​片刃のシェフナイフは

①汎用性 ②メンテナンス性 ③コストパフォーマンス

に優れた包丁です

​​※ここで書く片刃のシェフナイフとは、刃渡り190㎜、素材モリブデンバナジウム、実用新案登録第3327805号の刃付け、刀身がしなるシェフナイフです

①汎用性

 

「片刃のシェフナイフ」は、三徳包丁、スライサー、柳刃、薄刃、ホネスキ・ガラスキ(先端が細い片刃包丁)

フレキシブルナイフ、パン切り包丁などの特徴を、高いレベルでカバーする汎用性があります。

1:三徳包丁の特徴

三徳包丁は、家庭で一般的に使われている包丁です。

片刃のシェフナイフの刀身の形は、三徳包丁の切っ先を伸ばして細くした形です。片刃のシェフナイフの中に三徳包丁の長所(刻み作業が得意)が含まれるので、三徳包丁でできることは片刃のシェフナイフでもできます。ですが、片刃のシェフナイフの切っ先でできる細かい作業は、三徳包丁ではやりにくいです。

​※シェフナイフと三徳包丁の違い

2:スライサー(筋引き)の特徴

スライサーは主に肉の筋切りに使われ、刃渡りと切れ味が求められる包丁です。

片刃のシェフナイフは「片刃(砥ぎ角が鋭角)」のため、190㎜の刃渡りでも、200㎜以上のスライサー(両刃・鈍角)と同じような切れ味をだすことができます。

家庭レベルで考えた場合、スライサーでできることは片刃のシェフナイフでできますが、その逆は難しいです。

たとえばスライサーをまな板の上で使った場合、刀幅が狭く指が当たってしまうため、まな板の上で「スライド切り」による刻み作業が困難です(写真1)。

また、指の当たりを防ぐため、ハンドルをまな板の外に出して切ると、切った食材が落ちてしまう場合があります(動画1)。

刀幅の狭さは、野菜の薄切りのときに左側面が不安定になりがちで、かつスライサーは基本的に「両刃」なので、包丁のロール運動が乱れやすく、薄切りが不安定になります(動画2)。

​写真1 
スライサーは指がまな板に当たる
P1010443.JPG
​動画1 
スライサーは食材が落ちてしまうことがある
​動画2 前半が片刃のシェフナイフ、後半がスライサー
3:柳刃包丁の特徴

たとえば240㎜の刃渡りの柳刃包丁でも、家庭レベルでは、長い刃渡りを活かしきれない場合がほとんどです。   

刃渡り190㎜の片刃のシェフナイフでも、アゴから切っ先まで意識して使えば、柳刃包丁と同じような断面のツヤを 

出すことができます。家庭レベルで考えた場合、柳刃包丁でできることは片刃のシェフナイフでもできますが、その 

逆(柳刃包丁で刻む作業など)は難しいです。

4:薄刃包丁の特徴

片刃のシェフナイフは、アゴ側の100㎜程度の刃線がほとんど直線、かつ片刃なので、薄刃包丁と同じ「スライド切 

り・かつら剥き」の作業ができます。家庭レベルで考えた場合、薄刃包丁でできることは片刃のシェフナイフでできますが、その逆は難しいです。

5:ホネスキ・ガラスキ(ここでは先端が細い片刃包丁と定義して書きます)の特徴

家庭でホネスキ・ガラスキを使うことはほとんどないかもしれませんが、あえてホネスキ・ガラスキとして使おうと 

した場合でも、片刃のシェフナイフは対応できます。片刃のシェフナイフの方が刃が薄いため、使い勝手が良い場合 

もあります。家庭レベルで考えた場合、ホネスキ・ガラスキでできることは片刃のシェフナイフでできますが、その逆は難しいです。

6:フレキシブルナイフの特徴

片刃のシェフナイフは切っ先側の刃厚が薄く仕上げてあるため刀身がしなるので、「フレキシブルナイフ」としても 

使うことができます。

7:パン切り包丁(焼きたてを除く)

刃渡りが190㎜あるので、パン切り包丁としても使えます。切るパンの種類によっては、パン切り包丁よりもパンくずが出にくく、かつ滑らかな断面になります。

※表面がカリカリの焼きたてパンなどは、刃が滑ってしまい、切りにくいです

パン切り包丁と片刃のシェフナイフで、市販のパン(4種類)を切ってみました。

①普通の食パン、②デニッシュパン、③柔らかふわふわのパン、④メロンパン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は、どのパンも片刃のシェフナイフで切ることができました。

しかし、③の「柔らかふわふわパン」は、パン切り包丁の方が切りやすかったです。

また、パンの「切りクズ」については、片刃のシェフナイフの方が出にくい傾向ですが、大きな差はありませんでした。

毎日いろいろな種類のパンや焼きたてパンを切る生活には、パン切り包丁は欠かせませんが、「たまに食パンを切る」という生活なら、片刃のシェフナイフで充分対応できると思います。

​重要なポイント:

片刃のデメリットと言われる「硬い物をまっすぐに切る作業」は、慣れや工夫で補えます(動画1)。

しかし両刃のデメリットである「刃離れの悪さ(食材が包丁にくっつく)」は、どんなに熟練した人が使っても、慣れや工夫では補えません。その原因が刃の構造そのものにあるからです(動画2)。

​動画1 片刃のシェフナイフで玉ねぎを半分に切る
P1010132.JPG
​動画2 前半が片刃のシェフナイフ、後半が両刃包丁です
まとめ:

以上から、「片刃」のシェフナイフは家庭用包丁として最も汎用性が高いと言えます。

※動画ような作業を一丁でこなせるのは、片刃のシェフナイフだけです

 

​②メンテナンス性

​【錆び・刃欠けが少ない】

靭性の高いステンレスは、ハガネのような錆び・刃欠けなどの扱いにくさがありません。

※割り込み包丁やハガネの包丁は、ステンレスのように扱うとサビてしまうものがほとんどです。同じ使い方をしても、材質によって以下の写真のような差が出ます。

写真の包丁は、左から順に「全鋼(いただきもの)」「三枚(いただきもの 芯材:青紙スーパー)」「割り込み(タダフサ HK-4 :芯材SLD鋼)」「割り込み(藤次郎F-807 芯材:コバルト合金鋼)」「ステンレス(私が普段使っている包丁)」です。

P1010472.JPG
【研ぎやすい】

ステンレスは靭性が高いので刃を薄くすることができ、しなりを利用した「シームレス砥ぎ」が可能です。

「シームレス砥ぎ」は、慣れれば1回1分以内で作業が終わり、刃線が一切乱れない砥ぎ方です。

また、片刃のシェフナイフは、片側だけ砥げば作業の9割が終わるので、研ぎ時間が短縮できます。

「ハガネの方が切れ味が良い・切り心地が良い」という評判もありますが、ハガネ本来の切れ味を保つには、プロの砥ぎ師による繊細な砥ぎが必要です。

たとえば、ハガネの包丁は10の切れ味を保つために10のコストがかかりますが、片刃のシェフナイフは、8の切れ味を保つために2のコストがかかるというイメージです。家庭レベルで必要な切れ味を低いコストで保つことができ、メンテナンス性に優れています。

ステンレスの刃は、ハガネと比べて刃こぼれしにくく、大きな研ぎ直しが不要で、この点でもメンテナンス性に優れています。

●余談:セラミックの包丁は家庭用に適しているの?

セラミックの包丁は「硬くて砥ぎ直しが不要で切れ味が良い」と言われていますが、

実際はすぐに刃欠けをしてしまい、その刃欠けを直すのに包丁と同じ金額が必要になることもあります。

また、刃欠けを直すたびに刃が大きく減るので、刃先のコンディションを保とうとすると寿命も短くなります。

欠けた刃が食材に混ざってしまうこともありそうです。

刃欠けを防ぐために刃先厚も厚めに設定されていることや、やはり刃欠けを防ぐために鈍角に砥いであることから、切れ味はいいのですが、切り込み抵抗が強く、根野菜などの硬いものを切るのには適していません。

生の肉を切るためだけに使うのはアリだと思いますが、2丁の包丁が必要になってしまいます。

セラミック包丁は家庭用の万能包丁としては適していないと思います

 

​③コストパフォーマンス

​以下のように、片刃のシェフナイフはコストパフォーマンスも優れています。

・片刃なので、刃の減りが遅く、両刃より長持ちします。

・ステンレスなので刃欠けしにくく、研ぐ量が少なくて済むため、ハガネの包丁より長持ちします。

・ステンレスなので、基本的にハガネより安価で入手できます。

・汎用性が高いので、一丁でほとんどの作業ができ、他の包丁を買う必要がありません。

・自宅に一丁あればどんな作業もできるので、保管スペースが節約できます。

・しなりを利用した「シームレス砥ぎ」で簡単に研ぐことができ、時間の節約になります。

・砥石とまな板の組み合わせによっては20年以上使え、1日当りのコストは数円です。