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美しい大根の千切りの方法 後編

更新日:2023年6月3日


「美しい大根の千切りの方法 後編」は、「桂むきから千切りを作るデメリット」についてです。


ここで書くデメリットとは、「大根の千切りサラダ」をするときのデメリットです。

「飾り切り」をするための桂むきは別の話です。


「大根の千切り」と検索すると、桂むきからの千切りを紹介している動画もありますが、一般家庭ではデメリットが多いため、私は千切りを目的とした桂むきはオススメしません。

以下、私が前回の投稿で紹介した方法と比較し、桂むきから大根の千切りを作るデメリットを書いてみたいと思います。

今回も「簡単バージョン」・「詳細バージョン」を用意しました。

興味がある方は詳細バージョンも参考にしてください。





<桂むきのデメリット>

◎簡単バージョン


1:習得に時間がかかる

2:薄刃包丁が必要になる

3:作業時間が遅い

4:厚さが安定しない

5:無駄が多い

6:疲れやすい





◎詳細バージョン


1:習得に時間がかかる

桂むきは、毎日30分練習しても、ある程度満足のいくものを作るのに数週間~数か月かかると思います。

私が実践している方法は、包丁の左側面が薄切りの安定を生み出すため、数時間の練習でできるようになります。

家庭で毎日30分、数か月間集中して桂むきを練習するのは現実的ではないと思います。

また、練習にともない、毎日練習用の大根が大量に必要になるため、これも現実的ではありません。

私が推奨する練習方法なら、練習時間は数時間、必要な大根は1本です。




2:薄刃包丁が必要になる


「桂むきからの千切りは、千切り器で作ったものよりはるかにおいしい」と言われていますが、そのおいしさを引き出すには、薄く均一に切る必要があるため、「刃のコンディションが良い薄刃包丁」を使うことが必須条件です。

家庭用万能包丁でも、ある程度の桂むきはできますが、「ハガネ(切り心地が良く手に伝わる情報量が多い)、片刃(薄切りの安定性が高い)、薄刃(タッチの軽さ・断面のツヤがよい)」など、桂むきに適した条件が揃った「薄刃包丁」の方が、単純に考えて桂むきに適しています(包丁自体が重いので体力が必要ですが)。

そのため、桂むきをするには家庭用万能包丁の他に、しっかり砥がれた薄刃包丁が必要になります。

この時点で、研ぎのコストやメンテナンス、保管場所などのデメリットが出てきます。

コンディションの良い薄刃包丁の切れ味は、切る食材によっては「非常に感動する切れ味」を発揮すると思います。

しかし、100点の切れ味を保つためにプロに研ぎに出し、たとえば「一週間・3000円」のコストがかかるのでは、家庭用として現実的とは言えません。

90点の切れ味を自宅で手軽に維持できる包丁が、家庭用として優れています。




3:作業時間が遅い

桂むきは、「きれいな円柱を作る」という作業から始まるため、それだけでも準備に時間がかかります。

また、薄い大根を適当な大きさに切り、重ねてから千切りの作業に入ります。

全体として作業の行程が多いため、同じ量の千切りを切るのに時間がかります。

私が実践している方法は、大根の皮をむいてすぐ薄切りの行程に入り、薄切りが終わった直後から千切りの行程に入ることができます。

桂むきを目的にするなら桂むきをする必要がありますが、「大根の千切り」を目的とした場合、桂むきでは作業時間が遅くなります。



4:厚さが安定しない


桂むきの動画を見ると、完成した桂むきのほとんどに、厚い部分と薄い部分があります。

丸い食材は連続運動で正確に切らないと多角形になってしまうため、上級者でも厚さにムラが出る場合が多く、千切りサラダの美しさのポイントになる「太さの安定」が難しくなります。

安定して薄く切れる人は、おそらく日本でも一握りです。

桂むきを動画で検索してみると、薄いところはとても薄いのですが、厚いところや厚さのムラがあり、千切りにして美しく仕上がるか疑問です。

私が実践している方法は、平面を包丁で切る、つまり、直線を直線で切るので厚さが安定します。




5:無駄が多い(中心の円柱と外側が残る)


桂むきは、ある程度作業が進み、大根が細くなると作業を止める必要があります。

どんなに練習をしても、最後まで剥くことはできないため、細くなった円柱がムダになります。

また、もうひとつ無駄になると言えるのが、「きれいな円筒形」を作るためにそぎ落とした部分です。


私が実践している方法も、かまぼこ型の薄切りの最後の部分がいびつになって残りやすいため、2㎜ほどを残して食べてしまうことがほとんどですが、少し時間をかければ千切りの一部として仕上げることができます。 ※紹介した動画では最後に5㎜ほど残っていますが、これは作業のリズムを重視したためです


桂むきでは無駄になる部分が多く、しかも千切りの一部として仕上げにくいです。



下は大根の図です。

左が桂むき、右が私が実践している切り方です。

赤い部分が無駄になります。

赤い部分は生で食べたりその他の料理に使うなど、有効に消費することはできますが、大根の千切りを目的とした場合、赤い部分が多いほど非効率だとわかります。


















※図の大根は、私が考える平均的な形です。

まっすぐで無駄が出にくい大根もありますし、曲がっていてほとんどまっすぐな部分がない大根もあります。




6:疲れやすい


作りのしっかりした薄刃包丁の重さは、ほとんど200g以上です。

右手に200gの包丁、そして左手にも大根を200g以上、場合によっては500g以上持つこともあり、その状態から空間での作業がスタートします。

まな板の上の作業では「腕の重さ」はほとんど考える必要はありませんが、桂むきでは「腕そのものの重さ」も支える必要もあります。

また、薄刃包丁をまな板に対してほぼ水平に持つため、和包丁特有の「切っ先寄りの重心位置」が手首の負担になります。

桂むきに慣れないうちは時間もかかるため、だんだんと疲労が溜まっていきます。

※私が実践している方法は、150g前後の包丁で、重心位置がハンドル側にあり、左手は添えるだけなので、桂むきと比較して疲れにくいです



以上、「桂むきからの千切り」のデメリットでした。



コラム:「桂むき」ができないとダメ?


「桂むきは料理の基礎」と言われることがありますが、家庭ではもう必要とされていないと思います。

なぜなら、美しい桂むきに必要とされる「しっかり砥がれた薄刃包丁」を持っている家庭が少ないからです。

もし桂むきが料理の基礎なら、料理をするすべての家庭にコンディションの良い薄刃包丁があるはずです。

一般家庭では「万能包丁がある・主婦は忙しくて桂むきどころじゃない」というのが本音かもしれません。

また、私は桂むきが上手にできませんが、それでもレストランで仕事をしてお客様に食事を提供し、喜んでいただいています。

「料理をするなら桂むきができないといけないのかな」と思っている人は、どうか安心してください。

桂むきができなくても料理は作れますし、人に喜んでいただくこともできます。

料理は、料理を作っている人が楽しく作っているかが大切なことだと思います。





◎みんなで楽しく千切りを


昔はプロ用の本格的な機材と熟練した経験が必要だった写真が、スマホの登場で手軽に撮れるようになり、一般の人たちもプロ並みの写真を手軽に楽しめるようになりました。


同じように、昔はプロの技術と思われていた「薄刃包丁&桂むき」という組み合わせの千切りが、ユニバーサルエッジの登場で手軽に作れるようになりました。

これからは、一般家庭の人たちにも、美しい千切りを手軽に楽しんでいただきたいです。



では最後にもう一度、大根の千切りサラダの動画を紹介します。




この動画で紹介している大根の千切りサラダですが、本当においしいです(^^

大根の千切りに、「とろろ昆布・海苔・青じそドレッシング」を添えて食べるのがオススメです。 動画を見て来店してくださったお客様からリクエストがあり、その場で作ったのですが、食べた後に「大根の見方が変わった」と喜んでくださいました。 動画後半の「盛り付け~試食」のシーンも私なのですが、緊張のあまりどれもぎこちない映像になりました。 とろろ昆布は手に絡むし、手はなんとなく震えるし・・・少しずつ慣れていこうと思います(^^ 以上、前回から2話にわたって「美しい大根の千切りの方法」について、質問の回答を中心に書きました。 長い投稿になりましたが、最後までありがとうございました。

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