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家庭用包丁の選び方

私の約80本の包丁を使った経験から、家庭用包丁としておススメするのは、刃渡り180㎜~210㎜の万能包丁(シェフナイフ)です。

価格は定価で1万円以下、口金がついているものがいいと思います。

​以下、包丁選びの詳しいポイントです。

※私が所有している包丁の一覧はこちら

​ 包丁なんでも相談室でご覧いただけます

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包丁選びのポイント

以下、包丁の「形・刃渡り・刃の厚さ・刀幅・刀身の素材・重さ(重心位置)・切っ先とアゴと峰の丸め・デザイン・刃付けの種類・口金・ハンドルの素材・ハンドルの形・峰とハンドルのライン​」について紹介します。

1:形→シェフナイフ

シェフナイフ(牛刀)と呼ばれるタイプがオススメです。

三徳包丁と呼ばれる包丁も人気ですが、三徳包丁は、シェフナイフと比較して太めで短い刀身です。

三徳包丁の先端をスリムにして長くしたものがシェフナイフの形なので、シェフナイフは三徳包丁でできることは全てできますが、三徳包丁はシェフナイフでできることができません。

特に切っ先側を使った作業での自由度と、ケーキや食パン、白菜、スイカなど、大きなものを切るときの効率が違います。

汎用性が求められる家庭用包丁には、シェフナイフの形が適しています。

包丁メーカーがはじめの一本として三徳包丁を勧めることがありますが、理由がはっきりしていない場合がほとんどです。

※三徳包丁とシェフナイフの違いはこちら

重ねる.jpg
三徳シェフナイフ.jpg

三徳包丁

​シェフナイフ

三徳包丁を

シェフナイフに

重ねると…

​三徳包丁がシェフナイフに含まれることがわかります

2:刃渡り→180㎜~210㎜

家庭で使うならほとんどの場合、180㎜で充分です。

体格や、普段切る食材の大きさに応じて長くしていくことをオススメします。

​※私は40席のレストランの調理を190㎜のシェフナイフ1本でしています

3:刃の厚さ→1.5㎜~1.8㎜

包丁の刃の一番厚い部分の厚さです。

業界最大手の「貝印」のカタログには「母材の厚さ」と表記されています。私は1.5㎜~1.8㎜の、比較的薄い部類の包丁をオススメします。その理由は、刃は薄いほど切り込み抵抗が小さくなり、楽に切れることと、「シームレス砥ぎ」が可能になること、価格が安価なものが多いこと(コスパが良い)、疲れにくい(軽さとしなり効果)などです。

「刃の厚さが薄い方が疲れにくい」というのは、薄い方が軽いので、皮むきなどの空間の作業が楽になることと、しなるため、硬い食材を切るときに、刀身がしなって食材を押さえている側の手首の負担を少なくしてくれるためです。

刃の厚さを簡単に測る方法として、硬貨を使うと便利です。

「1円・5円・10円硬貨の厚さが1.5㎜」、

「50円・100円硬貨が1.7㎜」、「500円硬貨が1.8㎜」なので、

「1円玉~500円硬貨程度の厚みの包丁」が適しています。

定価が1万円を超える包丁は、重厚感を出すために刃の厚さが2㎜以上のものが多く、刀身がしなりにくくなり、シームレス砥ぎが難しくなります。

家庭用として実用的な刃の厚さは1.8㎜以下が適していますが、包丁を直接手に取って厚さを確認できない場合は、メーカーに問い合わせることをオススメします。​

硬貨の厚み.jpg

4:刀幅→43㎜~50㎜

包丁全体のバランスを考えると、46㎜前後が適しています。

ハンドルを握り、まな板に包丁のアゴをつけたとき、指がまな板に当たらないことが大切です。

多くのシェフナイフは、指とまな板の間に3㎜以上の隙間があります(隙間がないシェフナイフは、設計ミスか、スライサー・筋引きとして売られています)。

また、刃渡りが長くなるほど刀幅が広くなる傾向があります。

シェフナイフとしての寿命は「指がまな板に当たるまで(スライド切りができなくなるまで)」と言えるので、刀幅が広い方が寿命が長くなる傾向があります(刀身の形やハンドルの大きさによっても変わります)。指とまな板に5㎜の隙間があれば、年間0.5㎜砥ぐとして、10年の寿命になります。

刀幅.jpg

5:刀身の素材→モリブデンバナジウム

刀身の素材はハガネやセラミックなどがありますが、家庭用としては一般的に「ステンレス」と呼ばれているものが最適です。

ステンレスの中でも、「モリブデンバナジウム」と呼ばれる種類のものが私は好みです。

ハガネは、条件が整えば切れ味の面でメリットがありますが、高価・欠けやすい(刃が減りやすい)・メンテナンスが大変・錆びやすい・しならないなど、家庭用としてはデメリットが大きい素材です。

※セラミックは、ハガネよりさらにデメリットが多いのでここでは触れません

ステンレスは、安価で欠けにくく、錆びも気にならず、しなるので、家庭用としてのメリットが大きな包丁です。

6:重さ→140g~180g(重心)

140g~180gが適当だと思います。

皮むきなどは包丁が軽いと楽にできますが、包丁の重さを利用して切る作業には、ある程度の重さも必要です。重心位置によっても体感的な重さが変わりますので、どちらかと言えば、手前側に重心がある包丁がオススメです。

※ハンドルの素材によって重心位置が変わります。

7:切っ先とアゴ→丸めてあるもの

私自身の経験ですが、切っ先とアゴが鋭いことが原因のケガをしました。

そのケガを予防するため、少し丸めてあるものがオススメです。

8:峰→丸めてあるもの

上記同様、力を入れて切るときに、包丁の峰でもケガをしたことがあります。

​また、皮むきの時に人差し指の付け根にあたり、痛いときがあります。

峰も角が少しでも丸くなっているものがオススメです。

9:デザイン→好みが一番

主観で「これがいい!」と思うデザインがオススメです。

​私はシェフナイフをオススメしていますが、三徳包丁のデザインが好きな方はそれがいいと思います。

 

※「ダマスカス模様」は、異なった特徴の金属を何層にも重ね合わせ、お互いの弱点を補うために生まれた必然的な模様でしたが、現在は高性能な金属が開発され、ダマスカス模様を単に「デザイン」として取り入れている包丁も多くあります

「性能がいいから」というよりも、「デザインが好きだから」という理由で買うならいいと思います。

価格は比較的高価なものが多く、コストパフォーマンスが重視される「家庭用包丁」には適さないと思います。

10:刃つけの種類→両刃と片刃でポイントが変わる

<両刃の場合> 切り刃の幅が細いほど良い

メーカーによって様々な刃付けがありますが、両刃であれば、刀身全体が刃のような形の包丁がオススメです。具体的には刃先からしのぎまでの幅が、0.2㎜以下の包丁です。

理由は、切り込み抵抗が少なく、切れ味が良く感じることと、砥ぐ面積が少なく、砥ぎやすいからです。また、この構造の刃付けは刀身が薄く仕上がっているので、しなりも良く、シームレス砥ぎに対応できる場合がほとんどだからです。

 

逆に、刃先からしのぎまでが1㎜以上あるような刃付けは、初期の切れ味は良くても、同じ切れ味を維持する砥ぎが難しく、新品に近い状態を保ちにくいです。

この刃付けは刃の近くまで厚みがあり、しなりにくい傾向があるため、シームレス砥ぎが困難なこともオススメできない理由のひとつです。

※ダイソーの包丁の刀身は、刃の厚さが1㎜なので、刃先からしのぎまでが1㎜前後あってもしなるため、シームレス砥ぎができます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<片刃の場合> 実用新案登録第3227805号の刃付けが良い

片刃でしたら、私が考案した実用新案登録第3227805号の刃付けが最適です。

具体的には、モリブデンバナジウムの刀身、刃先厚0.42~0.45㎜、角度18~20度、片刃のシェフナイフ「結」の刃付けです。

砥ぎやすく、刃離れが良く、切れ味もよく、汎用性も高い刃付けです。

片刃の包丁.jpg
両刃の包丁_edited.jpg
両刃切り刃
片刃切り刃.jpg

◀2本とも刃渡り210㎜の牛刀ですが、刃付けが違います。

左が刃先厚が厚めの包丁、右が刃先厚が薄い包丁です。

同じ角度で砥いでも、刃先厚の違いによって差が出ます。

◀左は切り刃の幅が約2㎜、

右は切り刃の幅が0.2㎜以下です。

​0.2㎜以下のほうが研ぎやすいです。

刃先.jpg
片刃の刃先.jpg

▲2本とも片刃包丁ですが、シェフナイフと和包丁で切り刃の幅(刃先からしのぎまでの幅)が大きく違います。片刃のシェフナイフは切り刃が約1.5㎜、和包丁は切り刃が10㎜以上あります。同じ角度で砥いでも、刃の厚さが違うと切り刃の幅が変わります。

※和包丁の切り刃の幅がある理由は、刀身全体が厚いからです。刀身全体が厚い理由は「手打ち・ハガネ材」だからです。「手打ち→薄く作れない」「ハガネ→折れやすい」という2つの理由から刃が厚くなります。

機械で作るステンレスの包丁は、峰から刀身にかけて徐々に薄く作ることができます。

​【イメージ図】

​拡大すると…

​【イメージ図】

​刃先を

拡大すると…

​刃先厚 大

​刃先厚 小

​和包丁

​和包丁

​和包丁

​シェフナイフ

​シェフナイフ

​シェフナイフ

11:ハンドルと刀身のつなぎ目→口金式

「口金付き」をオススメします。

口金がついていない包丁は、強度不足や不衛生というデメリットがあります。

「口金風」の包丁もありますが、私は刀身とハンドルの間に隙間がない「完全な口金式」がオススメです。

強度と衛生面で優れているので、家庭用包丁として最適です。

口金.jpg

12:ハンドルの素材→POMか積層強化木

​①サーモプラスチックラバー+ステンレス

②木

③ポリプロピレン

④POM

⑤ABS樹脂(ラバー塗装)

⑥木

​⑦積層強化木

ハンドル.jpg

主に、木・樹脂・金属の3種類があり、その中にも種類があります。衛生面で言えばオールステンレスがオススメですが、冷たい感触が苦手な方は全て木、または樹脂などの温かみのあるハンドルをお勧めします。

実用的なものは、POM樹脂か積層強化木が、比較的重い素材で、重心位置が手前になり、安価でオススメです。

13:ハンドルの形→単純なもの

凸凹があるようなハンドルは、汚れが溜まりやすいので、できるだけ洗いやすい単純な構造のハンドルをオススメします。

ハンドルのデザインは、各社様々な宣伝をしていますが、家庭での作業性はほとんど変わらないと思います。

むしろハンドルの素材の方が影響が大きいかもしれません。

「デザインがとてもお気に入り」なら、どんな形のハンドルでもいいと思います。

14:峰とハンドルのライン→谷間がないもの

峰からハンドルのラインに谷間がなければ、食材を集めるときに峰側を使って効率よくできます(刃を傷めなくて済む)。

※以下の写真のように峰とハンドルのラインに谷間があり、まな板との間に隙間ができるものがほとんどです。

峰のライン①
峰のライン③
峰のライン②
峰のライン④

上記からできるだけ多くの条件を満たすことが家庭用包丁を選ぶときのポイントになると思います。

以上、家庭用包丁の選び方でした。

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