家庭用包丁の研究 100 本突破記念

更新日:7月29日



私の研究対象は、主に刃渡り200㎜前後の家庭包丁です。

どの包丁にも様々な特徴があり、各包丁メーカーが「なぜそうするのか」について興味が尽きません。

以下、「私が包丁メーカー質問したいこと」と「私の考え方」について書きました。

包丁を使う人はもちろん、包丁メーカーの開発や営業の担当者の方も、自社製品について考えるきっかけになればと思います。





私の理想に近い包丁ベスト3 ( 2022年7月4日現在 )




【私が包丁メーカーに質問したいこと】


・その刃渡りを選んだ理由は?

・峰の角の仕上げの基準は?


・その刃幅(身幅)を選んだ理由は?

・その金属を刀身の素材として採用した理由は?


・口金から切っ先にかけての峰厚の変化について、その形状を採用した理由は?


・その刃先厚を採用した理由は?


・その砥ぎ角を採用した理由は?

・アゴを丸めない理由は?

・切っ先を丸めない理由は?


・ハンドルと峰を一直線にしない理由は?


・その刃線を採用した理由は?


・その「そり」の曲線を採用した理由は?


・そのハンドルの素材を採用した理由は?

・ハンドルとアゴの位置関係の理由は?

・そのハンドルの口金の構造を採用した理由は?

・そのハンドルエンドの形にした理由は?



上記質問について、私の考えと、もし私が包丁メーカーの担当者だったらどう答えるか書いてみます。



・その刃渡りを選んだ理由は?


私の理想の包丁は刃渡り190㎜です。 180㎜では18センチのケーキが切りにくく、210㎜では家庭のキッチンで切っ先をぶつけやすいからです。 また、最も普及している三徳包丁は長くても180㎜までなので、三徳包丁から持ち替えたとき、190㎜ならすんなり使え、グレードアップ感も味わえます。 40人席のレストランでも刃渡り195㎜の包丁だけで仕事ができるので、家庭用包丁として210㎜は長いと感じています。 ・峰の角の仕上げの基準は?

峰に力を入れる作業で人差し指を切らないこと。皮むきと砥ぎ作業のとき、右手の人差し指の負担を軽くすること。肉を切った後、切っ先の峰側で、まな板の上の脂をそぎ落とせる程度(切っ先側の峰が丸すぎると、まな板の上を滑ってしまう)。 市販品では、ツヴィリングツインフィンⅡの仕上げ(峰に2種類の面取りを混在させる方法)が理想的です。

その後、ツヴィリングマーケティング本部の松原嘉子さんに質問したところ、ツヴィリングの高価な包丁は峰の処理ができているということがわかりました。

刃先側半分の峰の処理が控えめなのは、ゴボウの皮むきのときにはある程度の角が必要だからとのことでした。この説明は私も同感です。

ツヴィリングの松原さんは料理教室も主催しているのですが、料理をしている人の意見には説得力があると感じました。

・その刃幅(身幅)を選んだ理由は?

ハンドルの太さや角度によりますが、私は46㎜を選びます。 主に、包丁を握りこんで力を入れる作業のときに、指とまな板のクリアランスをしっかり取るためと、皮むきのしやすさ、包丁の寿命を延ばすためです。 43㎜以下では指がまな板に当たりやすく、薄刃包丁の動き(スライド切り)がしにくくなります。 50㎜以上ではハンドルとアゴが離れすぎてしまい、皮むきがしにくくなります(私の手の大きさは、「女性としては大きめ」です)。

・その金属を刀身の素材として採用した理由は? 私は今のところモリブデンバナジウムを選びます。 靭性が高く安価でコスパが良い。 欠けにくいので砥ぎ作業が楽。 ほとんど錆びないのでメンテナンスが楽。 シームレス砥ぎがやりやすい。 などの理由です。 ・口金から切っ先にかけての峰厚の変化について、その形状を採用した理由は?

しなった時に理想の刃線にするため(シームレス砥ぎについて①参照)。 しなることで手首の疲れを軽減するため。 切っ先側の切り込み抵抗を減らすため(硬いものを切りやすくするため)。 などの理由です。

・その刃先厚を採用した理由は?

理想の刃離れを実現するために必要な厚さだから。

・その刃の砥ぎ角を採用した理由は?

理想の刃離れや切れ方を実現するために必要な角度だから。 ・アゴを丸めない理由は?

多くのメーカーはアゴを丸めていませんが、私は不意のケガを防ぐために丸めます。 「旬」のような大きな丸め方をするとアゴを使う作業がやりにくいので、R1前後で丸めます。 ・切っ先を丸めない理由は?

多くのメーカーは切っ先を丸めていませんが、私は指先のケガを防ぐためや、万一包丁を落としたときのケガを軽減するために丸めます。 やはりR1前後です。

・ハンドルと峰を一直線にしない理由は?

峰側を使って食材を集めるために、私はハンドルと峰が一直線になっていることが理想です。


・その刃線を採用した理由は?

私は薄刃包丁と牛刀の特徴を融合するための刃線を選びます。 スライド切りもスイング切りもできる刃線です。

多くのメーカーが、スイング切り(業務寄りの切り方)をメインにした刃線を選んでいるので、家庭用の作業に便利なスライド切りがやりにくい場合があります。

・その「そり」の曲線を採用した理由は?


私はユーザーの身長、家庭で切るものの厚さ、シームレス砥ぎで刃先側がコンコルドにならないこと、シームレス砥ぎがやりやすいことなどを考えます。

購入した牛刀には、「身長何センチの人が使うの?」と思うほどそりが大きいものもあり、「デザイン重視」の包丁だとわかります。

・そのハンドルの素材を採用した理由は?


私は「家庭らしさ、温かみ、衛生」を基準にし、木、または木目調のハンドルを選びます。

特に和包丁を意識した包丁では、デザイン重視の傷みやすいハンドルを採用しているメーカーもあり、漂白剤がついただけで色が変わってしまうものもありました。



・そのハンドルの太さを選んだ理由は?


ハンドルを軸にした回転運動をコントロールしやすくするため、どちらかと言えば太めのハンドルを選びます。

太くできない場合は縦方向(断面の上下方向)に長めのハンドルにすることで、回転運動のコントロールをしやすくします。



・ハンドルとアゴの位置関係の理由は?


「皮むき」「ジャガイモの芽取り」などを考えると、アゴの角度は90度以下でハンドルに近い方がいいと思います。

※藤次郎ORIGAMIやGLOBALのG-4は、皮むきやジャガイモの芽取りのしやすさを考えていないように感じました


・そのハンドルの口金の構造を採用した理由は?


強度と衛生面を考えると、滑らかに加工された口金がついている包丁が一番です。



・そのハンドルエンドの形にした理由は?


私は自分の理想の包丁を作るときは、平らな尻金を付けます。

理由は、香辛料やナッツなどをつぶすため、固まった氷をほぐすため、ハンマーとして使うためなどです。

衛生面を考え、刻印はなしです。

また、安全性を考えR0.5で面取りをします。

以上です

最近は「デザイナーさん」と話す機会が多く「意味のあるデザインは素敵だな」と感じることがあります。いろんな包丁の「なぜそうなのか」を研究することで、私自身の包丁作りに活かしていきたいです。





家庭用包丁100本(約100本 笑)の研究の区切りとして記念に購入しました。

研究はまだまだ続きます。