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「包丁の常識を疑う」シリーズ【第3回】包丁の性能は人が完成させる

13 時間前
読了時間: 3分



◎簡単なおさらい


前回は、


「切れ味の4要素が複雑に絡み合って切れ味を決める」


という話をしました。

鋭く砥がれた薄い両刃の刀身が、切れ味の総合得点が高い包丁と言え、特に私が研究している「家庭用万能包丁」ではその傾向が強いと言えます。


しかし切れ味は包丁単体の性能だけでは決まりません。

「切り方」によって切れ味が変わるからです。

最終的に包丁を使う人の技術が、包丁の性能(切れ味)を発揮させることになります。




◎同じ包丁なのに結果が変わる


「切れ味の良さ」についてわかりやすいのが、食材の断面の「ツヤ」です。

一般的にはツヤがある断面ほど「切れ味が良い包丁で切った」と評価されるのですが、同じ包丁で切っても、切り方によってツヤの度合いが変わります。


以下の動画をご覧ください。

「切れ味の4要素」と同じように、「4つの切り方」の動画です。

切れ味の4要素は包丁側の要素でしたが、「4つの切り方」は人間が包丁をどのように使うかという「人間側」の要素になります。




切れ味の4要素の組み合わせと同様、細かく書くと切り方の組み合わせも無数にあります。

一般的には、刃渡りを長く使って滑らせる「スライド切り」の方が、垂直に切る場合よりも断面がきれいになりやすいと考えられます。

次に「スライドスイング切り」、そして「スイング切り」と続き、最後に「垂直切り」が最もツヤのない断面になります(スイング切りと垂直切りはほとんど差がないと思います)。



以下は「切り方を変えると断面のツヤが変わる」という実験の写真です。

薄刃包丁と洋包丁の2種類の包丁で試しています。



写真の中の①と②、そして③と④をそれぞれ比較すると、薄刃包丁でも洋包丁でも、スライド切りをした方が断面にツヤがあることがわかります。

また①と③、そして②と④を比較すると、切り方が同じなら、薄刃包丁も洋包丁も断面のツヤにほとんど違いがないこともわかります。

この実験では、包丁の種類による違いよりも、切り方による断面のツヤの違いが目立ちました。

つまり、断面の美しさを評価するうえでは、包丁そのものの性能だけでなく、使い方も重要だということがわかります。

これは、「包丁の性能は使い方次第」「包丁の性能は人が完成させる」ということを示しています。

言い換えると、「高級包丁・切れ味の良い包丁」を使っていても、使い方を間違えるともったいないと言えます。





◎性能を引き出す時代へ


私はこれまでに「包丁なんでも相談室」や「実演販売」の現場、YouTubeなどの動画などで、包丁を使う人を見てきました。

そこで驚くのは、高級な包丁を持っていても、その性能を充分に引き出せない人が少なくないことです。


現在、日本製の包丁が海外に飛ぶように売れているそうです。

食材を切るパフォーマンスの動画を見た外国人が「日本の包丁は切れ味が良いから」と、何万円もする日本製の包丁を購入することが増えているようですが、購入者が包丁の使い方や、使い方と同じように大切な「砥ぎ方」を知らない場合、購入した包丁の性能を充分に引き出せないこともあるのではないでしょうか。

そのように考えると、今後海外には一度使った「高級包丁」が数多く放置されてしまうことになるかもしれません。

「日本の包丁は期待外れだった」とならないためにも、これからは、包丁の使い方と砥ぎ方、つまり「包丁の性能を引き出す方法」の普及が大切になってくると思います。


道具の性能を引き出すのは、それを使う「人」です。

包丁が持つ本来の性能も、結局はそれを使う「人」が引き出すことで、「切れ味の良い包丁が完成する」と言えそうです。


今回は以上です。

次回で「包丁の常識を疑う」シリーズは終わりです。



 
 
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