貝印の「切れ味チャンネル」で、私が好きな「刃渡り195㎜・モリブデンバナジウム」の包丁があることを知り、さっそく購入しました。
購入の目的は、包丁の研究と、ユニバーサルエッジへのカスタムです。
2丁購入し、ひとつはそのまま、ひとつはユニバーサルエッジにカスタムしました。
◎oecクッキングナイフ195㎜
購入した包丁は、「oecクッキングナイフ195㎜」です。
2丁購入
刃渡り:195㎜
素材:モリブデンバナジウム
ハンドル:樹脂
母材厚:2.5㎜
重さ:135g
形:シェフナイフ
料理家の脇雅代さんと貝印がコラボした包丁で、195㎜の刃渡りを選んだ主な理由は、私と同じ「直径18センチのケーキを一回で切るため」だそうです。
また、公式ページの説明では、広めの刃幅を持たせ、三徳包丁とシェフナイフの良いところを融合したということでした。
「oec」は「オリエンテッド・エコロジー・クッキング」の略だそうですが、もちろん「おいしい」を意識したものだと思います。
パっと見た感想は、母材厚2.5㎜が刃渡りに対して厚めだということ、刀身が硬く感じたこと、ハンドルが軽く重量バランスが前よりにあること、そして刃線に少しの乱れがあったことです(個体差の範囲かもしれません)。
実際の重さは135gなのですが、手に取ると155gのシェフナイフよりも重く感じ、和包丁のような重量バランスになっているとわかりました。
◎ハンドル
ハンドルは細身の樹脂製です。
口金式ではないことが衛生面で気になりましたが、このあたりは開発のときの様々な事情があるのだと思います。
刀身の大きさに対してハンドルが細く、ロール方向のコントロールがしにくい傾向があります。
刀身の大きさから考えると、もうひと回り太くなると使いやすさがアップすると感じました(脇雅代さんの手は私より小さいのかなと感じました)。
ハンドルには、金属製の3つの鋲が打ってあります。
同社の「わかたけ」というシリーズの包丁は、黒い樹脂製のハンドルに鋲を模したグレーのプラスチックが埋め込んであり、デザイン重視の包丁だとわかりますが、oecクッキングナイフは金属の鋲でした。
140度まで耐える樹脂を使い、食洗器に対応しているところは親切です。
◎刃付け
刃付けはほぼ左右対称です。
ただし2丁の刃先を比較すると、左右のバランスや研ぎ角が違っていたので、個体差はあると思います。
◎切れ味
研ぎに使っている砥石はどちらかと言うと粗めの番手で簡単に研いであり、こだわりを感じない刃先でしたが、「切れ味」についてはまったく問題ありません。
私は、家庭用万能包丁に対しては「こだわりぬいた究極の切れ味」よりも「砥ぎやすくてそこそこの切れ味」を重視しているので、逆にこだわりがない方が気軽に砥ぎやすいと感じました。
◎刀身の断面の形
刀身の断面の形は、右がコンベックス、左がほぼフラットで厳密には左右非対称ですが、左右対称と言える範囲なので、公式ページにあるように、左右兼用で違和感はないと思います。
(私は平らなマグネットを使って刀身の断面の形を調べています・精度は高くありませんがある程度測定することができます)
◎ユニバーサルエッジへのカスタム
以下のメニューで砥ぎ、刃離れの実験をしました
1:ユニバーサルエッジの刃付け
2:切っ先の丸め処理
3:アゴの丸め処理
4:峰のハイブリッド処理
5:アゴ上の丸め処理
6:刃離れの実験(動画)
1:ユニバーサルエッジの刃付け
右が新品、左がユニバーサルエッジの刃付け後です。
右利き用として、刀身の右側だけ砥いでいます。
2:切っ先の丸め処理
上が新品、下が切っ先を丸めたあとです。
これで不意のケガを予防しやすくなります。
3:アゴの丸め処理
上が新品、下がアゴを丸めたあとです。
やはり不意のケガを予防しやすくなります。
4:峰のハイブリッド処理
右が新品、左が峰のハイブリッド処理をしたあとです。
利き手側の手側半分の峰を丸めます。
皮むきや包丁研ぎ、人差し指を峰に乗せて切るのときなどに、指の痛みを軽減します。
また、ゴボウの皮むきなどの「そぎ落とし」の作業に使うため、峰の左側は角を残しています。
5:アゴ上の丸め処理
※刃線を上にして写真を撮りました
右が新品、左が処理済みのアゴ上です。
アゴ上の角に指が当たったときの痛みを軽減します。
6:刃離れの実験
前半がユニバーサルエッジにカスタムしたもの、後半が新品です。
ユニバーサルエッジの刃付け後は良好な刃離れでした。
安定して薄切りができ、刃離れもほぼ確実と言える状態で、切るのが気持ち良かったです。
新品状態では、左右のふらつきがあり上手にコントロールできませんでした。
これは両刃であることが主な理由ですが、ハンドルが細めなこともふらつきの原因のひとつです。
また、食材が両側から刀身に密着することによる切れ味の急な変化などの不具合があり、同じリズムで安定して切ることができませんでした(キュウリ・大根でも似たような状態になります)。
この動画から興味深いことがわかります。
両刃の不安定さだけでなく、両刃で厚さを一定にしようとすると、ある程度の厚さが必要になるということです。
簡単に書くと、「両刃では薄切りが厚くなる・厚さが不安定・切りにくい」ということです。
そのため、「薄切りにはスライサーを使う」という人が増え、利き手の指先をケガする例が増えています。
ユニバーサルエッジを使うと両刃より薄い薄切りが安定して切れるため、スライサーが不用になります。
また、片刃なので食材に対して薄く乗せたときの刃の乗りが良いことや、両刃より砥ぎ角が鋭いこともあり切り心地が良く、薄切りの作業が楽しいこともユニバーサルエッジの特徴です。
◎まとめ
「oecクッキングナイフ195㎜」は、私が好きな刃渡りと鋼材の組み合わせの包丁です。
これをユニバーサルエッジにカスタムすることで、より安全で便利な包丁になるのは間違いないことがわかりました。
安価なことも嬉しいです。
「切れ味チャンネル」の動画で拝見した脇雅代さんの言葉通り、「刀身には三徳包丁の広めの刃幅を持たせた」というのは、包丁に食材を乗せやすいことの他にも包丁の寿命を延ばす意味もあるので共感しました。
今のところ、ユニバーサルエッジとしては「PROCEED」のバランスが最高レベルだと感じました。
以上です。