top of page

和包丁とユニバーサルエッジの違い

更新日:6月6日




「和包丁とユニバーサルエッジはどちらも片刃(和包丁の一部は両刃)ですが、違いはありますか?」という質問をいただきました。

以下に短くまとめてみたいと思います。


確認点としては「和包丁と洋包丁の違い」ではなく、「和包丁とユニバーサルエッジの違い」です。

「和包丁と洋包丁の違い」だと、「片刃と両刃の違い(和包丁が片刃、洋包丁が両刃)」が代表的ですが、ユニバーサルエッジは和包丁と同じ「片刃」です。





◎構造上の違い


わかりやすいのは刀身の厚さです。

以下の写真は、切っ先側を上から見たものです。


ユニバーサルエッジ(左)と和包丁(右)の切っ先側を峰側から見た比較



刀身の厚さのほか、包丁を上から見たときに、ハンドル側から切っ先にかけて峰のテーパーの度合い(峰の厚さが細くなっていく度合い)にも違いがあり、和包丁のテーパー度は弱く、ユニバーサルエッジは切っ先側半分あたりのテーパー度が強くなっています。



刀身の厚さは、切り込み抵抗(主に食材への刃の入りやすさや抜けやすさ)に影響します。

基本的に、刀身が薄いほど切り込み抵抗が少なく、抜けやすさが向上します。

上の写真を見ると、どちらが切り込み抵抗が少ないか想像できると思います。



その他構造上の違いは主に以下です。


和包丁:

ハガネの刀身・口金なし・差し込み式ハンドル・裏スキあり・刀身が厚い・重い・重心位置が切っ先寄り


ユニバーサルエッジ:

ステンレスの刀身・口金やハンドルは様々・裏スキなし・刀身が薄い・軽い・重心位置がハンドル寄り






◎実用面での違い


上記のような違いにより、ユニバーサルエッジは、衛生面・メンテナンス面・錆びにくさ・砥ぎやすさ・刃離れ・汎用性・安全性などの点から家庭用包丁として便利です。


和包丁より手前にある重心位置、そして刀身のしなりの関係で、ユニバーサルエッジの方が手首の負担が少ないです。



和包丁のコンディションを維持するにはコストや手間がかかり、切る食材も限られますが、それが好きな方もいます。

一方で、ユニバーサルエッジはほとんど手がかからなずなんでもこなすので、家庭用万能包丁として最適です。


車で例えると「趣味性の高いクラシックカー」と「安全性と効率を追求した最新のファミリーカー」の違いと言えるかもしれません。


和包丁とユニバーサルエッジは、実用面は大きな差が出ると言えます。





◎そんなに便利ならなぜ昔からなかったの?


「ユニバーサルエッジ(片刃のシェフナイフ)がそんなに便利な包丁なら、昔からあったはず」と思う方もいるかもしれませんが、ユニバーサルエッジは、昔は作れませんでした。



一番の理由は薄い刀身を作れる金属がなかったことです。

昔の金属は、薄くすると折れたり曲がったりしてしまうため、包丁には厚みが必要でした。

厚い刀身では、ユニバーサルエッジは作れません。



また、刀身を薄くできる金属があったとしても、「洋包丁=両刃」という常識を疑う勇気と、刃先厚と砥ぎ角の組み合わせの研究が必要です。



これまでユニバーサルエッジがなかった理由は、これらの条件が揃わなかったためです。





◎ユニバーサルエッジが生み出したもの


ユニバーサルエッジの刀身の薄さは、刀身が厚い和包丁には実現できない大切な性能を生み出しました。


それが、長年にわたり家庭用包丁の課題だった「薄切りの刃離れ」です。


実用新案を取得した「刃先厚と砥ぎ角」の組み合わせは、片刃のデメリットを軽減しつつ野菜との間に起こる毛細管現象をほどよく打ち消し、「刃離れ問題」を解決しました。


※2024年3月現在、TikTokで800万回以上再生された「ニンジンの薄切り動画」に寄せられたコメントにも、「なぜ包丁にくっつかないの?」というものが多く見られます。


ニンジンの薄切り動画




また、刀身が厚い和包丁が主流だった時代は、片刃で硬いものを切ることが困難だったため、硬いものを楽に切れる両刃の「菜切り包丁」を使いました。

当時の片刃包丁は「硬いものを切るのが苦手で、両刃の包丁がもう一本必要になるほどだった」ということだと思います。

しかしユニバーサルエッジは、現代の刃物用鋼材によって可能になった「薄い刀身」に着目し「両刃の包丁が不用」と言えるレベルまで片刃のデメリットを軽減しています。


ユニバーサルエッジに複数の包丁の特徴が集約されることによって、「製造コスト・保管場所・管理・持ち替えの手間」なども軽減され、SDGsという側面からも有益です。


また、現代は電子レンジの登場や食文化の変化により、硬い食材を切ることが少なくなってきました。

このような背景もあり、片刃包丁の良い部分が際立つ時代になったと言えます。


※ユニバーサルエッジと和包丁の切り込み抵抗の違いについては以下を参考に。





◎エピソード


ユニバーサルエッジは、刃付けは和包丁と同じ「完全片刃」で、刀身の種類は「洋包丁」です。

新しいカテゴリーの包丁なので、私は新カテゴリーとして「ユニバーサルエッジ」と名付けました。


ユニバーサルエッジは、「使いやすくなった和包丁・より便利になった洋包丁」と言えるだけでなく、和包丁にも洋包丁にも実現できなかった「刃離れ」を可能にしています。


また、峰のハイブリッド処理を中心に、危険部位に面取り加工が施され、家庭用万能包丁の歴史に類を見ない安全性も実現しています。






以前、お客様の2丁の和包丁を砥がせていただいたとき、ユニバーサルエッジのお話をさせていただいたところ、その場でお買い上げくださったことがありました。

片刃の和包丁を使ってきた人にとって、片刃のデメリットが軽減されたユニバーサルエッジを使うことは苦にならず、メリットばかりだと感じてくださったようです。


もちろん洋包丁を使ってきた人も、片刃の特徴さえ知れば、これまでの洋包丁にはない「安定した刃離れ・砥ぎやすさ・汎用性の高さ・安全性」など、メリットばかりです。




以上、和包丁とユニバーサルエッジの違いでした。

車で例えた、「趣味性の高いクラシックカー」と「効率を追求した最新のファミリーカー」の違いというイメージが伝わればと思います。



Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page