スーパーとモリブデンバナジウム―

更新日:2023年5月22日



ハガネの切れ味について話す機会があったので、今回はハガネとステンレスの違いについて書きます。


せっかくなので、包丁用のハガネとして最高峰と言われる「青紙スーパー」と、一般的なステンレスの「モリブデンバナジウム」を比較してみました。




今回登場する青紙スーパーの包丁(三徳)は、包丁が好きなお客様からいただき、刃先を砥ぎ直したものです。

条件を揃えるため、「砥石・砥ぎ方・切る食材・砥ぐ人・切る人」これらは全て同じにしました。青紙スーパーの錆び方にも興味があり、洗い方や保管方法も同じにしました。

違うのは「鋼材」だけです。 青紙スーパーはHRC硬度66前後、モリブデンバナジウムは58前後と言われているので、HRC硬度で8~9の差があるようです。



青紙スーパーの三徳包丁は、いただいた時点で写真のような状態でした(写真左)。

合わせ包丁なので、芯材が出ている刃先部分はもちろん、峰の部分も錆びていました。

私の包丁と重さや刃先厚がほぼ同じだったため、比較しやすい条件でした。




右が青紙スーパー



右が青紙スーパー





内容は以下です。

1:研ぎやすさ

2:切れ味

3:切り心地

4:錆びやすさ

5:包丁の臭い

6:考察


考察については「商業的なバイアス抜きで事実をお伝えする」というスタンスで、できるだけ客観的に書きたいと思います。 また、この実験は、あくまでも「家庭レベル」です。

各種測定器を使用した「実験室レベル」では、私には感じ取れない差があると思います。


では結果です。


1:砥ぎやすさ


使った砥石は、最近の私のお気に入り、レジンダイヤモンド6000番です。

青紙スーパーもステンレスも、シームレス砥ぎで研ぎ時間は約1分です。

予備知識(先入観?)があるためか、なんとなく青紙スーパーの方が砥いでいる感覚がつかみやすいと感じました。

ただ、ダイヤモンド砥石だったのが理由なのか、研ぎやすさの「差」については、家庭レベルでは「差はない」と言えるものでした。

ダイヤモンド砥石は、硬い青紙スーパーでも粘りのあるモリブデンバナジウムでも関係なく研削力を発揮するのかもしれません。

※シームレス砥ぎはこちら




2:切れ味


切れ味の目安になる「皮つき鶏もも肉」と「トマト」で比較しました。

前半が青紙スーパー、後半がステンレスです。

鶏肉は両方とも包丁を往復させず、片道だけで気持ち良く切れます。

トマトも、刃を動かした瞬間から皮を切ることができます。

動画の包丁は、元々切れ味が大きく落ちていないものでしたが、両方とも作業時間1分でこのような切れ味になります。 どちらも大きな差はなく充分な切れ味だと思います。

皮つき鶏もも肉

トマト



3:切り心地


青紙スーパーの方が、「食いつき感」が良い気がします。 全体としてかっちりとした切り心地で、自分がなにをしているのか感覚がつかみやすいです。 食材との接点から情報をたくさん得られるのは青紙スーパーだと思います。 包丁が硬いと、食材が柔らかくなったような感覚もあります。 ただし、その差を感じるためにはある程度自分の感度を上げる必要があります。 「おしゃべりしながら・動画を見ながら・音楽を聴きながら」という環境ではわかりにくいかもしれません。 4:錆びやすさ 青紙スーパーは、濡れたまま放置すると数時間後には刃先にサビが出てきます。 また、刀身そのものも錆びやすく、不衛生な感じがします。



写真は砥いでから一晩たった刃先です。

左のモリブデンバナジウムにサビは出ていませんが、右の青紙スーパーには出ています。

5:包丁の臭い


ハガネの包丁では「鉄(サビ)のニオイ」という言葉を聞くことが多いので、包丁の刀身のニオイをチェックしてみました。

ステンレスはまったく匂わないですが、青紙スーパーのニオイははっきりわかるものでした。

このニオイが食材に移ってしまう可能性はたしかにあります。

やはり普段の手入れが重要になると感じました。

「包丁のニオイ」は、私にとって大きな発見であったのと同時に、デメリットに感じました。




6:考察

切る作業だけで考えれば、青紙スーパーの切り心地の方が良い気がしますが、その差ははっきりとわかるものではなく、「メンテナンスの手間・見た目の不衛生さ・錆びやすさ・サビのニオイ」などのデメリットの方が大きい気がします。

青紙スーパーの包丁は、全体がくすんだ色になり、常にサビのニオイが出ています。

錆びないようにするための努力が大変なことと、「切れ味」に大きな差がないことなど、青紙スーパーのメリットはあまり感じませんでした。

青紙スーパーは「長切れ」が特徴ということですが、私の方法で砥げば一回1分の作業なので、週に何度砥いでも苦にならず、長切れが特徴の青紙スーパーよりも、やはりメンテナンスが楽なモリブデンバナジウムの方が家庭用としてオススメです。



以上、参考になれば嬉しいです。


Opmerkingen


bottom of page